英語の冠詞には、不定冠詞と定冠詞がある。 不定冠詞は a や an、定冠詞は the である。 語形は the では変化しない。a は、母音の前のときだけ an になる。
エスペラントの冠詞は定冠詞のみで、la だけである。 どんなときにも la、といいたいところだが、韻文などで母音の前につくときは、 l' と省略することが許される。私としてはこのような処置は好きではない。
日本語には冠詞に相当するものはない。助詞がある程度冠詞の機能を補う。 たとえば、「あるところにおばあさんがいました。 おばあさんは川へ洗濯に行きました」 という文のとき、最初の文のおばあさんは an old woman, 次の文のおばあさんは the old woman となるだろう。
フランス語には、定冠詞のほか、不定冠詞と部分冠詞がある。 これらはすべて、名詞の種類(un グループ、une グループ、複数)で変化する。 ここで un グループとは一般にいう男性形を、une グループとは一般にいう女性形を指す。 男性、女性というのはあまり意味がないので、不定冠詞の種類で分けた。
ドイツ語には、定冠詞と不定冠詞がある。 これらはすべて、名詞の種類(r グループ、e グループ、 s グループ、複数か) と格(主格、属格、与格、対格)で変化する。 ここで、r グループは一般にいう男性形を、e グループは一般にいう女性形を、s グループは中性形を表す。 男性、女性、中性という性を意識させることばは私は好かないので、 それぞれのグループの主格がとる定冠詞である der, die, das をとってグループの名称とした。
ロシア語などのスラヴ語派の言語に冠詞はない。
スペイン語には、定冠詞と不定冠詞がある。 これらも、名詞の種類でわかれる。 el グループ と la グループがある(ふつう、これらはそれぞれ男性名詞と女性名詞と呼ばれる)。
イタリア語には、定冠詞と不定冠詞がある。 これらも、名詞の種類でわかれる。 il グループ と la グループがある(ふつう、これらはそれぞれ男性名詞と女性名詞と呼ばれる)。 定冠詞と不定冠詞のほかに、部分冠詞がある。
フィンランド語には冠詞はない。
ラテン語には冠詞はなかったのに、 その後継のイタリア語、フランス語、スペイン語などのロマンス語に冠詞があるというのは不思議だ。 どなたかが言っていたように、「あれ」とか「それ」とか軽い気持ちで冠詞を発明したとすれば、 名も知らぬ民衆の力はすごい。
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