宮本 英世:作曲家とっておきの話

作成日: 2009-08-09
最終更新日:

概要

風貌・家系など、生き方・行動、作曲・演奏、人間関係、趣味・遊びの5つの観点から、 特色ある作曲家を紹介する。

感想

なぜフォーレが取り上げられないのか

よく調べられてはいると思うが、一つだけ気に入らない点がある。 それは、フォーレのことが全く取り上げられていない点である。

最も許せないのは次の点である。「風貌・家系など」の観点にある、<聴力を失った作曲家>の箇所で、 フォーレを取り上げていないことである。ベートーヴェン、スメタナを取り上げているのはよいが、 フォーレをさしおいてロベルト・フランツという無名の作曲家を紹介するとはどういうことか。 ほかに、難聴が治ったポール・デュパンだとか、一時的な異常に悩まされたシベリウス、ファリャは取り上げている。 それなのに、ガブリエル・フォーレが取り上げられていないのは、この本の欠点である。 なお、フォーレの難聴は、高音域は低く聞こえ、低音域は高く聞こえ、中音域は音程は正常だがかすかにしか聞こえないという、 聴覚異常である。

それから、「趣味・遊び」の観点にある、<タバコ好きだった作曲家>の箇所で、 ブラームス、ドビュッシー、ラヴェル、プッチーニ、オネゲル、ウェーベルン、 ストラヴィンスキーを挙げておきながら、フォーレの名がないとは非常におかしな話だ。 フォーレの口髭が黄ばんでいた理由や、声がしわがれていた理由にタバコの吸い過ぎがあるぐらいだ。

「人間関係」の観点にある、<名曲を献呈された作曲家>の箇所では、ウジェーヌ・イザイに捧げられた曲に、 フランクの「ヴァイオリン・ソナタ」とショーソンの「詩曲」があることが述べられている。 イザイに捧げられた曲にはフォーレの「ピアノ五重奏曲第1番」もある。 先の2曲はとりわけ有名であり、このフォーレの曲は知名度が劣ることは承知しているが、悲しい。 同じように、フランツ・リストに献呈された曲に、ショパンの練習曲集Op.10とボロディンの 「中央アジアの草原にて」が記載されている。私としては、これにフォーレの「バラードOp.19」を付け加えたい。 知名度が足りないことはわかるのだが、なお、フォーレの名曲を推しておきたい。

それから、本書が刊行されたときには知られていなかったと思われるが、 フォーレには隠し子がいたので、それを取り上げるとより面白かった。

面白がる人

以上は「フォーレが出ていない」というだけでけなした評である。 こんな評を面白がっていた人が以前いて Web ページに書いていたが、今そのページは見つけられない。

書 名作曲家とっておきの話
著 者宮本英世
発行日1996年12月20日
発行元音楽之友社
定 価971円(本体)
サイズ246ページ 18cm
ISBN4-276-35132-4

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MARUYAMA Satosi