もしものときを考えること

作成日:2020-05-16
最終更新日:

質問者と回答者

あるとき、こんな話を聞いた。その会社では、大変なプロジェクトがあり、 社内で問題となっていた。そのような大変な状況で、経営説明会が開かれた。質問の時間を迎えたので、 ある社員が質問した。 「いま、社内で大変なプロジェクトがあると聞いています。このプロジェクトは成功するのでしょうか。 もし失敗するとすればどのように対応すべきなのでしょうか。」社長は答えた。 「このプロジェクトは成功するという気構えで私をはじめ経営陣は取り組んでいる。 このような状況下で、もし失敗したら、ということを考えるようでは士気が失われる。 失敗することを考えず、どうか前向きに物事を考えてもらいたい。」

聡明な読者はおわかりだろうが、この大変なプロジェクトは結局失敗し、撤退することになった。 その後も同じ事業部の他のプロジェクトは継続していたが、赤字が続き、 結果として数年後、事業そのものを他社に譲渡することになった。

質問した社員は出世頭であり、事実ほどなく課長職を得て周囲の評判もよかったが、課長職のまま他社に転職した。 その会社では課長になれば9割9分定年まで安泰であったので、この転職は極めて異例だった。

教訓

もし「失敗したら」とか「うまくいかなかったら」ということで、撤退の時期を考えておくことはきわめて重要だと思う。 ただ、社長が「失敗したらこうだ」ということは、そのとき決めていたのだろうか。 決めていなかったら経営陣は無策ということになり、言語道断である。決めていたとしても、 もう少し覚悟を決めるように、という言い方を考えるべきだったと思う。

この話はもっと昔にあったものだが、今持ち出したのはもちろん、2020 年から現在にいたる、 ある大事件を念頭に置いているからだ。

まりんきょ学問所品質の部屋 > もしものときを考えること


MARUYAMA Satosi