大島 義夫:エスペラント四週間

作成日: 2012-03-03
最終更新日:

概要

その名の通り、四週間=28 日でエスペラントを説明する。

感想

古い本

古い本だから、古本屋で見つけて買うのが安い。新刊本を買った私はアホである。 例文についての当時の時代背景が感じられて興味深いが、これは他の人のホームページでいろいろ書かれているのでここでは割愛する。 たとえば、エスペラント四週間/大島義夫(www.kanshin.com)を参照。

上記リンクは切れているので、 別のリンク先を掲げる。 エスペラント四週間 (bretaro.wordpress.com)

第1週

第1日 発音

エスペラントの ĝ と ĵ を区別できるようにしよう、と筆者は説く。筆者曰く、昔の日本は藤(huĝi)と富士(huĵi)、地震(ĝiŝin)と自身(ĵiŝin)を発音で区別していた、 という。知らなかった。

エスペラントの hu と日本語の ふ は違うという。p.11 では、hu はクチビルを動かさないが、フは(ハヒフヘホの中で例外的に)口の先を丸くして発音する、という。 一方で p.5 では、エスペラントの u は、クチビルをまるくしてまえへつきだして発音すると解説している。どちらを信用すればいいのやら。

第2日 品詞、語根、語尾、格

格の説明で、主格ではなく、名格ということばを使う理由、そして目的格でも役格でもなく、対格ということばを使う理由について、 解説されている(p.27)。

第3日 複数、冠詞、肯定・否定・疑問ほか

p.30 、2-7) Tarô havas novajn librojn. (後略)

固有名詞とはいえ、エスペラントの字にない、ô を使ってよいものだろうか。

p.30 、2-8) Sinjorino Kimura lernas anglan kaj germanan lingvojn.

形容詞 anglan と germanan は単数を表すが、名詞 lingvojn は複数となる。理屈っぽい。

p.31 、3-2) Ni estas novaj studentoj.

は「ぼくたちは、あたらしい学生だ」と訳されている。たしかにそうだ。しかし、私なら「私たちは新入生だ」と訳してしまいそうだ。 その理由は時間があれば記す。

p.31 、3-6) , 3-7) では、Jes と Ne が出ている。前者はハイ、ウンと、後者はイイエ、イヤとカタカナ書きである。このあたりが時代といえるだろうか。

第4日 過去と未来、ほか

p.43 5-1) (前略) Mi vidis s-ron Suzuki.

敬称の s-ro (sinjorio) も対格をとるとは知らなかった。

第5日 前置詞ほか

pp.57-58 に読み物(アネクドート、小話)が3本ある。3 本めがこわい、ブラックな冗談である。 もっとも、愛や理想や平和を愛する(とされている)エスペランティストにも、 このような暗い側面があっていいだろうし、 どんな場所にも、この種の小話はあるだろう。

第6日

p.65、上から11行目、疑問詞のように、ことば生活ではげしくつかわれる語はとある。つかわれる、という動詞にかけることばに「はげしく」ときたか、 と驚いた。私だったら頻繁に、という漢語を使いたくなるが、これからはこういうはげしさも受け入れられるようにしたい。 なお、つかわれる、というひらがながきを見て、つかれる、と誤って見てしまった。

第7日

p.76 上から4行目に単語の経済ということばがある。経済ということばをそう使いますか、と息をのんだ。 そりゃ、私だって経済的とはよくいうし、規模の経済ということばも知っている。 それにしても、ムダづかいを避けるという意味でのこういう経済はこういう場所でめぐりあうとおもしろいとも思う。

練習 6 では、c) の次に ĉ) があてられている。同様に、g) の次に ĝ) が、h) の次に ĥ) があてられている。 エスペラントではそうなのか、と妙におかしな気分になった。ĉ は c とは異なるという、けなげな力強さを感じる。

第2週

第1日

前置詞 da の使いかたについて、詳しく解説されている。こんな例文が時代を感じさせるというのだろう。 ただ、私は今でもかなりの会社については当てはまると思う。

La kompanio akiras multe da profito, kvankam ni ricevas mur malmulte da salajro.

第4日

p.133 で関係詞が説明されている。例文の日本語訳は、 きのう買った、その本をょうバスのなかでなくした。(強調は私)である。 この本には珍しい誤植で、もちろん正しくは「きのう買った、その本をょうバスのなかでなくした。」である。 ただ、なぜこんな誤植になったかを考えてみると、ひょっとするとこの本の母体までさかのぼれるかもしれない。 著者は、はしがきでこの「エスペラント四週間」は、はじめ 1931 年に小野田幸雄君の手でつくられ、 戦争のあとまで版をかさねてきた。と述べている。 その後著者が書き改めて現在の形となっているが、ひょっとして母体は「その本をけふバスのなかでなくした」と旧仮名遣いで書いてあったのではないか。 それを新仮名遣いに直したときに「け」が残ってしまったのではないかと邪推している。

付記:その後、誤植をいくつか発見した。

第3週

第3日

p.224、Monto Huzi (富士山)がある。おかしいな。 p.13 では富士は huĵi と発音する、と書いてある。

誤植

p.133 の誤植は先に挙げたが、ほかにもあった。

p.115 最下行 集まりあがる は正しくは 集まりがあるだろう。

p.207 上から5行め Vi ja scias ke li mesogas. は誤り。  Vi ja scias ke li mensogas. が正しい。

p.316 1. の上から3行め kie lia patro estis grimnazia instruisto. は誤り。 斜体部分は正しくは gimnazia (高等中学校の)。

p.240 の練習問題から、A.2 エス文和訳
Iru laŭ tiu ĉi rivero, kaj post duono da horo vi trovos la malnovan templon (寺).
この訳が p.368 にあり、そこでは、
この川にそって行きなさい。2時間のちにその古い寺が見つかります。
となっている。duono da horo は1時間の半分、という意味だから、30 分が正しい。 p.103 でも、30 minutoj = duonhoro が 30 分と解説されている。 さらに、数についての接尾辞としてエスペラントで出てくる -obl- や -on- 、-op- は、 p.94 で説明されている。もちろん、duono は 2 分の 1 という訳がある。

誤植ではないもの

p.115 の下から3行目「rondo まどい,サークル」とあるが、まどいは誤りでつどいが正しいと思った。 しかし、まどいで合っていた。 辞書をひいてみたら 「まどい:1.円陣を作って一か所に集まること 2.家族など親しいものが集まって楽しく過ごすこと。団らん」 とあったのだ。確かに、音楽のロンドは輪舞曲とか回旋曲とか訳されるから、字義に近い訳語とはいえる。

書 名エスペラント四週間
著 者大島 義夫
発行日昭和36年10月15日(初版), 平成 21 年 9 月 20 日(第30版)
発行元大学書林
定 価3000 円(本体)
サイズB6 判
ISBN978-4-475-01016-0

まりんきょ学問所読んだ本の記録 > 大島 義夫:エスペラント四週間


MARUYAMA Satosi