Paeth(ed.):Graphics Gems V

作成日:2016-05-21
最終更新日:

概要

Graphics Gems シリーズの最終巻。総索引がついている。

感想

コンピュータ・グラフィックスで飯を食っていくためには、 これらをそろえておくと何かと便利だろう。洋書屋で買うと一冊 8000 円前後して高いが、 今はそれほどでもないと思う。

一冊あたり各種の技法が満載されていてお買得である。寄稿者も数多く、 しかも大学人だけでなく大小企業の技術者もいる。アメリカの懐の深さをここにみる。 残念なのは、日本人寄稿者がこの 5 冊のなかで全くほとんどいないことである。 日本のグラフィックス技術は世界に劣るということなのだろうか、 否、メタボールのようなオリジナルもあるのだし、 ゲーム機のソフトウェアで作られるグラフィックスのリアルな質感は一流のものだと思うのだが。

ということを書いたのは 2000 年のころだと思う。 私が買ったときは 1993 年から 1995 年にかけてで円高のため、少しは割安で買えた。 今は円安が進み、高価になったのではないかと思う。

四次方程式の解と三次方程式の解

pp.3-15 には、Solving Quartics and Cubics for Graphics と題される記事がある。 ここでは、四次方程式を解く理由として、トーラスのような四次曲面レイトレーシングで必要になることや、 二次曲面に関する多くの問題に対しも四次方程式が出てくることを述べている。

四次方程式の解法は、よくガロア理論への導入の文脈で語られる。 (たとえば、矢ヶ部 巌著「数Ⅲ方式ガロアの理論」など) 曰く、二次方程式の解の公式が得られ、 そののち三次方程式の解の公式や四次方程式の解の公式も得られた。しかし、五次方程式の解の公式はついぞ得られなかった。 それはなぜだったのか。これを解決したのがガロアで、 一般の五次方程式の解を代数的な有限の操作によって解く公式は存在しないこと、 しかも五次方程式の解の公式が得られる条件まで示したこと、などなど。だから、 実用に使われるとは思わなかった。しかし、記事の著者は、四次方程式の解を反復的に解くのでは時間がかかり誤差もあるので、 代数的な計算が優位だとしている。

さらに著者は、四次方程式の解の公式を複数挙げて、その公式のうちどれが優位かを実証している。 詳細は同書を見られたい。

書 名Graphics Gems V
編 者Paeth
発行日 年 月 日
発行元Academic Press
定 価 円(本体)
サイズ変型判 ページ
ISBN

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MARUYAMA Satosi