中北 浩爾:自民党:「一強」の実像

作成日:2019-05-01
最終更新日:

概要

自民党の現在をデータに基づいて読み解く。

感想

何かにつけて話題になる自民党だが、著者のいうとおり、では自民党はどんな政党なのか、ということは議論されてこなかった。 それよりなにより、今の自民党が政局でどんな立場か、というほうがそのときどきにおいては重要だからだ。 そこで、こうやって書籍の形を読めば、自民党を総体としてとらえるのにはいいだろうと思ったわけだ。

組織と同意

自民党には、事前審査制という制度がある。法案や予算案を自民党の審査を経て了承することである。 これがわざわざ言わなければならないことなのだろうか。

私が社会科を知らないからいうのだが、三権分立、ということばを習った。司法、立法、行政である。 司法を担う機関は裁判所である。立法を担う機関は国会である。行政を担う機関は官庁である。こう覚えていた。 そうすると、内閣、ということばはどこにあたるのだろうか。テレビを見ていると国会や委員会で「内閣総理大臣 安倍晋三くん」という声がきこえる。 調べてみたら内閣は行政を行う機関だった。官庁ではなかった。官庁はどういう位置づけだろうか。 各官庁も行政機関ではないのかな。こう考えてみた。内閣は行政を行う機関である。内閣には総理大臣のほかに各大臣がいる。 各大臣は所管の業務がある。所管の業務を行うためには組織が必要である。それが各官庁である(省庁といったほうがいいかな)。 こうすれば、各省庁が行政を行う、といってよいだろう。

前に戻る。事前審査制という制度をなぜわざわざ言わなければならないか。普通に考えれば、立法は国会がするものであって、行政がするものではない。 また、立法を国会がするもの、というのは国会議員が決めるという意味であって、党が、それも特定の党が決めるというものではない。 だとすれば、事前審査制というのはおかしな話である。事前審査制とは、わたしの感覚では「根回し」である。

根回しがなければ、どんなに世の中が楽になるだろうか(英語に訳せ、といわないように)。私の身近な例でも、 ある業務をやります、やめます、かえます、と提案するときに根回しをしていないと、「それは反対だ」と言われる前に、 「そんなことは聞いていない」という理由で提案が却下されるのだ。ばかばかしい。

話がそれた。要は、国会で審議する政策には自民党の同意(コンセンサス)を得ることが何より大事であり、 そのためには事前審査制、というのを導入するのがよい、ということになったようだ。

この事前審査制とからめて、郵政民営化のときの様子が記述されている。詳細は本書を参照されたい。

私が驚いたのは、内閣は国会審議に関与できないということだった。会期不継続の原則というのがあって、 確かに平気で会期切れで重要法案が一からやり直し、 ということが数限りなくあった。また日本では国会の会期も定められていて、内閣はそれをコントロールする権限はないようなのだ。ふーん。

そのほか

おもしろいことばを拾っていく。「広報には、良いものをより良く見せる効果はあっても、悪いものを良く見せる効果はありません。」

そのほか、女性候補と世襲候補、個人後援会、地方組織などの興味深い分析がなされているが、疲れたのでこれでおしまい。

書誌情報

書 名自民党:「一強」の実像
著 者中北 浩爾
発行日 年 月 日(第版)
発行元中央公論新社
定 価円(本体)
サイズ
ISBN
その他中公新書。つれあいから借りて読む

まりんきょ学問所 読んだ本の記録> 中北 浩爾:自民党:「一強」の実像


MARUYAMA Satosi