次の短編を収める。
短篇といっても、1ページのものから数十ページのものまで多彩である。 しかし共通していえるのは、わからないということだ。全くわからないものもあれば、だいたいはわかるがわからないところが残るものもある。
「禿鷹」は、禿鷹に突かれる男の物語である。短いし、だいたいはわかる。最後の文で男の気持ちが明かされ、意外とは思うが、 少し考えてそういう気持ちにもなるだろうなとも思う。
わからないものは「掟の門」や「判決」だ。これらは、なぜ最後の文が提示されたか、こじつけでも考えを示すことができない。
「流刑地にて」は機械が出てくる。その構成物の説明に、まぐわ、という器物が出てくる。
鍬の一種だと思うが、よくわからない。広辞苑第四版にはこうある。
わが国在来の農具の一。牛馬にひかせて土を砕いたりならしたりするのに用いる。長さ約一メートルの横木に約二〇センチメートルの鉄製の歯十本内外を植え、
これに鳥居形の柄をつけたもの。
私はこのまぐわがわからないまま、オルゴールにある突起のついた回転する円筒を想像していた。
まぐわだから回転しないので、わたしの想像は当たらなかったことになるが、この機械仕掛けがばかばかしくておかしい。
私がこの作品集の中で一番感情移入できる作品だ。
書 名 | カフカ短篇集 |
著 者 | フランツ・カフカ |
編訳者 | 池内 紀 |
発行日 | 1989 年 8 月 5 日 第 10 刷 |
発行元 | 岩波書店 |
定 価 | 447 円(本体) |
サイズ | 276 ページ |
ISBN | 4-00-324383-8 |
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