宮沢 健一:現代経済学の考え方 |
作成日: 2021-01-30 最終更新日: |
<第一講 経済原則と経済体制>から引用する。
このセミナーの主題は、 〈現代人のたえの経済学再入門〉という意味をももたせながら、 経済学の考え方とか、経済のつかみ方という角度から、 今日の経済問題なり、現代の経済学の姿勢なりを、考えてみようというにあります。
表題は現代経済学の考え方だが、発行日は 1985 年である。だから、当時の現代、ということを考えておくことは大事だ。 第一講を読んだが、理解したという気持にはならなかった。 理解するには、今にひきつけて考えればいいだろう。 出版されてから 35 年以上過ぎた今、大きく変わったものがいくつもある。 一つは情報伝達の進展だろう。p.23 では次のとおり述べられている。
生産と消費の距離が多層化し立体化して複雑化した背景には、このような、 情報開発のシステム化、迂回生産の長期化、カネとクレジットによる経済化、 情報経済化、組織経済化、の進行がある。しかもこれらは、相互に、すべて関連しあっている。
これが本日までの姿だが、論者の中には、たとえばトフラーの『第三の波』のように、 逆に情報革命、ニューメディアがどんどん進歩すると、 生産と消費の距離が縮まるのだという予想もある。しかもそのためには、 情報機器のコスト低廉化など、いくつかの条件が充たされる必要があるはずで、 現在までの姿は、むしろ生産と消費の距離が多層化してきたことにある。 そしてそれに、生産と消費の直結型ルートも加わって、複線化の方向もみえてきた、 と捉えるべきであろう。
情報革命、ニューメディアということばがかえって古臭さを出しているが、 現在はまさに複線化されているといえる。
この後本書では、経済の原則を踏まえる必要があるとして、
経済を動かす基本原理は変わらない、と説く。その後、資本主義、社会主義のそれぞれの経済メカニズムを解説する。
ただ著者は、
体制の選び方として「資本主義か社会主義か」という問題の立て方は、今日ではすでに古びた見方となった。
という。そして著者は競争システムと統御システムという項を立てて、
市場と制御との二つ(中略)の役割を異質のものとして分離し、
それぞれの分担を明確にすることが目的に適うものとする。
としている。この目的というのは経済を成功させることだろう。さて、この分離・分担はうまくいくのだろうか。
第一講を見る限りは、これ以上のことについては触れられていない。
書 名 | 現代経済学の考え方 |
著 者 | 宮沢 健一 |
発行日 | 1985年4月23日 |
発売元 | 岩波書店 |
定 価 | 1800円(本体) |
ISBN | 4-00-004882-1 |
その他 | 岩波セミナーブックス 12 |
まりんきょ学問所 > 読んだ本の記録 > 宮沢 健一:現代経済学の考え方