岡野宏文、豊崎由美:百年の誤読

作成日: 2011-11-19
最終更新日:

概要

1900 年から 2004 年の日本におけるベストセラーをあらゆる角度から評する。

感想

とりわけ感じ入ったのが、北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」に関する評であった。 これについての感想は facebook に書いたので暇な方はそちらを参照されたい。

その後、facebook の感想は消してしまったので、思い出せる限りで再現する。 豊﨑さんはショックなことに、いま読み返したらユーモアの古さが争えなかったんですよーと述べている。 岡野さんも僕も鈍角的な感じがしちゃったと答えている。私ははお二人とは違い、今でもどくとるマンボウ航海記は、 私にとって生気にあふれるユーモアに富んでいる。豊﨑さんは「どくとるマンボウシリーズ」で読むべきは青春記のみ、 と断言している。私も、「青春記」を最初に読んで他のどくとるマンボウより何度となく読み、笑った。 私の知人は、この「青春記」を読んで東北大学に憧れ、入学したほどである。 なお、ほかにどくとるマンボウシリーズは「小辞典」、「昆虫記」、「途中下車」が航海記のあとで書かれている。 そのあと少しおいて、青春記の前の時代の「追想記」、青春期の後の時代の「医局記」が出版されている。

面白いのは評もそうなのだが、下段 1/3 に組まれた二人による注釈である。 作家の紹介はもちろんなのだが、そのほかにも関連するおすすめ本、駄本、薀蓄、警句、合いの手などがてんこ盛りで、 思わず笑ってしまう。

中でも初めて知って驚いたのが、現代詩作家である荒川洋治の『美代子、石を投げなさい』の紹介である。 紹介のあとで豊﨑さんはこう感嘆している。

こうるさい賢治研究家に、こんな過激な……、荒川さん凄いっ! たしかにあたらしいです、あなたは。

最後の文は荒川氏の詩集「あたらしいぞわたしは」からのもじりであろう。 荒川洋治の現代詩もむかしから気になっているのだが、それはまたどこかで。

書 名百年の誤読
著 者岡野宏文、豊﨑由美
発行日2008 年 11 月 10 日(第1刷)
発行元筑摩書房
シリーズちくま文庫
定 価880円(本体)
サイズ文庫版 236ページ
ISBN978-4-480-42494-5

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MARUYAMA Satosi