「まえがき」から引用する
本書は『したしむ電磁気』という題名からも明らかなように,電磁気学に親しむことを主眼に書いた書物である. したがって,本書のみで通用の教科書が電磁気学として扱っている問題の全般を扱うつもりはない. 筆者の目標は,電磁気学の骨格部分をていねいに説明してみて,読者に電磁気学の内容についての土地鑑のようなものを身につけてもらおう,というものである.
p.124 から引用する。
(前略)日本人が電磁気学で無能であったわけではない.
その証拠は,電気現象よりも少し遅れて発展した磁気の研究,とくに物質の磁気的性質の研究における日本人の活躍にみてとれる. すなわち,明治維新前後に生まれた,長岡半太郎,本多光太郎,少し遅れた加藤与五郎,さらに世紀に変り目に前後して生まれた, 増本 量,武井 武,茅 誠司の諸先生から始まり,最近では「近藤効果」や RKKY 相互作用などの基礎磁気物性論から, Nd-Fe-B 系磁石の発明まで,日本人は磁性の理論や磁性材料開発の分野に大きな貢献をしてきた.
ここで「近藤効果」とは、近藤淳によって解明された現象。磁性を持った極微量不純物がある金属で、特定の温度以下では温度を下げると電気抵抗が上昇する現象を指す。 また、RKKY 相互作用とは、マルヴィン・ルダーマンとチャールズ・キッテル、糟谷忠雄、芳田奎らによって研究された相互作用。 金属中の伝導電子のスピンを介して行われる局在スピン同士の相互作用を指す。 Nd-Fe-B (ネオジム、鉄、ホウ素)系磁石の発明は、日本人の佐川眞人によって発明された。
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書名 | したしむ電磁気 |
著者 | 小林久理真 |
発行日 | 1998 年 10 月 10 日 初版第 1 刷 |
発行所 | 朝倉書店 |
定価 | 2700 円(本体) |
サイズ | A5 版 |
ISBN | 4-254-22762-0 |
その他 | 越谷市立図書館にて借りて読む |
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