§168 日本語とニュアンスの違う動詞名 |
作成日:2016-04-26 最終更新日: |
英文法の本にはこんなことが書いてある。
日本語では「借りる」という動詞一語ですむところ、英語では対象に応じて動詞を使い分ける。 一方、日本語では衣類やアクセサリなどを身に着ける対象が異なると「かぶる」、「着る」、「はく」と使い分けるが、 英語では一語で済む。
それはそうだろう。民族語は違うのだから。
エスペラントの動詞は、英語とは近いが、日本語とは遠い。残念ながら事実である。 たとえば、このロイヤル英文法で使っている例をエスペラントに適用してみよう。
日本語の「借りる」は英語では対象によって使い分ける。
もっとも、最後の例では日本語でも「(電話|トイレ)を借りていいですか」という例が多いが、 「(電話|トイレ)を使わせてもらえませんか」という例も多い。
エスペラントの「借りる」はどうか。
ほかにも「書く(描く)」、「切る」などでも英語やエスペラントでは使い分ける。 これは、英語やエスペラントが、日本語の単語より多い場合である。
日本語で、帽子を「かぶる」、靴や靴下、ズボンは「履く」、上着を「着る」、メガネを「かける」などの状態は、 英語ではすべて wear であり、エスペラントではすべて porti である(と思う)。
同じように、日本語では複数の動詞があるが、エスペラントでは一つで済む動詞があると思うが、すぐには思いつかない。
英語では夢を見るのは have a dream であり、see a dreamではない。また、同族目的語をとる dream a dream は文語的とされる。 エスペラントでも同様で、havi sonĝon であり。vidi sonĝon ではない。
スープを飲むとき、スプーンを使って飲むのは eat で、カップから直接飲むときは drink を使い、薬を飲むときは take を使う。 以上が英語である。
同様に、エスペラントでもスプーンを使うのは manĝi 、カップから直接飲むときは trinki 、薬を飲むのは preni である。 問題は味噌汁を飲むときで、阪直先生の本では manĝi を使うべし、と書かれていた。しかし、私の掲示板で、 「日本では味噌汁は飲むものだから trinki でいいではないか」とか、「具がたくさんある味噌汁は日本語でも<食べていた>」とか、 いろいろな意見があったので、別に誤解を招かなければどっちでもいいような気がする。
come と go (エスペラントでは veni と iri )の感覚は、日本人にとっての yes と no などとともに、 なかなかあちらの習慣に直せないものではないだろうか。ちなみに、エスペラントでも、相手に向かうほうが veni 、相手から去るほうが iri である。
上記のような比較の範囲を広げるととんでもないことになるだろう。 ここでは一つだけ、料理の範囲だけで日本語と英語を比べてみる。 以下、岡田 哲(編)「食の文化を知る事典」の p.77 「加熱調理についての英語と日本語の意味領域の対応」という図を箇条書きの形に改変して引用する。
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