大鹿 靖明:ヒルズ黙示録・最終章

作成日: 2010-05-22
最終更新日:

概要

堀江貴文、村上世彰、東京地検特捜部。彼らの闘いが描き出す現代日本社会の実相

感想

私が読んでみて感じたのは、金の動きがわかる人とわからない人がいる、ということだった。 この本に出てくる登場人物は金の動きがわかる人であり、 私は金の動きがわからない人である。 だから、事件を捉えるという意味ではこの本を読み通すのは、苦痛だった。

しかし、事件のもとになる人間関係を見るという意味ではおもしろかった。 194ページに、次の記述がある。ライブドア社の強制捜査が始まった2006年1月16日以降のことである。

捜査を受けた社内対策会議の席上、堀江はぼそっと 「ひなのちゃんに迷惑がかかっちゃうな。かわいそうだな。」 と、交際相手の吉川ひなのの身を案じた。 (中略)幹部たちにとっては堀江の発言は、容認しがたいものだった。 宮内はこのときのことを振り返って法廷でこう証言した。
「社員よりも他の人のことがかわいそうと言ったことが、 つらい言葉だった。守ろうと思っていたものがガラガラと崩れた」

宮内とは宮内亮治のこと。ライブドアの経営の中心だった男である。 こういう、人間臭い話を知って、本を読んでよかったと思う。 つい最近、NHK で「大人かわいい」を発信している吉川ひなのが出てきたので、 この個所がふと気になった。ちなみに、現在吉川ひなのは30歳という。

そして、215 ページにはこのような記述もある。

ライブドアをこよなく愛し、ライブドアを自信の「作品」と思っていた宮内。 彼は保釈後、「バイトでもいいから、ライブドアに戻りたい」 といっていた。
その彼が全株を売っていた。

最後の一文が事実だとすると、これが意味するところは何か。 単に金が欲しかったのか。それとも、縁を切りたいから売ったのか。 どのように解釈すればいいのだろうか。

構図としては、ライブドアの堀江、村上ファンドの村上のほかに、 検察の闇もある。そしてわずかだが、 既存のマスメディアの中のテレビ局にも触れられている。 221 ページには、次のように書かれている。

堀江と村上の滅亡にもっとも溜飲を下げたのは、こうした大手メディアの支配者たちだったろう。

私の読み方が正しければ、 こうした大手メディアにはフジサンケイグループやテレビ東京を含む日経グループが含まれる。 私は両グループとも嫌いで、協力した覚えもない。しかし、フジサンケイグループが経営する彫刻の森美術館には行ったことがある。 また、日経グループ系列の東京12チャンネル(現テレビ東京)が放映していた早指し将棋選手権は毎週見ていた。 今は、お金を投じて両グループの活動に貢献することはない。 フジは、夜8時台のBSプライムニュースは時々見る。 日経は、日経サイエンスを自腹で1回買っただけで、あとは勤務先にあるのを見たり、 新聞の網棚においてあるのを見たり、他人様の新聞を見たりしている。これでいいだろう。

最後に、222ページで、村上と大学で同級生だった冨山和彦のことば

「必要なのは脳みそに汗をかく人に資金の出し手がいることです。」

が紹介されている。脳みそに汗をかいている人を見つけることができる人材や その汗が将来につながることを見通せすことができる人材を育成するのは大変だと思う。(2010-05-22、2014-11-15修正)

書 名 ヒルズ黙示録・最終章
著 者大鹿 靖明
発行日2006年11月30日(初版)
発行元朝日新聞社
定 価740円(本体)
サイズ
ISBN4-02-273113-3
その他越谷市立図書館で借りて読む。

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MARUYAMA Satosi