岩波講座 現代物理学の基礎2古典物理学Ⅱ

作成日:2021-09-14
最終更新日:

概要

第Ⅲ部 相対性理論、第Ⅳ部 巨視的状態の概念、第Ⅴ部 古典力学の確率論的取扱い  第Ⅵ部 古典物理学的世界像 からなる。 なお、索引はない。

感想

第Ⅲ部 相対性理論の第 6 章 「Galilei 変換と力学法則」の p.6 にある Maxwell の方程式を見て、 違和感を抱いた。引用にあたって、 表記の都合で括りカッコを省いたり電場 Eや磁場 Hの字幅を太字から通常に変えたりしたがご了承願いたい:

`{:("grad" E = 0),("grad" H = 0),("rot" E + 1/c del/(del t)H = 0),("rot" H - 1/c del/(del t)E = 0):}`

ウーム、これは CGI 単位系ということだろうか。おまけに、 E-H 対応で書かれていて、 E-B 対応ではない。困った。昔の本だからそのあたりを心得て読めばいいのだろうが、 ただでさえ難しい物理学がますます読めない。

ここを飛ばして、第Ⅳ部 第 9 章「仕事と熱」の p.116 を見ると、 Maxwell-Lorentz の方程式として示されているのは、

`{:(grad xx E = -1/c (delB)/(delt)), (grad * E = -4pi grad * P + 4pi rho), (grad xx B = 1/c (del E)/(del t) + (4pi)/c [(delP)/(delt) + c grad xx M + j]), (grad * B = 0):}`

である。ここで、B は磁束密度、P は電気偏極、 M は磁化、ρ は電荷密度、j は磁化密度である。 EHと同様、これらも式中では通常字幅である。 おまけにこちらはE-B 対応で書かれていて、E-H 対応ではない。

ここを飛ばして、第Ⅴ部 第 16 章「確率論的古典力学」を見ると、ブラウン運動の動力学について、 p.267 にこんな記述がある。

ここでわれわれはさらにかなり思い切った仮定を行なってみよう.(中略) この仮定が物理的に許されるかどうかはまだ解明されていないが, この仮定を受け入れるとかなり衝撃的な結果が厳密な推論によって得られる. それは古典力学の基礎と量子力学の基礎が意外に近いところに位置していることを示唆する.(中略) 読者は瞳をこらして推論の道をたどっていただきたい.

わたしは残念ながら推論の道をたどることができなかったが、衝撃的な結果とか、 瞳をこらしてといった表現から、この執筆者の興奮を感じ取ることができる。

さらに飛ばして、第Ⅵ部 第 18 章「古典力学の世界」を見ると、p.317 にこんな記述がある。

(前略) さらに科学以前にまで,さかのぼるならば,この世の中で起こる出来事には何か原因があるだろうという考え方を, ほとんどすべての人が,ほとんど無意識的にしてきたように思われる. そういう素朴原因存在論とも呼ぶべきものが,幼児にも古代人にも共通して見られる. たとえば 2 歳の幼児が,雨が降ってきたのを見て,私に“誰が水をまいているの”と聞いたことがある. 2 歳の幼児において,すでに雨が降るという結果に対する原因を知ろうとする意欲が現れているのである. (後略)

この例を見て、私は意欲が減退していることを感じた。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書 名岩波講座 現代物理学の基礎2古典物理学Ⅱ

著 者豊田 利幸, 碓井 恒丸, 湯川 秀樹
発行日1973 年 3 月 12 日
発行元岩波書店
定 価1400 円(本体)
サイズA5版 382 ページ
ISBN
その他越谷市立図書館にて借りて読む

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