樋口 陽一:もう一度憲法を読む |
作成日: 2012-05-04 最終更新日: |
憲法の問題を議論するときの基準として著者が提唱する「4つの 89 年」をもとに、 日本国憲法を読むセミナーが 4 回にわたって開かれた。本書はそのときの記録である。 なお、4 つの 89 年とは次を意味する。
この表題は第3回での主題である。 「みんなで決めてはいけないこと」とは何か、気になった。読み進めてみるとだんだんわかってきた。
一つは、地方自治のことを指している(92条、94条)。地方自治はその地方の中にいるみんなで決めるべきであり、 国全体のみんなではないということだ。そして、地方の独立性についても言及されている。 では、地方の独立性とは何だろうか。
私の記憶には、昔の日本には地方自治は無きに等しかった。例外には堺や桐生などがあった、という論がある。 堺のほうは有名だからいいだろう。桐生はあまりそういう記事を目にしなかったが、 桐生のシビックプライドキャンペーン(http://kiryuron.com/civicpride.html, 2018-12-16 現在はリンク切れ)では、 桐生が自治都市であることが主張されている。私が覚えていたことは正しかったのだと安堵した。 それはともかく、私は埼玉県越谷市の住民であり、埼玉県や越谷市の広報には目を通すようにしているが、 なかなかそれだけで自治に参加しているとはいいがたい。困ったことだ。
もう一つは、裁判を指している。裁判で判決するのはみんなではなく法である、すなわち法治という立場である (81条)。 もっとも、実際には法に従って裁判所が、そして裁判官が決めている。これについてどうかということを著者は議論している。 そして(本書の刊行当時)、最高裁による違憲判決は四種五件という事実が明らかにされている。 そのうちの1種類(2件)が衆議院の一票の格差に関するものである。
では、本書刊行から 20 年経った今ではどうか。 直近の2009年衆議院選挙で格差は2.30であり、これに対する判決は「違憲状態」である(「違憲」ではない)。 この区別は Wikipedia によれば「投票価値の不平等が一般的に合理性を欠く状態が違憲状態であり、これが合理的な期間内に是正されない場合に違憲とされる。」 とのことである。
私自身は一票の格差については鈍感だが、Wikipedia を調べて感心したことがあった。 格差を論じる際の母数に何を取るかという基準には3種類あり、そのどれもがどこかの国で採用されていることを知った。
全然憲法を読んだことになっていないが、お許しを。
書 名 | もう一度憲法を読む |
著 者 | 樋口 陽一 |
発行日 | 1992年2月日 |
発行元 | 岩波書店 |
定 価 | 1600円(本体) |
サイズ | 216ページ 19cm |
ISBN | 4000042146 |
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