Gary Miessler, Donald A. Tarr:ミースラー・タール無機化学Ⅱ

作成日:2021-11-06
最終更新日:

概要

この第Ⅱ分冊は「錯体化学とその応用」という副題がある。監訳者まえがきから引用する:

本書は従来の教科書によくみられる元素や化合物を周期表の各族ごとに分けて結合や構造, 物質の性質と評価などを解説したり,従来の無機化学の研究分野を断片的に記述することとは異なり, 無機化学と有機化学を相互に結びつける“ブリッジビルダー”としての意欲を全面に出している. (中略)後半の9章から16章(Ⅱ巻:錯体化学とその応用)までは有機金属化合物を含めた錯体の配位と触媒としての応用を詳細に解説しており, この教科書の特徴を明確にしている.

感想

私は頭が弱いので本書の内容が理解できない。 気が付いたのは第13章(p.575)以降出てくるギリシャ文字の小文字の書体が妙なのだ。 普通の書体は、αβγδεζηπσ のような正立体か、 $\ce{ \alpha \beta \gamma \delta \epsilon \zeta \eta \pi \sigma }$ のような斜体だろうが、本書の書体は左斜体、 つまり、左に傾いている。TOWER RECORDS のロゴマークを思い浮かべればいいだろう。 なぜ左斜体になっているか、しかも第13章以降に限ってかはわからない。

p.497 は 「11.3.3 田辺-菅野ダイヤグラム」という項である。多分日本人なのだろう。 インターネットで調べたら、やはり日本人だった。日本人にこのような業績があったとは知らなかった。

p.712 を見ていたら上から3行目にこんな記述があった。

4. $\ce{ {\eta}^{5}-C5H5 }$ および $\ce{ {\eta}^{6}-C6H6 }$  は3つの配位座を占める6電子供与体と考えられる.

なんだ、この $\ce{ \eta^5 }$ というのは。飛ばして読むのが悪いことはわかっているが、気になる。 前にどんどん戻って調べていくと、pp.581-582 にこんな記述があった。

配位子が複数の原子で金属に結合している場合には, ギリシャ文字の η (eta) に続いて上付で結合原子数を書くように定義されている. 例えばフェロセンのシクロペンタジニエル基は5つの炭素で鉄に結合しているので, $\ce{ {\eta}^{5}-C5H5 }$ と記述する.それゆえ, フェロセンの化学式は $\ce{ ({\eta}^{5}-C5H5)2Fe }$ と書く.

なるほど、$\ce{ {\eta}}$ は配位子が複数原子で金属に結合していることを表わす表記なのか。 では $\ce{ {\eta}^{5}-C5H5 }$ や $\ce{ {\eta}^{6}-C6H6 }$ が、 索引の C の部にある理由はなぜだろうか。前者は「ペンタハプトシクロペンタジニエル」と読むらしい。 では P にあってもよさそうなものだ。ペンタハプトは5つの場所で固定するという意味で、$\ce{ {\eta}^{5}}$ の部分の読み方だ。$\ce{ -C5H5 }$ の部分は図 13.7 によれば、シクロペンタジニエルだ。 ここを取り出せば C で始まることはわかる。では、 $\ce{ -C6H6 }$ はどうだろうか。表13.7 を見ると「ベンゼン」としか書いていない。ベンゼンは慣用名だから、 だろうか。よくわからない。  

p.714 の表 15.3 を見てみると、$\ce{ CpMn(CO)3 }$ という化合物がある。$\ce{Cp}$ という元素はあったろうか。 これも後戻りしてみたら、図 13.7 一般的有機配位子のなかにシクロペンタジナミニル (cyclo-$\ce{ C5H5 }$ )($\ce{Cp}$ )とあった。$\ce{Cp}$ は元素ではなくて配位子なのか。

p.778 からは環境化学について解説がある。金属としては水銀や鉛、ヒ素、放射性廃棄物について問題が列挙されている。 また非金属としては硫黄、窒素酸化物と光化学スモッグ、オゾン層、温室効果が取り上げられている。 これらについては書きたいこともあるが、今回は見送る。

誤植

裏表紙の物理定数に関する誤植はⅠ巻と同じだ。

ほかに、罪のない誤植は次のとおり

p.582 脚注ジベンゼンクロムは $\ce{ ({\eta}-C6H6)2C5 }$ と表記される→ $\ce{ ({\eta}-C6H6)2Cr }$
p.615 上から5行目、6行目、イラスト説明    符合→符号

数式・化学式記述

このページの数式は MathJax で記述している。 また反応式は MathJax 拡張の mhchem を用いている。

書誌情報

書 名ミースラー・タール無機化学Ⅱ
著 者Gary Miessler, Donald A. Tarr
監訳者脇原 將孝
訳 者内本 喜晴, 金村 聖志, 小宮 三四郎, 引地 史郎, 山瀬 利博, 脇原 將孝
発行日平成 15 年 (2003 年)3 月 31 日
発行元丸善
定 価5200 円(本体)
サイズA5版 373ページ ~ 792 ページ
ISBN4-621-07232-3
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