極私的関数解析:相加相乗平均の不等式

作成日:2018-04-10
最終更新日:

相加平均と相乗平均

数 `a` と `b` はともに負でない実数であるとする。

数 `a` と `b` の相加平均とは、`a` に `b` を加えて 2 で割った値、すなわち `1/2(a + b)` のことをいう。 相加平均を算術平均(エス:aritmetika meznombroj, 英: arithmetic mean, 独: arithmetisches Mittel, 仏: moyenne arithmétique)とも呼ぶ。

数 `a` と `b` の相乗平均とは、`a` に `b` を乗じた値の平方根、すなわち `sqrt(ab)` のことをいう。 相乗平均を幾何平均(エス:geometria meznombroj, 英:geometric mean, 独: geometrisches Mittel, 仏: moyenne géométrique arithmetic mean)とも呼ぶ。

相加平均と相乗平均の間には次の不等式が成り立つ。これを相加相乗平均の不等式と呼ぶ。

`1/2(a + b) ge sqrt(ab)`

等号が成り立つのは `a = b` のときであり、かつそのときに限る。

相加相乗平均の不等式は、各言語の頭文字をとって、AM-GM の不等式と呼ばれることもある。

証明

証明すべき不等式を移項すると

`1/2(a+b) - sqrt(ab) ge 0`

となる。したがって、左辺が 0 以上であることを示せばよい。左辺を次のように変形する。

`1/2(a+b) - sqrt(ab) = 1/2 (sqrt(a) - sqrt(b))^2 `

上の式の右辺は、`1/2` に実数の二乗をかけたものであるから、明らかに正かゼロである。したがって、不等式が証明された。 等号成立条件は `sqrt(a) = sqrt(b)` のときである。`a` も `b` もゼロ以上の正数だから、`a = b` のとき等号が成立し、しかもこのときに限る。

各種の平均に関する大小関係

日合,柳:「ヒルベルト空間と線形作用素」p.165 より引用する。

  1. `A \ l \ B = A, A \ r \ B = B` は明らかに作用素平均である.これらの表現関数はそれぞれ `1, t` である.
  2. 作用素平均 `A \ nabla \ B = 1/2 (A + B)` は算術平均と呼ばれる.これの表現関数は `1/2 (1 + t)` .
  3. 作用素平均 `A \ ! \ B = 2 (A : B)` は調和平均と呼ばれる.これの表現関数は `2t // (1 + t)` .
  4. 表現関数 `t ^ (1//2)` の作用素平均を幾何平均といい、記号 `#` で表す.`A` が可逆のとき
    `A \ # \ B = A^(1//2)(A^(-1//2)BA^(-1//2))^(1//2) A^(1//2)`
  5. (省略)
  6. 作用素単調関数 `(t - 1)/log t` に対応する作用素平均を対数平均といい,記号 `lambda` で表す.

命題 5.2.10 `nabla, !, #, lambda` の間には次の大小関係がある:
`A \ ! \ B le A \ # \ B le A \ lambda \ B le A \ nabla \ B` .

これ以上の詳しい説明はできないので、成書を参考にされたい。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

まりんきょ学問所数学の部屋極私的関数解析 > 相加相乗平均の不等式


MARUYAMA Satosi