副題は「価値の創造」
私が中小企業診断士の勉強をしていたときに買った本。私自身はブランドにほとんど価値を置いていない人間である(特に衣料品の分野で)。 だから高級さの象徴を名前だけで維持するブランドという価値観には、当時から嫌悪感を抱いていて、それは今に至るまで続いている。 とはいえ、ブランドの重要性は認識しているつもりだ。
pp.62-66 に、米国のゼネラルモーターズ(GM)の「サターン」のブランドマーケティングの例が出ている。
そして p.63 では「仲間」というコンセプトを全面に押し出すことが、それまでにないユニークなマーケティングだった
と述べられている。わたしはそのコンセプトで仰天した一つのできごとを覚えている。それは、本書には書かれていない。
それは、サターンの従業員どうしの研修である。ある従業員が直立している。そこから直立のまま重心を後ろに移していく。 このままでは従業員は後ろに倒れて頭を打つだろう。しかし、従業員は後ろに倒し続けることを研修で要求される。なぜか。 地面に頭を打ち付ける前に他の従業員が支える、という信頼を植え付けるためである。 もちろん、他の従業員は後ろに倒れてきたら従業員を複数人で支えなければならない。 私は驚いた。こうまでして、信頼を植え付けなければならないのか。
結論はどうだったか。サターンは失敗した。私自身は車に載らないが、一度はこうした車に乗ってみる、否、 購入過程を経験するのもよかったのではないかと思う。
p.155 の節の表題である。「命がけの跳躍」とはカール・マルクスのことばである。
本書によれば、売れるか売れないかの交換における危うさを、マルクスは「商品の命がけの跳躍」という言葉で表現した。
私はこのことばが好きだ。商品であふれかえっていて、「買って買って」と店先で、またチラシやカタログで、
さらにはインターネットのサイトで叫んでいる商品であっても、買ってもらえなければただの記号にしかすぎない。
書 名 | ブランド |
著 者 | 石井 淳蔵 |
発行日 | 1999 年 12 月 1 日 第4刷 |
発行元 | 岩波書店 |
定 価 | 819 円(税別) |
サイズ | 新書版 |
ISBN | 4-00-4300634-5 |
NDC | 675 マーケティング |
その他 | 岩波新書 新赤版 634 |
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