3.Econo Lodge Wilshre

さて。

  今回泊まったホテルは、あらかじめネット上で予約しておいた、
  所謂モーテル…motor hotelというやつだ。予算もそんなに
  あるわけではないから、なるべく安く。かつ、ライブハウスから
  近そうな所を探した結果、コリアタウン近くのEcono Lodgeが
  一泊税込み50ドルと、お手頃価格だったのでここにした。

  フロントでチェック・インを済ませ、キーカードを受け取って自分
  の部屋へ。客室のある建物は全部で2煉、刀舟の部屋はフロント
  側からだと敷地の反対側の建物の2階にあった。

  「ま、清潔にしてれば文句ないけど。」

  値段が値段なので、それほど期待していなかったのだが…

  「おおっ!これで50ドル?」

  ベッドは3人くらい寝られそうな大ベッド。大きなクローゼットに
  テーブル、椅子2脚、でかいテレビ(さすがにぼろいが)に、
  トイレとシャワーは別(これが僕には重要)。当然、部屋は広い。
  窓を開けると、裏に広がる公園の草むらに寝そべり、ほけーと
  している幸せそうな人々。その公園内にあるコートでは、
  若者達がバトミントンに興じている。

  「あー。なんか、ここで3日間呆けているだけでもいいかも。」

  正直、そう思った。…どうも、疲れているようだ。

  まあ、とにかく10時間飛行機に乗った疲れはまだたっぷりと
  残っている。ここでまずやることは…

  「今のうちに、靴下の洗濯をしとくか。」
  
  なんせ3足しかないのでね。こまめに、洗えるときに洗わないと
  後々困るから。

  洗面台にジャー、と水を流し、靴下を浸し添えつけの石鹸を
  擦りつけ、ざぶざぶと洗う。水でゆすいでしっかりしぼって…
  よし、これであとはハンガーにでもかけておこう。洗面所を
  抜け出し、靴下をほしてからあらためて顔でも洗おうかと戻って
  きてみると…

  「…?あれ…洗面所の水、流れてない??」

  なんと。水道管が詰まっているのだった。

  とにかく、これでは困るのでフロントに連絡。やってきたインド人
  のおにいちゃん、刀舟に「何か流したか?」と、いぶかしげに
  尋ねる。僕はもちろん、こう答えた。

  「顔を洗おうとしただけだ。」

  靴下洗ったくらいで、詰まるわけあるかい、と思ったが、あらぬ
  嫌疑をかけられては困るからね。

  掃除担当と思われるそのおにいちゃん、なにやらごっつい錐の
  ような長いドリルがついた機械で水道管に詰まったものを貫通
  させようと試みた。

  その間、刀舟はホケー、としていたのだが、しばらくしてから
  「ヘイ、あんた、ちょっと来てみなよ。」と呼ぶ声がしたので、洗面所
  へ。すると、そこには…。

  「!?なんだ、これ???」

  思わず、叫んでしまった。なんと、洗面台の排水溝から、茶色い
  サビがどばばばばぁっと浮き出ていたのだ。

  「うーん、古かったんだねー。」と、にこやかに言うおにいちゃん。

  「…使えるのか、これ。」

  「他の空いてる部屋使ってよ。フロントには、俺が言っとくから。」

  「あ…ども…。」

移った部屋は、ベッドが2台(無用の長物)、まあ設備的には最初の部屋
よりも上だったのだが…。

  「…なんか、前にもこんなことがあったような…。」

続く