「新訂版まえがき」より引用する。
(前略)この「演習 材料力学」が出版され,もう 18 年が経過しました.この間,18 刷,約 20,000 冊の本が学生諸君を中心として,愛用されて来ています。 ただ 18 年も経過しますと,その規格当初と異なる状況も生じ,またこの本自身に対する種々の要望も明らかになって来ました.そこでこれらを考慮し, ここでこの本を全面的に改訂しようということになりました.(後略)
私は応用物理の学徒であったが、多少は機械関係の授業も受けた。その中に材料力学があった。私は大学 2 年冬学期のときに試験を受けたが、不可だった。大学 3 年生の冬学期に再度試験を受けて、 可の成績で単位を得たが、もしこれが必修であったらどうなっていたかと思うと肝が今でも冷えるのだった。
p.63 からはじまるのは「6 真直ばりのたわみ」である。ここで、はりに関するたわみが次のように導出されている。
たわみとたわみ角の定義図 6.1(省略)のように,はりが横荷重を受け,その軸線が曲がるとき,この曲線をたわみ曲線(deflection curve)と呼ぶ. そしてはり軸上の任意の `x` の位置での `y` 方向変化量をたわみ(deflection)といい,この位置での接線がもとのはりとのなす角 `theta` をたわみ角(slope)という.
懐かしい。材料力学と聞いて思い出すのがこのようなことだ。次も引用しよう。
たわみ曲線に関する式 たわみ曲線の曲率 `1//r` が曲げモーメント `M` のみに影響され,せん断力 `F` の高架は受けないと考え,かつたわみ角 `theta` が小さく,
`tan^2 theta ≪ 1`が成立するならば,たわみ `y` と曲率 `1//r` との間には,次の関係が成立する.`1/r = -(d^2y)/(dx^2)`これに,5.1 節の `M` と `1//r` との関係を用いて`EI_z(d^2y)/(dx^2) = -M`ここで,`E, I_z` はそれぞれはりのヤング率と断面 2 次モーメントである.さらに,4.2 節の `M` と `F` およびはりに作用する分布荷重 `q` との関係を用いれば,次の式を得る.
`EI_z(d^3y)/(dx^3) = -F``EI_z(d^4y)/(dx^4) = q`与えられた問題に対するたわみ,たわみ角は,それぞれ上式を用いて積分してゆくことにより求められる.このような方法を積分法(integral method)と呼ぶ.
微分方程式の応用例は数多くあるけれど、解となる曲線が4次の多項式になるという例はほとんどないだろう。世の中の微分方程式の本で、応用としてさまざまな例が載っているが、 このたわみ曲線をとり上げている例を私は見たことがない。
p.65 には、長さ `l` の単純支持ばりで、固定ヒンジ支点から距離 `a` の場所に荷重 `P` が作用したとき、固定ヒンジ支点からの距離 `x` におけるたわみ `y` とたわみ角 `theta` の式が載っている。
この式を見て、私がはるか昔、もう 40 年ほど前に行った物理学の実験を思い出した。各種の金属棒にさまざまな質量の錘を載せて、そのたわみを光てこで測り、質量とひずみの関係からヤング率を求める、 という実験である。この、ユーイング(Ewing)の方法とか、ユーイングの装置などと呼ばれるヤング率の測定は、現在でもいくつかの大学で物理学実験として行われているようだ。
このページの数式は ASCIIMathML で記述している。
書名 | 演習 材料力学[新訂版] |
著者 | 尾田十八・三好俊郎 |
発行日 | 2001 年 4 月 10 日 新訂版第 1 刷発行 |
発行元 | サイエンス社 |
定価 | 1980 円(本体) |
サイズ | A5 版 213 ページ |
ISBN | 4-7819-0975-2 |
NDC | |
備考 | 越谷市立図書館で借りて読む |
まりんきょ学問所 > 読んだ本の記録 > 尾田十八・三好俊郎:演習 材料力学[新訂版]