情報技術から IT への移行

作成日:2002-03-21
最終更新日:

1. IT とは

私は今まで、「アイ・ティー」ということばは気恥ずかしくて使えなかった。 気恥ずかしい、というのはどういうことだろうか。多分にこんな気持ちがあったのだろう。 すなわち、情報処理の分野で飯を食っている俺様としては、これだけ大層なことをやっている分野を 軽々しくアイ・ティーなんてことばで読んでもらいたくない。 だいたい、アイスティーの出来損ないみたいではないか。

しかし、最近は気恥ずかしさをあまり感じなくなった。 自分がどんどん厚顔無恥になっていった、というのもある。 そして、狭い意味での情報技術だけでは賄いきれないほど多様な展開を示している、というのもある。 後者の例でいえば、 例えば、ソフトウェアの分野に品質マネジメントシステムの国際規格を導入する仕事はどうだろうか。 これは情報技術というのには抵抗がある。しかし、これを IT ということに抵抗はない。 なぜか。

どこかでどなたかが書いていた IT の定義では、情報(+通信)技術が社会的・政治的・経済的・ 文化的に及ぼす影響の総体、ということであった。どうしてそのような定義ができるのか、 考えてみた。人が「情報技術」ということばで連想するのは、 「技術」から連想されるコンピュータなどであろう。一方、アイ・ティーという略語になれば、 普通の人はそれがインフォメーション・テクノロジーであることまで遡って考えはしない。 いつぞやの森首相のように、インターネットのことか、という人もいるだろう。 省略ことばになることで、多くの人による意味の取り方が広がり、 従っていわゆる社会科学をも取り込んだ大きな現象となっている。

2. 何が IT なのか

IT ということばには社会科学の観点が加味されることは先に述べた。 当然ながら、経営も IT と無関係ではいられない。 むしろ、商売という実利を得るための行動ならば、 積極的に利益をもたらすような IT を導入し、活用することが不可欠となる。 では、IT が商売とどのように関連するのだろうか。

註:本当なら「商売」というより「ビジネス」というべきなのだろうが、 汗を連想しにくい IT との比較の意味で汗臭さを感じさせる「商売」ということばを敢えて用いた。 この場合の商売は、商業、卸売業だけでなく、製造業、サービス業すべての業態を含む。

私の乏しい頭では、商売の IT は二つにしか分類できなかった。一つは、道具としての IT 、 もう一つは戦略としての IT である。道具としての IT とは、通信手段としての電子メール、 広告・宣伝、情報収集手段としての WWW、 運送手段としての ftp など、インターネットを使う上での基本となる一連の手段である。 もちろん、ワープロで清書したり、表計算ソフトで経理を行ったり、 紙芝居ソフトで説得資料を作ったりすることもここに含める。

昔は、活版印刷から始まり、自動車の発明、電話の発明、ファックスの普及があった。 そして、今となってはカタログ、電話、ファックス、トラックなしの仕事は考えられない。 それと同じことが、今 IT の普及とともにいえる。電子メールで受発注をする、 WWW でカタログを集め、相見積をとり、比較検討する、機能の優れたソフトや 素早いパッチ入手のために ftp を用いる、これらなくしては仕事のペースが遅すぎるようになった。 人間は、そして企業は、便利な道具があれば使ってしまうのである。

もう一つ、戦略としての IT とは、商売と IT を組み合わせることで多大な利益をもたらす ものを指す。私がすぐ思い浮かべるのは、Amazon である。私はここで買い物をしたことがないが、 書籍をインターネット上で販売するということで一躍脚光を浴びた。 ここでは、最初にやったものが勝つ。そのようないい組み合わせを見つけ、展開することを、 戦略的と呼んだ。見つけてしまえばなんでもないのかもしれないが、 やはり見つけるのはセンスがものをいう。

3. ないよりまし

以上のべた IT のうち、戦略的 IT は、センスのある方にまかせるのがいい。これができれば、 起業家として成功する公算が高い。

しかし、まず経営者の方々には道具的 IT を行ってみることを勧める。 なぜかというと、「ないよりまし」だからだ。 この「ないよりまし」ということばが好きだ。投げやりにみえることばでもあるが、 まずは始めてみることができる。電子メールでも、ホームページでも、携帯電話でもいい。 効果がないとわかれば、止めてみればいいのだから。ただ、どんな効果を期待するのかは、 うすうすながらでも思い浮かべておくべきだろう。そうしないと、止めるか否かの判断が できないからだ。

このページを見ている人は、私に「ではこのページは『ないよりまし』なページなのか」と 皮肉混じりに尋ねるかもしれない。私は「その通りです」と答える。

御覧の通り、何も凝ったことはしていない。まずは、文章をきちんと書くことが先決だからだ。 文章を碌に書かず、絵ばかり張りつけたページには、落とし穴が存在する。 その問題点については、に述べる。

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MARUYAMA Satosi