八木沢敬:「論理」を分析する

2026-09-21

概要

「はじめに」から引用する:

(前略)論理は人間にとって不可避であり、正しい論理を身につけることは死活問題である。 幸いなことに、ほとんどの人は正しい論理を生まれながらに身につけている。と同時に、ほとんどの人はそれが何かということについて無知であり、 多くの人は無頓着ですらある。本書を手にとっているあなたは無頓着ではないだろう。無頓着ではないにしても、無知あるいはそれに近い状態にあるとしたら、 少しでも「有知」の状態に移行する手助けをするのが本書の使命である。(後略)

感想

私のような無教養者には、読むのが大変つらい。

高度な例

「第2章 否定すると肯定する」では、さまざまな例が出ている。たとえば、スーパーマンと、「クラーク・ケント」と「ロイス・レイン」という名前がそれぞれ出てくる。 スーパーマンは、アニメを昔みたことがある。しかし、「クラーク・ケント」とは誰だっただろうか。確か、「クラーク・ケント」が変身してスーパーマンになると思うのだが、 自信が持てない。本郷猛が仮面ライダーに変身する場面は見ていたが、クラーク・ケントはどのようにしてスーパーマンに変身するのだろうか。pixiv によれば、 (前略)普通の服を脱ぐことで変身(変装)するヒーローとなっている。 ネクタイを外す仕草やシャツを胸元から破くポーズは「誰もが持つ内なるヒーロー(Inner Hero)」のイメージとして認知されている。 そうか。そうだった。では、着替える場所はどうか。やはり pixiv からの引用によれば 着替える場所については電話ボックスで変身する印象を持たれているが、 回転式ドアや路地裏、さらにはタクシーの車内だったりと、そもそも目にも止まらない速さで着替えているため割と場所はどこでも良さそうではある。 そうだった。よく電話ボックスが出てきた。 では、ロイス・レインとは何者か。調べると、クラーク・ケントと同僚で、二人とも新聞記者で、のちに二人は結婚した、とある。 ロイス・レインは女性だったか。ロイスは、クラークがスーパーマンであることは前から知っていたのだろうか。そんなことが気になって、 肝心の論理のことがどこかに行ってしまった。

それから、二葉亭四迷と長谷川辰之助、坪内雄蔵が出てくる。二葉亭四迷は名前だけ知っているが、長谷川辰之助とは誰だろうか。 調べると、二葉亭四迷の本名なのだそうだ。夏目漱石と夏目金之助ではなく、名字まで違えた例をもってくるあたりがさすが学者である。 名字まで違えた例で有名なのは三島由紀夫と平岡公威だが、明治の時代の作家の名前を使うのがよかったのだろうか。 ちなみに、坪内雄蔵は坪内逍遥の本名である。「つぼうちゆうぞう」と平仮名を打つと私のワードプロセッサーでは「坪内祐三」になってしまう。

索引なし

索引がない。こういった論理の本を苦手で、縦書きで読むのはさらに苦手だ(自分が理解できないのを縦書きのせいにしようとしている、ダメな俺だ)。 ただ、こういった本であれば索引をつけるべきだろう。少なくとも、「岩波現代全書」というシリーズを標榜しているからには、 索引をつけてほしい。いや、他の岩波現代全書にはついているのかもしれないが、すくなくともこのように、論理を厳密に追わないといけない本はつけるべきだろう。

たとえば、「第6章 決定不可能」を読んでみよう。p.130 から抜粋する。

あたえられた推論が妥当である限り、その推論の過程から結論を機械的に有限時間内に導き出すことができるが、 もし推論が妥当でなければ、仮定から結論への演繹がそもそも存在しない。健全性がそれを保証する。では、そういう演繹が存在しないということの証明(非存在の証明) はできるのだろうか。論理学においてのみならず、一般に非存在の証明はむずかしい。

さて、「妥当」とはどういう意味だろうか。「健全性」とはどういうことだろうか。わからない。 そもそも、「妥当」や「健全性」がわからずに第6章を読むとは何事だ、という意見が(著者を含めて)ほとんどだろう。私もそう思う。

「妥当」の意味は「第4章 健全と完全」の最初で明らかになる。以下 p.78 から引用する。

推論が妥当だというのは、仮定がすべて真かつ結論が偽という状況が不可能だということである。

最初、この文がすんなりとは理解できなかった。自分で、<(「仮定がすべて真」かつ「結論が偽」)という状況が不可能>というまとまりを意識しないと、 すんなりと理解できないのだった。恥ずかしい。

健全性については、p.101 で説明されている。こちらについての引用は省略する。

カンディード

p.136 で、小説『カンディード』でヴォルテールが揶揄した登場人物パングロス博士のような、以下の記述がある。これを見て私は、 ああ、そういえばバーンスタインの「キャンディード序曲」を昔、「題名のない音楽会」で毎週聞いていたことを思い出した。

書誌情報

書名「論理」を分析する
著者八木沢敬
発行日2018 年 1 月 18 日(第1刷)
発行元岩波書店
定価1900 円(本体)
サイズ
ISBN978-4-00-029211-5
その他越谷市立図書館にて借りて読む