野矢 茂樹:ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む |
作成日: 2014-11-20 最終更新日: |
ウィトゲンシュタインの衝撃的著作を著者がわかりやすく読み解き、再考察する。
p.197 で、同書の原文が引用されている。
4.463 Die Tautologie läßt der Wirklichkeit den ganzen-unendlichen-logischen Raum.
ここで挿入されている unendlichen をどう解釈するか。「無限の」と訳してはいけないと著者はいう。
そして p.199 でこの文の後半を、意訳するならば「どのような大きさの論理空間であっても」という趣旨と考えるべきだろう
と述べている。
私はここでつまづいた。「どのような大きさの論理空間であっても」は、「無限の論理空間であっても」と同じ意味ではないのだろうか。 考えて、やはり違うのだと気付いた。それは、「自然数は無限大という集合を含まない」ことを最近知ったからである。
自然数の集合を N とする(N には 0 を含めない)。すると、N の任意の元 n に対して、1 / n > 0 が成り立つ。 もし、N に無限大が入っているのなら、1 / n > 0 ではなく、1 / n ≧ 0 でなければならない。 なぜなら n = ∞ のとき 1 / n = 0 だからだ。 この等号が成り立つか否かが勝負となる。取り合えず、私はこうして自分を納得させた。
p.275 で著者はいう。操作の反復はいつまで続けられてもよい。ここにわれわれが無限に向かい合える唯一の道がある。
ここの 注釈 55 が気になる。
『論考』の数とは、それゆえ基本的に自然数であるが、分数や無理数にまで拡張することは可能である。
そのあとで、代数方程式の解ぐらいまでは、『論考』のやり方で行ける。
と著者は述べているが、
代数方程式の解の集合はあくまで「代数的数」であり、実数 (= 有理数 + 無理数)のすべてを満たすものではない。
たとえば、e や π は超越数である。なお、超越数とは、代数的数ではない数であり、代数的数とは、代数方程式の解となる数である。
私にはこれぐらいしか、突っ込みどころがない。
書 名 | ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む |
著 者 | 野矢 茂樹 |
発行日 | 2006 年 4 月 10 日 |
発行元 | ちくま学芸文庫 |
定 価 | 1200円(本体) |
サイズ | 382p ; 15cm |
NDC | 134.97 : ドイツ・オーストリア哲学 |
ISBN | 4-480-08981-0 |
その他 | 南越谷図書館で借りて読む |
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