北鎌尾根から穂高(9月4日〜10日)


山行報告書

山行参加者:長尾憲明 所澤伸行

行動結果

9月4日  曇り。上高地入り。 槍沢泊。
9月5日  曇り時々晴れ。北鎌尾根完登。槍沢泊。
9月6日  曇り時々雨。涸沢入り。涸沢泊。
9月7日  雨。停滞。涸沢泊。
9月8日  晴れ。北穂滝谷ドーム中央陵完登。涸沢泊。
9月9日  曇りのち雨。前穂東壁(北壁〜Aフェイス)完登。涸沢泊。
9月10日 雨のち大雨(台風15号接近)。上高地へ下山。

行程記録 9月5日 北鎌尾根
起床 AM3:00
ババ平発         5:00〜水俣乗越着        5:45
水俣乗越発        6:15〜天上沢着         7:45
天上沢着発        8:00〜北鎌沢出合着       8:05
北鎌沢出合発       8:05〜右俣中間地点着      9:00
右俣中間地点発      9:15〜北鎌沢のコル着      9:55
北鎌沢のコル発     10:10〜独標下着        11:10
独標下発        11:25〜独標先2つめのテン場着 12:10
独標先2つめのテン場発 12:30〜ニセ北鎌平着      13:30
ニセ北鎌平発      13:45〜槍山頂着        14:30
槍山頂発        14:45〜肩の小屋着 15:00
肩の小屋発 15:00〜ババ平着 16:30

9月8日 北穂滝谷ドーム中央陵
起床 AM3:00
涸沢                  発 4:15
北穂南陵下    着 5:15     発 5:20
北穂頂上分岐点  着 6:20     発 6:35
ドーム取り付き  着 7:15     発 7:30
終了点      着11:00     発11:15
涸沢岳      着12:30     発13:00
穂高小屋     着13:15     発16:00
涸沢       着16:30

9月9日 前穂東壁(北壁〜Aフェイス)
起床 AM3:00
涸沢                発 4:30
5・6のコル  着 5:45    発 6:00
北壁取り付き  着11:00    発11:00
前穂山頂    着16:00    発16:45
奥穂山頂    着17:45    発17:45
涸沢      着19:00

行動記録 9月 4日  曇り時々雨。 上高地から槍沢まで移動。夜行で来たため2人とも睡眠不足。荷物重し。槍沢ロッヂで昼食と
『おビール』を頂く。そしてぐっすり眠る。 9月 5日  曇り時々晴れ。−槍ヶ岳北鎌尾根− 定刻通り起きる。ガスが濃く出ているため進退に迷うが1ビバークの用意をして出発。
東鎌尾根の水俣乗越に着くと猿が30匹ほどいた。猿の行列を見ながらガスが晴れないものか
と30分の長めの休憩をとる。状況変わらず覚悟を決めて出発。 水俣乗越からは急なガレ場、低木帯を15分ほどで下降する。沢に着くと、細く急な雪渓が
現れる。北鎌沢の出合までは沢に沿って歩くだけ。出合に着くと先行パーティの姿が見えた。
右俣上部に水有り。ガスが晴れて天候少し回復する。 独標のトラバースは最後の部分が少し悪い。ニセ独標で先行パーティを追い越す。
人に会えて嬉しい。槍の穂先が一瞬顔を出す。ここから先、幾つかの小ピークがある。
巻き道もあり、大体が千丈沢側に付いている。途中一カ所、懸垂点があるがクライムダウン
で降りる。巻き道を千丈沢側に下っていくと大岩のヨコバイが現れる。転落=死である箇所だ。ここでは多くの事故が起きているという。長尾はここが北鎌尾根の核心であると感じた。 稜線を進むと『諸君頑張れ』と書かれたプレートを見つける。約50年前のもので、
時を越えたメッセージに感動。ニセ北鎌平を北鎌平と間違える。すぐ上が北鎌平だ。
ガスが切れ、小槍が顔を見せる。 山頂へは大きな岩のガレ場を進む。さらなる先行パーティを追い抜く。
T級ほどのワンピッチをフリーソロで登る。さらに上に歩くとチムニーが頭上に現れる。
かのウェストンが初登したときのルートだ。チムニーは連続して2つあり、
上部のものは短め。V級(−)程に感じた。チムニーを抜けると踏み跡が明瞭。
人の声が聞こえる。左に回り込むとそこが山頂だった。帰路は一般ルートで槍沢に戻る。 9月 6日 曇り時々雨。 槍沢から涸沢へ移動。荷物が重い。 9月 7日 雨時々曇り。 前穂北尾根中止。完全停滞。ひまヒマ暇HIMAだ〜。本を持ってこなかったことを悔やむ。
ラジオを一日中聴いて過ごす。『あんぺいじ』の兼高さんあらわる。
卑しい長尾はリンゴをせがむ。所澤は腐ったキャベツを食べる。二人とも食欲は旺盛。 9月 8日 晴れ時々曇り。−滝谷ドーム中央陵− ヘッドランプを付け、北穂に向かう。途中、所澤は腹を下す。昨日のキャベツが原因
に違いない。気持ちの良い青空の下、稜線に上がる。笠が岳方面に雲はない。
好天の兆しである。縦走路からドームを左に巻き、滝谷側を下る。
25mいっぱいに懸垂下降をして中央陵に取り付く。 1ピッチ目はクラックからチムニー。上部のチムニーは狭く、長尾の体は入らない。
左のフェイスを登る。昨日の雨が乾いていなく、岩は濡れていていやらしい。
2ピッチ目はカンテ。高度感あり気持ちがいい。3ピッチ目はガレ場。4ピッチ目は
フェイスからクラック。5ピッチ目は凹角を詰め、最後に小ハングを右から巻くと
終了点に到着。
ドーム終了点から、奥穂へ向かう『あんぺいじ』の兼高さん、斉藤さん、高橋さんの
3人パーティを発見。我々も奥穂へ向かう。穂高小屋にてビールで乾杯。
長尾が出来上がってしまい、下山が遅れる。ザイテングラードより涸沢へ降りる。 9月 9日 曇り後雨。 −前穂東壁− 5・6のコルに着き夜が明ける。奥又白本谷でガスが出て雨が降り出す。
しかしガスはとても明るい。『朝雨と女の涙はどちらも本気ではない』の言葉通り
すぐに止むと判断し、C沢を詰める。C沢上部でB沢へ乗越しは、足場の安定しない
危険なクライムダウンとなる。 ガスは晴れたり濃くなったりの繰り返し。雲は常念山脈からやってくる。この地域の雨雲は
たいてい飛騨側から流れるはずで、信州側より雲が流れる場合は太平洋高気圧が発達して
いることが多い。したがって好天を予測する。 北壁の取り付きに迷い、時間を食う。Dフェイス下部からの1ピッチはフリーソロで登る。
2ピッチ目は松高カミンと呼ばれる凹角を詰め、最後にハングを越す。
岩が濡れている上に岩脆く、悪い。3ピッチ目は大テラスを左へトラバース。小雨が降り出す。ここから先は急いだため、目の前の岩以外頭になくなる。ピッチ数記録なし、記憶も確かではない。凹角チムニーを抜けると第2テラスに着き、Aフェイスが現れる。雨、本降りになる。Aフェイスは3ピッチで抜けたことを覚えている。フェイスとクラックの繰り返しで最後のピッチは凹角チムニーを登る。もろい岩が濡れ、状況最悪。 1ピッチ目ではスタンスにしていた大岩と共に所澤がフォール。
畳1畳ほどの大岩が先に落ちて第2テラスの下、ガスの中に吸い込まれていった。
5秒ほどおいて所澤がフォール。長尾の手が無意識にロープに力を入れる。
1メートル右上で所澤無事止まる。スローモーションの中の一瞬の出来事。
長尾の身長が約180cmだから、グラウンドまでおよそ3メートルだった。 かのザイル切断事故の現場である最後のチムニーは、A0の連発で抜ける。
終了点は安定していて、5分ほどの間ガスが晴れて展望が開ける。
自然からのご褒美をもらった気がした。
階段状の岩場をたどり、前穂山頂へ到着。安堵感の中、大休止。 紀美子平−吊尾根−奥穂−穂高小屋−涸沢の縦走路をたどり生還する。
ザイテングラードを下りきった辺りで暗くなり、雨の中ヘッドランプで涸沢に還る。   9月10日 雨のち大雨。 前穂北尾根4峰正面壁は中止。ずぶ濡れになりながら上高地へ下山。松本で温泉につかる。
カツ丼を食す。   以上が今回の山行の
反省を含めた報告です。

報告書製作者  長尾 憲明

写真1



写真2




写真3




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おまけ写真1




おまけ写真2


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