ベクトルをならった高校生のころ、「正射影」ということばが出てきた。ただの射影ならわかるが、「正」とはどういうことだろうかと考えた。 言い換えれば正ではない射影、たとえば、「負射影」とか「誤射影」とか「斜射影」とか「悪射影」などがあるのだろうか、と考えた。 もっともそんな考えは高校生の前に積まれた膨大な宿題の前に押しつぶされた。
今になって気になった。同じような疑問を持っている人は他にもいるようだ。質問サイトには、「正射影」とただの「射影」はどう違うのか、 という私の気持ちを代弁する質問がある。答を見ると、「正射影」は別名「直交射影」である、「射影」は直交とは限らない射影である、 という解説がある。なるほど。では直交射影を調べよう。
以下、`H` をヒルベルト空間とする。
`H` の部分集合 `A` に対し、 `A^(_|_) = {x in H | (x, y) = 0, AA y in A}` と定義する。この集合を `A` の直交補集合という。
`A^(_|_)` は `H` の閉部分空間である。
射影定理と呼ばれる定理には2種類ある。凸射影定理と直交射影定理である。後者は直和分解の定理とも呼ばれる。 なお、単に射影定理という場合は後者を指すようだ。
ヒルベルト空間 `H` において空でない閉凸集合を`C (sub H)` とする。
(1) 任意の `x in H` に対して、
`d(x, C) -= underset(y in C)("inf") norm(x - y) = norm(x - P_C(x)) = underset(y in C)("min") norm(x - y)`
を満たす唯一の点 `P_C(x) in C` が存在する。
(2) `x^** in C` に対して、
`X^** = P_C(x) <=> (: x - x^**, y - x^**:) le 0 (AA y in C)`
が成立する。
`H` をヒルベルト空間、`M` を `H` の閉部分空間とする。このとき、`H` の任意の元 `x` は一意的に `x = z + y, z in M, y in M^(_|_)` に分解される。
このとき、`H` は閉部分空間 `M` と `M^(_|_)` の直和であるといい、次のように書く。
`H = M o+ M^(_|_)`
このページの数式は MathJax で記述している。