悪いもの、なくすべきものとしてとらえられているマンネリズムを、よきものとして、積極的にとらえる。
この本はいくつかのエッセイの集まりである。相互の関連性はないが、同じことがらを複数のエッセイで語っているところもある。 この本の著者は泳いだり、走ったりして体のマンネリズムを楽しんでいる。しかし、これは著者のように時間がある人だからできるのだろう。 私のようなサラリーマンは、朝晩の通勤で体が疲れてしまい、マンネリズムの楽しみどころではない。 無理にいえば、職場と最寄駅の間は徒歩 15 分はかかるので、ここを往復するのがマンネリズムの楽しみに相当するかもしれない。
あるエッセイで、著者は二人の体育の先生を紹介している。松延博と野口三千三だ。 このうち野口は、野口体操の発案者として知られている。この体操(整体)が、 福田定良の「仕事の哲学」という別の本にも紹介されていることに驚いた。
アンチエージングということばが私は嫌いだ、ということを Facebook に書いた。
そのとき、どこに伏線があるのかが思い出せなかった。
今思えば、この本にあったのかもしれない。
12 の「いい加減にします」では、オーディオ評論家の長岡鉄男がテレビにもエージングが必要なことを発見した
と書いている。
13 の題名は「エージング―年を取る?」となっていて、さらにエージングに関して考察されている。
エージングの肯定的な意味とその実際が述べられている。
そうなんだ。(2014-11-15)
pp.26-29 で、著者は原真(高山登山家、外科医)の著書を紹介している。 引用された箇所を見るだけでも迫力がある。この引用を受けて著者は高山登山に関する遭難に関してこう結論を出している。
体力がないから遭難するのではない。自己認識ができなくなり、自分のおかれている状況を正しく判断できない者が遭難するのだ。
私はこの引用文と合わせて、その直前におかれた次の主張もまた、気に入っている。
(前略)だが、地上の下界で「善人の仮面」をかぶりつづけ、 小心な小市民として「安逸な日常生活」を愛するためにもまた、それなりのエネルギーがいるのではないか。
(以上、2019-01-26)
書 名 | マンネリズムのすすめ |
著 者 | 丘沢 静也 |
発行日 | 1999 年 6 月 20 日 |
発行元 | 平凡社 |
定 価 | 660円(本体) |
サイズ | 216ページ 17.2cm |
ISBN | 978-4-582-85010-3 |
NDC | 914(随筆、エッセイ) |
まりんきょ学問所 > 読んだ本の記録 > 丘沢 静也:マンネリズムのすすめ