§235 分詞の限定用法と叙述用法

作成日:2013-01-19
最終更新日:

限定用法と叙述用法

形容詞には限定用法と叙述用法がある。限定用法は「美しい人」のように名詞にかかる用法である。 一方、叙述用法は「この人は美しい」のように、AはBだ、という同じことを表す動詞(繋辞)とともに使われる。

1. a reading girl とはいえない

まず限定用法を見てみよう。

a drinking man という言い方はできる。これは「(何か飲料を)飲んでいる男」という意味ではなく、 「のんべえの男」という意味である。 これはなぜか。 drink を自動詞とみると「酒を飲む」ことになる。 したがって drinking が指すものは絶えず酒になる。

だから a reading girl ということはできない。read はふつう他動詞であり、 自動詞とみても何を読むかまでには言及していないからだ。

ちなみに、エスペラントは飲料を飲むのは trinki で、酒を飲むのは drinki として区別している。

2. open と closed

分詞が叙述的に使われる例を考えている。よく店の札にかかっているのは "open" と "closed" だ。 両方形が違うので気にはなっているが、"This shop is open." と "This shop is closed." としてみればわかる。 open は「開ける」という意味の動詞でもあり、また「開店している」という意味の形容詞でもある。 一方、close には「閉める」という意味の動詞はであるが、「閉店している」という意味の形容詞の形はない。 そのため、「この店は閉められた状態にある」ということで受身形+過去分詞を用い、それが形容詞のように使われるわけだ。

何が気になるかといえば、店の札で開店なら"open"、閉店なら"closed" であるべきなのだが、 日本では閉店を "close" にしている店をよく見かけるからだ。 そこで思い出すのはセサミ・ストリートだ。 ここの寸劇で繰り広げられるのは "open" と "closed" の対であった。 まあ、おかしいのは日本人というより、勝手に形容詞として認めたり認めたりしなかったりする英語の節操のなさなんですけれどね。

エスペラントでは、開店は "malfermita"、閉店は "fermita" である。

3. expencting mother

電車の中で優先席を譲るようにというアナウンスを車掌が始めたころ、 妊婦のことを expecting mother というのだと初めて知った。 この場合、expecting するのは、(将来なるだろう)mother なのだろう。

4. エスペラントにおける進行形の分詞

エスペラントの進行形は3種類ある。-anta、-inta、-onta である。 限定用法ではそれぞれ「…している」、「…していた」、「…まさにしようとしている」という意味を表す。

2016 年 4 月 22 日未明、熊本で大きな地震が起きた。 この地震で熊本県南阿蘇村にあった「免の石」が落下した。 この石は「落ちそうで落ちない」ということから、 受験生らが縁起を担ぐために来る場所として有名だった。

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MARUYAMA Satosi