極私的関数解析:凸集合

作成日:2018-04-10
最終更新日:

凸解析の思い出

私は大学4年生のとき、学生寮にいた。その学生寮の住人に、私のいた学科の隣の学科に在籍していたやつもいて、ときどき言葉をかわすようになった。 そいつにどんな研究をやっているのかと聞くと、凸解析だと答えた。なぜそんなことを覚えているのかわからないが、 あるときそいつとくだらないことでけんかになり、その後二度と口をきかなかった。

凸解析とは、以下に述べる凸集合のように凸な性質をもつ数学的対象を解析することである。

凸集合

`H` を係数体 `K` 上のヒルベルト空間とする。また、`A sub H` とする。

任意の `x, y in A` と 任意の `0 lt a lt 1` に対し、`ax + (1-a)y in A` が成り立つとき、`A` は凸集合であるという。

`A` に属する任意有限個の元 `x_1, x_2, x_3, cdots, x_n` の凸一次結合とは、次の `x` をいう:
`x = a_1x_1 + a_2x_2 + a_3x_3 + cdots + a_nx_n, quad a_k ge 0 quad (k = 1, 2, 3, cdots, n), quad sum_(k=1)^n a_k = 1`

`A` の凸一次結合の全体からなる集合を `A` の凸包といい、`"co"(A)` で表す。

凸包 `"co"(A)` の閉包 `bar("co"(A))` を閉凸包といい、`bar("co")(A)` で表す。

凸集合の例

内積空間の開球

内積空間の開球 `B(x_0, r) = {x in H | norm(x - x_0) lt r} ` は凸集合である。

休憩

このあたりで、高校数学の復習をしよう。次の問題はどうだろうか。

  1. 放物線 `C : y = x^2` の上にあり、定点 `A(3, 0)` ともっとも距離が近い点を求めよ。
  2. 1. の点を `P` とする。`P` における `C` 上の接線と直線 `PA` は直交することを示せ。

解答:1. 求める点を `P(t, t^2)` とおく。PA の距離の二乗は t の関数となる。これを `f(t)` とする。
`f(t) = (t - 3)^2 + (t^2)^2 = t^4 + t^2 - 6t + 9`
PA の最小値をとる `t` を求めるには `f(t)` の最小値をとる `t` を求めればよい。`f(t)` を `t` で微分して、
`f'(t) = 4 t^3 + 2t - 6 = 2(t - 1)(2t^2 + 2t + 3) `
`f'(t) = 0` となる `t` は `t=1` のみ。なぜなら、`2t^+ 2t + 3` は t の値によらず必ず正であるから。よって、`f(t)` は `t = 1` のとき最小値をとる。 このとき、`P = (1, 1)`。よって、題意の点`P` は` P = (1, 1)`。
なお、距離 PA は `PA = sqrt( (3 - 1)^2 + 1^2) = sqrt(5)`

解答:2. `P(t, t^2)` における接線の傾きは `[d/(dt) t^2]_(t=1) = [2t]_(t=1) = 2`
また、PA の傾きは、`(0 - 1)/(3-1) = -1/2` となる。これらの積は `-1` であるから、両者は直交する。

数式・グラフの記述

このページの数式は MathJax で記述している。

参考

まりんきょ学問所数学の部屋極私的関数解析 > 凸集合


MARUYAMA Satosi