ウンベルト・エーコ:完全言語の探究 |
作成日: 2012-05-12 最終更新日: |
西洋における、バベル以降の完全言語の営みについて考察する。
本書は NDC の 802 、すなわち言語史・事情.言語政策に位置付けられている。
これは本書の後付にも、また国立国会図書館のデータベースにも記されている。
しかし著者は序の 27 ページで、言語学や記号論ではなくて(中略)思想史をわたしとしては選ばせてもらいたいと思う
と述べている。
私はこの本を読み終わってもまだ、思想史まで思い至らなかったのは不徳の致す限りである。
第七章は、像からなる完全言語、と題されている。この最後の節に、エイリアンにとっての像という、 現在非常に興味深い調査結果が載っている。要約すると、 アメリカでは核廃棄物を地下数百メートルの場所で、数万年保管しなければならないが、この危険物を後世の人々に正しく伝える方法はあるか、 という問いである。 調査者は、絵画文字では疑問としている。 調査者の報告で最も効果的とされているのは、複数の専門学者からなる一種のカーストを作ることで危機の認識を伝える、ということである。
今回の福島第一原子力発電所の事故を思い出すとき、まず初めに上と同様に核廃棄物の処理が真っ先に気になる。 それから同様に、津波の被害を後世に残すことも、核廃棄物ほどの極度の深刻さはないにせよ、応用できるだろう。
ところで先に、絵画文字では疑問という情報を呈示したが、これについて、絵画でその危機を表示する場合に最も効果的なのは、 ムンクの「叫び」であろう、という結論を示したことが報道された。 この報道を聞いた数か月後、複数ある「叫び」の一つが史上最高額で落札された、というのも何かの因縁であろう。
第 17 章の結論では、運動を表す一連の語彙を作成したニーダという人の表が面白い。
run | walk | hop | skip | jump | dance | crawl | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1. one or another limb always in contact vs. no limb at times in contact | - | + | - | - | - | +- | + |
2. order of contact | 1 - 2 - 1 - 2 | 1 - 2 - 1 - 2 | 1 - 1 - 1 or 2 - 2 - 2 | 1 - 1 - 2 - 2 | not relevant | variable but rhythmic | 1 - 3 - 2 - 4 |
3. number of limbs | 2 | 2 | 1 | 2 | 2 | 2 | 4 |
エーコは、to hop の同義語を見つけるのはむずかしく(中略)、to skip に至ってはお手上げである
と述べている。
これは日本語の場合でも同様だ。
書 名 | 完全言語の探究 |
著 者 | ウンベルト・エーコ |
発行日 | 2011 年 12 月 9 日 |
発行元 | 平凡社 |
定 価 | 1900円(本体) |
サイズ | 552ページ 16.0cm(B6変型判) |
ISBN | 978-4-582-76750-6 |
NDC | 802 |
その他 | 平凡社ライブラリ |
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