プルタルコス:プルタルコス英雄伝(中) |
作成日: 2012-11-17 最終更新日: |
プルタルコス(プルターク)による対比列伝から。ちくま文庫では全訳ではなく抜粋である。
アギスとクレオメネスはスパルタの将来を心配するあまり、非業の死を遂げた。 私があっているつらい目など、この二人にとってみれば屁みたいなものだろう。
このロムルスに限らないが、どの訳でも読みにくい。 訳の巧拙ではなく、おそらく原文のせいなのだろう。 しかし、読み手である私の問題があるかもしれない。そこで、 このロムルスの章ではゆっくり読んで、自分で理解できるまで読み直すことにした。 以下はその跡である。
ローマ、という地名のいわれは何か。ギリシア語ではローメーという。
説1.ギリシアの先住民、ペラスゴイ族が力によってローマを制圧したから。 力をギリシア語ではローメーという。
説2.トロヤ陥落時に生き延びた人たちが船で流れてテュンブリス川に着いた。 船の人たちのうち女たちはもう海に帰るのは嫌だというので、 ローメーという女性が船を焼いてしまおうと提案した。 実際に焼いてローマに住み着いたら成功したので、この女性に敬意を表して名がついた。
ここまで要約するのも疲れる。まず、トロヤはあの「トロイの木馬」のトロイか。 どこにトロイがあるのだっけ。調べたらトルコのダーダネルス海峡の東にあったのか。 そのあと、船で流れてということはエーゲ海を通ったということだ。そこでテュンブリス川に着いた、 というが、テュンブリス川ってどこだろう。ローマを流れる川ならテベレ川かだろうか。 また調べて、現代イタリア語はテヴェレ川というが、古代ローマではティベリス川といったらしい。 この説ではテュンブリス川(ティベリス川)とあるから、ローマを流れている川で正しいだろう。 つまり、ティベリス川がローマを流れている、という事実を読者が持っていないといけない。 大変だ。それに、このあと読んでいくと、説1については何も触れられなくなってしまう。
さらに大変になる。第1節の説2に出てきたローメーとは何者か、という説明である。
説2-1.イタロスとレウカリアとの娘。
説2-2.テレフォスの娘。アエネアスと結婚した。
説2-3.アスカニオスの娘。
このローマという都市を作ったのはだれか。説1でも、説2でもない。
説3.ロマノス。オデュッセウスとキルケの息子。
説4.ロモス。エマティオンの息子。
説5.ロミス。
説6.ロムルス。最も信憑性が高い。
ここでは、ローマの名付け親はだれかということと、ローマを作ったのはだれか、 ということは同列に扱っているようだ。さて、説6に従って、 ロムルスの素性はどうか。調べてみる。
説6-1.「アエネアスとフォルバスの娘デクシテアとの息子」とある。これは、 ロムルスの父がアエネアス、アエネウスの母がデクシテア、母方の祖父(か祖母)がフォルバス、 と読むべきなのだろうな。
説6-2.「ラティノスとデクテシアの息子」デクテシアは説6-1の通り。 ラティノスの父はテレマコス、テレマコスの父はオデュッセウス。
説6-3.「アレスとアイミュリアの息子」
説6-4.「かまどに生えた男根とある侍女に生まれた双子(のうちの一人)」
節6-4.に至っては、イメージがおかしすぎて妙である。もちろん、本文には 誰のところのかまどとか、侍女とはどこの侍女かとか書いてあるのだが、まあ、いいだろう。 この説も捨てさられることになるのだから。
こんな調子で固有名詞があちこち出てきて、話のいくつかはその後関係がなくなることも多い。 だから読みづらいということがわかった。それでも昔から語り継がれているわけで、 読んでおくことに意味があるだろう。
スルラはなぜラの字が小さく表記されるのかわからなかった。 ラテン語の綴りが Sulla であることから、通常はスッラあるいはスラと表記されることがわかった。 きっと役者は、ラテン語の綴りに忠実であろうとしたのだろう。
脚注を使う伝と脚注を使っていない伝がある。正確にいえば、 アギスとクレオメネス(岩田拓郎訳)では使われていないが、 他の伝では多く脚注が使われている。その脚注で気になるのが「一本」ということばだ。 たとえば、ロムルス伝(太田秀通訳)のなかで、p.207 注で(1) 一本「戦利品」。とある。 何だ、この一本というのは。まさか、柔道ではないよな。
調べたが何もわからない。こう考えてみることにした。 このような古典では、訳者は原本のほかさまざまな異本(写本)を参照するが、 依拠した原本以外の異本のうちの一つを「一本」と称するのだろう。
書 名 | プルタルコス英雄伝(中) |
著 者 | プルタルコス |
発行日 | 1987 年 2 月 24 日 |
発行元 | 筑摩書房 |
定 価 | 680円 |
サイズ | 文庫本 |
ISBN | 4-480-02112-4 |
NDC | 283(伝記・ヨーロッパ) |
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