あとがきより引用する:
経済の歴史には、恐慌や戦争のような、特定の主役を持ち、誰の目にも明らかな大事件もあれば、 産業構造や所得分配の変化のように、すぐには目に見えないけれども、 多くの企業や個人の状況が、経済の法則に従って変わってゆくときのような、 着実で重要な変化もある。 その双方を、わかり易く説明してみたいと思った。
著者は p.338 で、<それにしても、 第三次産業の発展で経済成長をどこまでも支えてゆくことができるのでしょうか。> という不安を述べている。そして、 <ものの生産の成長が停滞してしまって第三次産業だけが伸びていくとしても、 おのずから制限があるという考え方がある。 そのことは、笠信太郎氏の「花見酒の経済」という高度成長批判のなかで展開したところですが、 最近の経済を考えるとき、私も見通しがつかないままに、笠氏の警告が当っていたのかなと思いかえすときがあるのです。> という。
ものの生産の成長だけを経済成長の根幹のようにいうのは、ちょっと私には抵抗がある。 というのも、私の勤務実態はサービス業のようなものだったからだ。 とはいえ、花見酒のようなものだった、とは言いたくない。
p.318 で、鉄鋼の連続鋳造技術について、 <鋼鉄ができたとき、その熱が冷めないうちに鋼材をつくってしまう技術です> という注釈がある。正確にいうと、連続鋳造技術で冷めないうちに作るのは、鋼材という最終製品ではなくて、 鋼片という半製品である。半製品である鋼片には、スラブ、ブルーム、ビレットなどがある。 鋼片から作られる鋼材には、形状により鋼板、条項、鋼管の三種に分類される。
書 名 | 昭和経済史 |
著 者 | 中村 隆英 |
発行日 | 1986 年 4 月 10 日 (第2刷) |
発行元 | 岩波書店 |
定 価 | 2000 円(本体) |
サイズ | 364 ページ |
ISBN | 4-00-004887-2 |
その他 | 岩波セミナーブックス 17 |
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