G. J. マイヤーズ:ソフトウェア・テストの技法(第2版)

作成日: 2011-06-07
最終更新日:

古典的名著

ビューティフル・テスティングという本を見たら、 古典的な名著として、ブルックスの「人月の神話」とこれが挙げられていた。 そういえば、初版を会社の金で買ってもらったことがある。 そして今は、第2版が出ている。 懐かしくなり、読む気もないのに買ってしまった。今度は私の金である。 なお、原著は第3版まで出ている。

初版と第2版の差異

初版の言語は PL/I であった。第2版は C++ や Java などに置き換えられている。 また、新しい話題には Web プログラミング、電子商取引、エクストリーム・プログラミングなどがある。

この本の訳をテストする

さて、通読したところ、誤植が多く見受けられる。テストの本なのになぜ?と思う。 では早速、この本の邦訳をテストすることにした。 テストするときは、何をテストするかを決めること、というのがこの本の教えである。 いくつかあげてみた。

誤植

場所備考
p.10 下から 3 行目徹底的ラックボックステスト 徹底的ラックボックステスト 濁点と半濁点の違いの判別は、ディスプレイ上では困難だからか
p.12 下から 6 行目場所によってエラーが在する 場所によってエラーが在する 後述
p.60 脚注Federl Insurance Compensation Account Federal Insurance Compensation Account Wikipedia では、FICA は Federal Insurance Contributions Act の略としている。
p.102 下から 2 行目ビッバン(big-bang)テスト ビッバン(big-bang)テスト 世の中は澄むと濁るの違いにて
p.180 枠囲み下から 2 行目wwwjunitorg www.junit.org (ドットが全角のように不当に広がっている)
p.181 枠囲み下から 1 行目check 4 Primecheck4Prime これはクラス名なのだから空白は不要
p.187 上から 2 行目Lightweight Directory Application Protocal Lightweight Directory Application Protocol いわゆる LDAP。p.214 の用語集では正しいスペリングとなっている。

さて、上記のうち、遍在が誤訳で偏在が正しいと判断したのは次の理由による。原文はこうだ。

Another way of stating this principle is to say that errors tend to come in clusters and that, in the typical program, some sections seem to be much more prone to errors than other sections, although nobody has supplied a good explanation of why this occurs.

わたしならこう訳す。

この原理を言い換えれば、エラーは固まって現れる傾向にあり、 しかもこの傾向は、ある特定の場所で他の場所より強く現れる、ということだ。 どうしてこんなことが起こるのか、妥当な説明をした人はまだいない。

それゆえ、遍在より偏在が妥当であろうというのが私の考えである。

訳の考慮

場所本書評者提案備考
p.18 下から 5 行目復帰テスト 回帰テスト 慣用に従う。原文は regression testing
p.102 下から 2 行目 前者の方法は,非増加とか“ビックバン(big-bang)”テストまたは統合とよばれ, 前者の方法は,非増加の(あるいは“ビッグバン(big-bang)”とも)テスト(または統合)とよばれ (a + b) * (c + d) の表し方。原文はnonincremental or “big-bang” testing or integration

表記の揺れ

これは今のところ見当たらない。

索引の網羅性

「復帰テスト」が索引には入っていない。

書 名ソフトウェア・テストの技法(第2版)
著 者G. J.マイヤーズ,T.バジェット,M.トーマス,C.サンドラー
発行日
発行元近代科学社
定 価円(本体)
サイズA5版
ISBN978-4764903296

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MARUYAMA Satosi