「はじめに」から転載する。
(前略)本書は、科学や生物、土木や機械などが複合的に入り混じるがために、なかなか、理解しにくかった上下水道を、より身近にして頂くためのものでる。
本書を借りたきっかけは、2025 年 1 月 28 日に起きた八潮市交差点道路陥没事故である。この事故の原因が、道路下にある下水道管の破損とみられることから、 下水道のことを知りたくなり、借りてきた。
第1章「上下水道とは何か」では、地球の水圏から始まり、水資源や水道事業・浄化槽に至るまでがまとめられている。私はコンクリート長屋に住んでいて、 この長屋では排水は浄化槽より市道側溝へ放流しているので下水道は通らない。なので私の住居での排水は今回の八潮市の下水道には行かないはずである。ただ、 いろいろと知らないことばかりである。
第2章「上水道のしくみ」では、浄化の方法が説明されている。水道から飲める水というのは世界の中では日本などわずかな国に限られているらしい。 そこで、水道水の水を直接飲んだり料理に使ったりするのは当然だと思っていて、私や身近にいる人はそうしている(ただ、飲用の場合は浄水器に通してはいる)。 ペットボトルを買ったり、スーパーで提供されている水タンクを買ったりはしていない。また、給水管の施工のところも読んだりして、 水道工事が大事であることを今更ながら認識している。
第3章「下水道のしくみ」では収集方法から始まり、設計、敷設、浄化方法など、多岐にわたる項目が列挙されている。下水道の処理は上水道より厳しいように思える。
第4章「上下水道の環境」では上下水道を取り巻く環境と課題についてまとめられている。 pp.144-145 の 「4-10 下水道施設の老朽化」を見ると、●老朽化による事故という項で、次のようにまとめられている。
下水道管の法定耐用年数は 50 年ですが、30 年経過すると道路陥没箇所数が増加する傾向にあると報告されています。
下水管の老朽化による道路の陥没事故は、2006 ~ 2009 年度に発生した件数は 1.7 万件で、平均すると年 4,250 件になります。
道路の陥没事故は、下水道管の破損した箇所や接合部から地下水や地表からの雨水が土砂と共に下水道管に流入または逆に下水が地中に流れ出し、
水道 をつくり大きな空洞が発生します。(後略)
下水道管の老朽化による陥没事故の件数が結構多いので驚いた。
pp.146-147 の 「4-11 下水管内の清掃」にある、「●清掃の必要性」という項から引用する。地盤の沈下や施工の不良によるたわみ、地震による破損や豪雨による大量の土砂流入および伏せ越部における構造的な要因などで汚水が滞留し、 沈殿物が堆積し下水の流れを阻害します。沈殿物が堆積すると腐敗し、下水管の内部で臭気(硫化物など)が発生し、悪臭発生源となります。 この臭気成分がコンクリート管やマンホール内の足掛け金物およびマンホールの鉄を腐食させます。こうした問題を未然に防ぐために計画的な下水管の清掃は必要なのです。
下水管内の土砂、モルタル、油脂、木の根などの除去ばかりでなく、清掃時に管の破損個所や管外からの流入土砂の性状により陥没箇所を早期に発見することができ、 陥没事故を事前に防止することができます。(後略)
ここで、「陥没箇所」は下水管の上部が破損してその上部にある土砂が下水管に流入することを指しているのだろう。この段階では、さらに上の道路は一見正常にみえるはずだ。 しかし、この状態では道路下の地盤には空洞ができた状態になっているから、そのうち道路そのものに亀裂が走ったりするだろう。その結果「陥没事故」が起きる、ということだと思う。 それにしても、管の破損や地盤内の空洞を調べるのは難しいだろうな。
第5章「上下水の新技術」では、課題を解決するための技術や仕組みが紹介されている。pp.164-165 では、下水の潜熱を利用する方法が解説されていてこれには驚いた。
下水の温度は、冬季は約 15℃、夏季が約 25℃ と年間を通して大きく変動しません。
ということから、この下水道の熱を熱源として利用するということである。
この発想を知って、そういえば新型コロナウイルスの流行を下水の成分から予測する、という試みがあったはずだが、あれはどうなったのだろう。
書名 | 上下水道が一番わかる |
監修 | 長澤靖之 |
著者 | 長澤靖之・井端和人・片岡利夫 |
発行日 | 2012 年 9 月 10 日 初版第 1 刷 |
発行元 | 技術評論社 |
定価 | 1980 円(本体) |
サイズ | A5 判 |
ISBN | 978-4-7741-5225-7 |
備考 | 草加市立図書館で借りて読む |
まりんきょ学問所 > 読んだ本の記録 > 長澤靖之:上下水道が一番わかる