カバー裏より<(前略)数多くの実際例からわが国の技術の強さ、弱さを洗い出せば、そこには「賃加工国」にすぎない日本の本質が現れる。 日本よおごるなかれ、作られた強国神話を綿密に検証する。技術立国日本の明日への警告。>
最初に例示されるのは、国産衛星「あやめ」のブラックボックスであるアポジモータの例である。 このアポジモータがブラックボックスであったために「あやめ2号」の打ち上げに失敗したという事例が述べられている。 そして、アポジモータのほか(というよりよりブラックボックス性が強いものとして)ジャイロ基準装置やVCS(Velocity Cut-off Switch)が 挙げられている。これは航空宇宙産業だから特別だ、というのではない。民生機器に近い分野でもそうだというのだ、 衛星とアンテナの接触部にあたるオイルレス・ベアリングや衛星のフラットデッキにつかわれるハニカム構造なども、日本の技術ではないというのだ。
この記事が文藝春秋に掲載されたのは昭和 55 年(1980 年)12 月号である。2019 年の今、そんなことはないだろう、という意見があるかもしれない。 アポジモータは日本で内作されているようだ。ジャイロ基準装置やVCS、オイルレス・ベアリングやハニカム構造は国産化されているかどうか、 わからない。
私が思い出したのは、2018 年に大きなニュースになったファーウェイという中国の会社である。 ファーウェイは第五世代(5G)移動通信システムのネットワーク機器の開発でトップレベルにある。 ある日本企業が、「ファーウェイの5G移動通信システムのネットワーク機器は導入しない」と表明した。 少し調べてみると、このような5G機器は日本では開発していないことを知った。 さて、日本では5G機器開発ができないということなのだろうか。
何から何まで自前で開発することはないけれど、心配にはなるのだ。
書 名 | 幻想の「技術一流国」ニッポン |
著 者 | 内橋 克人 |
発行日 | ???? 年 ?? 月 ?? 日 |
発行元 | 新潮社 |
定 価 | ??? 円 |
サイズ | ??? ページ |
その他 | 新潮文庫、おそらく飯山線の森宮野原駅の売店で買ったはず |
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