フォーレ:夢のあとに

作成日:2012-06-03
最終更新日:

有名な「夢のあとに」

フォーレの歌曲でまっ先に上がるのがこの「夢のあとに」(Op.7-1)であろう。 歌曲としてはもとより、ヴァイオリンやチェロの演奏でも知られている。 フォーレのイメージはこの曲によって形作られているといってもよい。

まず、何といっても歌の流れが気持ちいい。 ピアノが和声を打ち鳴らす単純な伴奏形の上で、 メロディーが3連符も交えながら上ったり下ったりする。 クライマックスも計算されていて、 歌手や独奏者の気持ちがよくなる一曲である。実際、学生時代に知り合った歌手の友人とは、私の伴奏でこの曲をよく歌った。

このメロディーが器楽的なところから、もとは器楽のために作ったのではないかとか、 メロディーが先にあって、詩はあとからつじつまを合わせるようにつけていったのではないかなどという説が唱えられるようになった。

歌詞について

歌詞は、イタリアのトスカーナ地方に伝えられる愛の詩を、 フランスの音楽家ロマン・ビュシーヌがフランス語に翻案した詩である。 大意は次の通り。

私はお前の夢を見て、幸せだった。燃える蜃気楼のように。
お前のやさしい眼、清く響く声、明るい後光!
お前は私を呼び、私は地から逃れた、お前と逃げるために。
空は雲を押し拡げた。神の輝きだ。
ああ、悲しくも夢は覚めた。私はお前を呼ぶ。夜よ、お前の夢を返してくれ!
帰れ、輝くお前よ!帰れ、神秘な夜よ!

編曲について

この曲は、チェロによる編曲でも知られている。というより、 チェロによる編曲のほうが歌曲より有名なのではないか。 名チェリストであるパブロ・カザルスによる編曲が代表的だ。 そのほか、ピアノ独奏用の編曲が複数ある。その中ではグレンジャーやワイルドによるものが知られている。 また、ピアニスト江口玲によるピアノ、ヴァイオリン、チェロの三重奏による編曲がある。

弦楽合奏編曲

YouTube に、弦楽合奏編曲の譜面が出ていた。ただ、音がいかにも MIDI で出しましたという感じの、少し冴えない音符だった。 わたしがこの譜面を少ししつらえ(ニ短調をハ短調にしたほか、少し修正)、弦楽器の仲間に弾いてもらったが、 よいともわるいとも感想がなく、結局ボツになった。1st だけにメロディーが、2nd より下が伴奏という形態のため、 たぶんみんなつまらなかったのではないかなと予想する。だとすると編曲の腕に問題があるということがいえそうだ (2019-07-01) 。

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MARUYAMA Satosi