基礎編の本書は、フーリエ変換、ラプラス変換、ヘビサイド演算子法、スペクトル解析、特殊関数、ラプラスの方程式、波動方程式、緩和法を収める。
本書のラプラスの方程式の章では、スフェロイド座標によるラプラス方程式の解が記載されている。一般の数学の本ではもちろん、 物理数学を標榜している本でもあまり見ないだろう。「地球科学を主体にして」という副題のとおりだと思う。
面白いことばがあった。著者の一人の力武による「はしがき」の p.ⅳ から引用する。
積の微分 `d(xy) = ydx + xdy` 一つの項を忘れるという初歩的なミスを, 球関数についてのもっとも権威ある本のなかでみつけたことは,若い私にとってきわめてショッキングなことであった. 一見,立派な本でも頭から信用してはいけないとの教訓を得たことであった.
わたしも、一見立派な本でも頭から信用してしないことにしよう。
また、こんなことも面白い。おなじく「はしがき」の p.ⅴから引用する。地球物理学の問題に対しては、数学的厳密性よりも問題の解を得ること、 そしてその解を実測の結果と比較して議論することに意義があると主張している。
このようなポイントを考えて,この本では境界値問題の解法に力を入れるとともに, 演算子法とか緩和法とか,場合によっては「げす手」ともいわれかねない手法についてもふれることにした.
演算子法にしても、また緩和法にしても、いまでは「げす手」ということはないだろう。ただ、本書刊行のころ(初版は1980年)は、そうだったのかもしれない。
このページの数式は MathJax で記述している。
書名 | 物理数学Ⅰ |
著者 | 力武常次・佐藤良輔・萩原幸男 |
発行日 | 1990 年 11 月 20 日 2 刷 |
発行元 | 学会誌刊行センター |
定価 | 3883 円(本体) |
サイズ | A5 版 163ページ |
ISBN | 4-7622-3218-1 |
その他 | 越谷市立図書館にて借りて読む |
まりんきょ学問所 > 読んだ本の記録 > 力武常次・佐藤良輔・萩原幸男 : 物理数学Ⅰ