いやはや、前回のお話から随分間が空いてしまった。第2部が終わったのが
もう去年だから、相当サボっていたことになる。しかも、旅行を終えて戻って
来たのは一昨年の5月。なんと、

3週間ちょいの旅行記を2年数ヶ月かけて紹介している

ということになる。それだけならばまだいいが、

「横断の記録」といいながらまだスタート地点にいる

のだ。これには正直自分でもあきれている。おそらく、読んでいた人の多くは
もう僕がギブアップしてしまったと思っているのではなかろうか。実を言うと
ちょぴりそれも考えた。考えたのだが、いまだにこの記録を楽しみにしている、
と言ってくれる人もいることを考えるとやはり途中で止めるわけにもいかない。
続きを書かなくてはいけない。

1. 3人のイカレた男たち

 さて。S吉が住んでいたマンションを出発してから、まずやらなくてはいけ
なかったのがこの旅行の同行者、マークさん(仮名。この人は日本人です。)を
拾うことだった。一体どんな人なのか。人見知りの激しい刀舟には非常に気に
なるところだ。S吉曰く、

「世慣れした感じのする人。俺らより若いけど、中身はおっさん。」

…と、いうことだ。わりと裕福な家の育ちらしく、海外旅行の経験も豊富な人
だという。今回のように、車で大陸横断…というような旅行が大好きな人らしい。

 レンタルした車はそこそこ大きく、中もわりと余裕があった。当初は4人の
予定だったので大きめの車にした…のだったかな。なにせ2年前だ、こまかい
ことは覚えていない。車には数ヶ国語に対応した音声付カーナビが搭載され、
カーステレオも付いていた。そして、当然のごとく灰皿もあったのだが。

S吉「これ、しもとこ。マークさん、タバコ吸うねん。」(嫌そうに)
刀舟「おう。」(それは困る、とばかりに)

吸う人いるんなら隠すなよ、と思った愛煙家諸兄には申し訳ないが、タバコを
吸わない人間にとって狭い車内でタバコを吸われるというのははっきり言って
かなわないことなのだ。なので、隠しておいた。もっとも、そのうちマーク
さんはこれを見つけて狭い車内でタバコを吸うようになるのである。ちいっ。

 どのくらい走ったか、マンハッタンのどの通りだったか。すっかり忘れてし
まったが、しばらく走った後でついにマークさん登場。第一印象は、「あー、
なるほどー」といったところだろうか。いい人です。うん。

マークさんに挨拶してから、3人で最初に話したのが何だったかは覚えていない。
でも多分、「まずどこへ行くか」「どの道に入るか」といったところだったろう。
そのうち、S吉とマークさんの間でニューヨークに旅行に来た人たちは何で判で
押したようにメトロポリタン美術館へ行くんだろうとか、自由の女神へ案内すん
のがなんだかなあ、とか言う話になる。別に君らかてニューヨーカーちゃうやろ、
このよそもんがあ、などと思いながら、ふっ、と車窓の外に目をやった。マンハッ
タンを出て行こうとしているまさにそのとき、遥か向こうに自由の女神像が見えた。

「ああ、あれが自由の女神像か。初めてみた。」

まだマンハッタンから出ていないことを気にしつつ、続く