「はしがき」から引用する。
商学は,欧州大陸の地で今を去る凡そ 300 年まえ誕生した伝統ある旧い学問である。 (中略)商学の全領域は,今ふうの学問とは多分に相異る古めかしい相貌を呈していて, 現代のマネジメント論やマーケティング論のアプローチに慣れてしまった研究者や学生諸氏にとっては見掛け上からはとまどいも覚えるであろうことは多分に察せられる。 (中略)この商学という近世期の造作物の古びた外観をこのさい全面的に洗い直し, 内装までも現代の利用者向きに一新してみたら,それはどのような姿をわれわれの前に顕わすであろうか。 思い切って大胆にその作業を試みたのが本書であり,敢えて『現代の商学』と題するゆえんである。(後略)
要再読である。
本書の p.172 から引用する。
学生時代に買えば,ほぼ一生使える‘英和辞典’が非耐久消費財で,5 年で買い替える‘自動車’が耐久消費財だというのも不合理である。
「学生時代」がいつの学生を指すのかはわからないが、私が大学生のころは、 「高校生のときに使っていた英和辞典を大学生になっても使うものではない」と英語の教師から叱られたような気がする。 英語にかぎらず、時代を写す鏡である言語は変わっていくものだから、やはり英和辞典も新しいものを都度買うべきなのではないかと思う。 一方、車検の都合などもあるだろうか、自動車は 5 年で買い替えるのはわからないでもない。ということは、 全ての財は非耐久消費財化しているのだろうか。
本書の p.173 から引用する。
国際商品(international goods)と呼ばれる一群の商品がある。 これは原材料商品が中心であるが,世界中の複数の地域で産出し, かつ国際的・世界的に広く需要のある商品のことである。 それらは比較的均一性があり,貿易量も多く,価格形成が国際市場にゆだねられ,かつ開かれた国際市場(先物市場など)が存在している。 農産物でいえば,‘小麦’や‘コーヒー’や‘砂糖’は,上の定義に該当するから国際商品といえるが, ‘米’や‘紅茶’や‘塩’はそうではない。‘石油’や‘ゴム’は国際商品だが、‘鉄鉱石’とか‘乗用自動車’とかはそうではない。
‘米’が国際商品でない、というのは確かにそうだ。米の産出国である日本に暮らす者として残念に思ったが、 国際的になっていないからいいことがあるのかもしれない。また、‘鉄鉱石’が国際商品でないというのも意外だが、 鉄鉱石の価格形成が国際市場にゆだねられているということではないので、その定義からいえば国際商品ではないということがわかった。
| 書名 | 現代の商学 |
| 著者 | 林周二 |
| 発行日 | 1999 年 11 月 30 日(初版第1刷) |
| 発行元 | 有斐閣 |
| 定価 | 4400 円(税別) |
| サイズ | A5版 |
| ISBN | 4-641-16078-3 |
| NDC | 670.1 |
| その他 | 草加市立図書館で借りて読む |
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