(前略)本書ではまず伝統的形式論理学,次に,形式論理学の現代的形態である記号論理学の諸体系のうち,初等的な二つの体系, すなわち,命題論理学と述語論理学を取りあげた。(中略)さらに,高次の論理学としての弁証法的論理学のごく初歩的な部分を取りあげた。
巻末に第1章、第2章、第3章に対応した練習問題がある。ただし、第4章「弁証法的論理学」に対応する練習問題はない。練習問題への解答はない。また、参考文献や索引もない。
要再読である。
本書での否定記号は `not` ではなく `bar` である(p.93)。また本書での連言記号は `^^` ではなく、`*` である(p.93)。なお、選言記号は `vv` である(p.94)。他の書籍で条件法などと言われる命題は内含命題と呼ばれ、 内含命題を表す記号は `sup` を使っている(p.96)。他書では双条件法などと呼ばれる命題は本書では等値命題と呼んでいて、`-=` で表している。
練習問題を引用する。まず、p.235 にある、第1章の範囲の問題だ。本書にある①、②、… のような丸囲み数字は、 引用では点付き数字にしている。
【問題2】次の概念の定義で正しいものに○を,誤っているものに×をつけなさい。誤っているときは概念の定義のどの規則に違反しているか。
- 直角二等辺三角形とは一角が直角に等しい三角形である。
- 学校とはそのなかで人びとが学習する建物である。
- ライオンは百獣の王である。
- 実数とは有理数と無理数とからなる。
- 経済学とは経済学的知識の総体である。
- 整数は正数と負数からなる。
- 実数とは虚数ではない数のことである。
- 有理数とは整数と整数との比に等しい実数のことである。
- 五感とは視覚,聴覚,触角および嗅覚のことである。
- 正三角形とは三角が等しい三角形のことである。
これに解答するには、本書 pp.26-27 の[3] 定義の規則を参照する必要がある。一部割愛して引用する。
さて,これまで述べてきた方法で概念を定義するにあたって,犯してはならない規則がある。これを,概念の定義の規則という。
- 定義される概念の外延は,定義する概念の外延に等しくなくてはならない。
- 定義は循環を含んではならない。
- 定義は否定的であってはならない。
- 定義はあいまいさを含んではならない。
では、正誤を確認しよう。
1. は誤っている。この誤りは規則1. に該当する。定義される概念の外延が定義する概念より狭いからだ。定義する概念「一角が直角に等しい三角形である」は、二等辺三角形以外の三角形も含んでいる。
2. は正しいと思う。この定義の類似例があるからだ。本書の p.24 では、家とはそこで人びとが生活する建物である
とあり、これは(正しい)概念が定義される具体例として挙げられている。
3. は誤っている。この誤りは規則4. に該当する。規則4.の例示を割愛したが、まさに割愛したその部分でこの定義がある。
4. は定義そのものが誤っていると思う。というのは、数学的に実数は有理数列の極限として定義され、無理数は有理数以外の実数として定義されるからだ。ただ、これはどの規則に違反しているのか、それがわからない。
5. は誤っている。この誤りは規則2. に当てはまる。規則2.の例示を割愛したが、まさに割愛したその部分でこの定義と類似する定義がある。
6. は誤っている。この誤りは規則1. に該当する。定義される概念の外延が定義する概念より広いからだ。整数はゼロを含むが、正数にも負数にもゼロは含まれない。
7. は誤っている。この誤りは規則3. に該当する。なお、実数については 4. も参照。
8. はどうだろうか。内容は正しいだろうが、2つの整数 `n, m` をもってきたとき `n:m` が有理数だということだが、このとき `m` がゼロについての言明がないのでわからない。
9. は誤っている。この誤りは規則1. に該当する。定義される概念の外延が定義する概念より広いからだ。定義される概念には味覚があるが、定義している列挙項目に味覚がない。
10. は正しい。
次に引用するのは、まず、p.245 にある、第2章の範囲の問題だ。なお、命題 p, q は本書では立体であるが、引用では `p, q` と斜体にしている。また、①、②、… のような丸囲み数字は、 引用では点付き数字にしている。
【問題18】次の命題の真理表をつくりなさい。
- `bar p * bar q`
- `bar p vv bar q`
- `(p * q) vv (p vv q)`
- `(bar p * q) vv (p * bar q)`
- `(bar p vv q) * (p vv bar q)`
- `bar p sup q`
- `p sup bar q`
- `(p * q) sup p`
- `(p * q) sup q`
- `(p vv q) sup p`
- `(p vv q) sup q`
- `(bar p * q) sup p`
- `(p * bar q) sup q`
- `(p * q) -= (p vv q)`
- `(p sup q) -= (bar p vv q)`
1. をやってみよう。
| `p` | `q` | `bar p` | `bar q` | `bar p * bar q` |
|---|---|---|---|---|
| T | T | F | F | F |
| T | F | F | T | F |
| F | T | T | F | F |
| F | F | T | T | T |
2. 以下も同様にできるだろう。
p.19 の上から7行目、非本質的微表は,それがあってもなくても,
とあるが、
正しくは《非本質的徴表は,それがあってもなくても,》だろう。
これは誤植というほどのことでもないが、p.140 以降、個体変項を表す文字 x がときどき斜体 `x` のようになっている。 この立体/斜体の区別は意図的ではないと私には思われる。
| 書名 | 論理学入門 |
| 著者 | 仲本章夫 |
| 発行日 | 2001 年 3 月 25 日(第1版第1刷) |
| 発行元 | 創風社 |
| 定価 | 1600円(本体) |
| サイズ | A5版 |
| ISBN | 4-88352-033-1 |
| NDC | 116 |
| 備考 | 草加市立図書館で借りて読む |
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