§73 冠詞の種類と発音

作成日:2010-08-25
最終更新日:

1. 各言語の冠詞

1-1. 英語の冠詞

英語の冠詞には、不定冠詞と定冠詞がある。 不定冠詞は a や an、定冠詞は the である。 語形は the では変化しない。a は、母音の前のときだけ an になる。

1-2. エスペラントの冠詞

エスペラントの冠詞は定冠詞のみで、la だけである。 どんなときにも la、といいたいところだが、韻文などで母音の前につくときは、 l' と省略することが許される。私としてはこのような処置は好きではない。

1-3. 日本語の冠詞

日本語には冠詞に相当するものはない。助詞がある程度冠詞の機能を補う。 たとえば、「あるところにおばあさんいました。 おばあさん川へ洗濯に行きました」 という文のとき、最初の文のおばあさんは an old woman, 次の文のおばあさんは the old woman となるだろう。

1-4. フランス語の冠詞

フランス語には、定冠詞のほか、不定冠詞と部分冠詞がある。 これらはすべて、名詞の種類(un グループ、une グループ、複数)で変化する。 ここで un グループとは一般にいう男性形を、une グループとは一般にいう女性形を指す。 男性、女性というのはあまり意味がないので、不定冠詞の種類で分けた。

1-5. ドイツ語の冠詞

ドイツ語には、定冠詞と不定冠詞がある。 これらはすべて、名詞の種類(r グループ、e グループ、 s グループ、複数か) と格(主格、属格、与格、対格)で変化する。 ここで、r グループは一般にいう男性形を、e グループは一般にいう女性形を、s グループは中性形を表す。 男性、女性、中性という性を意識させることばは私は好かないので、 それぞれのグループの主格がとる定冠詞である der, die, das をとってグループの名称とした。

1-6. スラヴ語派

ロシア語などのスラヴ語派の言語に冠詞はない。

1-7. スペイン語

スペイン語には、定冠詞と不定冠詞がある。 これらも、名詞の種類でわかれる。 el グループ と la グループがある(ふつう、これらはそれぞれ男性名詞と女性名詞と呼ばれる)。

1-8. イタリア語

イタリア語には、定冠詞と不定冠詞がある。 これらも、名詞の種類でわかれる。 il グループ と la グループがある(ふつう、これらはそれぞれ男性名詞と女性名詞と呼ばれる)。 定冠詞と不定冠詞のほかに、部分冠詞がある。

2. 感想

ラテン語には冠詞はなかったのに、 その後継のイタリア語、フランス語、スペイン語などのロマンス語に冠詞があるというのは不思議だ。 どなたかが言っていたように、「あれ」とか「それ」とか軽い気持ちで冠詞を発明したとすれば、 名も知らぬ民衆の力はすごい。

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MARUYAMA Satosi