19.エリック・バードンとオリジナル・アニマルズ

 ここらで少し、補足、訂正しておきたいことがある。

 まず、初日の演奏で「Comeback」サウンド・トラックからの選曲があったことについて。

 後で知ったのだが、なんとスナッフィー・ウォールデン(ex.Stray Dog)他、このサントラ
を録音した時期のバンド・メンバーが演奏していたのだった。

 それから、レスター・チャンバーは初日にもステージでエリックと一緒に歌っていたらしい。
…不思議なことに、まるでその姿を覚えていない。二日目の「Time 〜」はしっかり覚えて
いるのだけれど。

 覚えていないといえば、ジミ・ヘンドリクスの父親、アル・ヘンドリクスからもお祝いの
ファックスが来ていたそうだ。これは僕が単に聞き取れていなかっただけだろう。

 また、ナンシー・シナトラだと思っていた人は全然違う人だったらしい。…恥ずかしながら、
顔を覚えちゃいなかったのだ。出演予定者リストには載っていたナンシー・シナトラだが、
どうも当日の公演には出席できなかったようだ。

 さらに、ゲストとして予定されていたスペンサー・デイヴィス。なんと、演奏はしなかった
だけで楽屋には来ていたらしい。サウンドチェックまでやって、何故演奏しなかったのか?

 − 単なるマネージメント・ミスだったそうだ。

 そして、二日目もあまりスムースに事は運んでいなかった。

「…段取り悪いぜ。」

 そう思った。ただ、このときは別にイライラするようなことはなかった。会場で出会った
人たちに優しくされて、気分が良かったからだろう。単純なものだ。

 さらに待つこと10数分。ようやく、エリック・バードンとニュー・アニマルズ登場。

 このときはまだ、出演予定者として名前の挙がっていたスペンサー・ディヴィスやウォーの
メンバーが今日こそは登場するものと思っていたから、普通のメンバー構成で出てきたとき
には正直、「あれ?」と思った。そして、バンド・メンバーには本当に申し訳ないけれど、
ちょっとだけがっかりしてしまった。僕は何より、ウォーのメンバーが参加するというのを
楽しみにしていたからだ。

 エリック・バードン&ニュー・アニマルズの演奏曲目は、次の通り。

「孤独の叫び」「イッツ・マイ・ライフ」「悲しき願い」

…と。ここまで演奏したところで、この日もテリー・リード登場。マーティン・ゲルシュ
ヴィッツがヴァイオリンで弾き始めた曲は…「黒く塗れ」。ファンなら良く知っている、
エリック・バードン&ジ・アニマルズ時代のアレンジで、エリックとテリーが歌う。

 歌い終わったところで、ギターのディーン・レスタムがアメリカ国家のフレーズを奏で
始める。そしてそのまま、「スカイ・パイロット」へ。間奏では、バグパイプ集団が登場。
先日届いたファンクラブ会報には初日にもバグパイパーが登場した、と書いてあるのだが、
僕にはその記憶がない。というか、どっちか1日だけだったと思っていたのだが…はて?

 最後にやはり「You Got Me Floatin'」を演奏して、ニュー・アニマルズは退場。「次は
オリジナル・アニマルズで戻ってくるよ」と言い残して、エリックはステージを降りた。

 しばらくして、エリックが四度びステージに登場。最後を締めくくるのはやはり、オリジナル・
アニマルズのメンバーだ。

 エリックが軽く挨拶をして、演奏を始めたのはなんと「ロバータ」。もちろん、
オリジナル・アニマルズのレパートリーではあったけれども、まさかこの曲から入るとは
思わなかった。どうも、この日のセットリストについては、特に決めてはいなかった
ようだ。

 続いての曲は、「CCライダー」「ブーン・ブーン」「Let It Rock」。

ここまで演奏したところで、エリックの姉妹、アイリーンさんと娘さんのアレキサンドリア
さん登場。父娘で「悲しき叫び」を歌う姿は、やはり微笑ましい(尚、初日にも「イッツ・
マイ・ライフ」を一緒に歌ったらしいが、これまた覚えていない。というか、どっちか1日
だけ登場したと(以下略))。

 この日、娘さんは歌い終わった後もステージ脇に佇んでいたと思う。

 再びオリジナル・アニマルズのメンバーで演奏した曲は、「朝日のあたる家」「朝日のない街」
「Gotta Found My Baby(?)」「Not Fade Away」。

 オリジナル・アニマルズの演奏した曲はどれもスタンダードといっていいものばかりで、
選曲としてはそれほど面白みが無かったかもしれない。しかし、その場に集まった旧友たちが、
適当に自分たちの演奏したいものを演奏しているという、ノリの良さがあった。そのノリこそ、
こういう祝いの場には相応しいものなのかもしれない。

続く