穂高の反省(9月4日〜10日)


皆様お元気でしょうか?山岳部の所澤です。
9月10日に無事涸沢より下山しました。台風のため、1日早い下山となり、松本で風呂に
入り「さて帰ろうか」と切符を買いに行くと、台風の影響で甲府より先は動いていな
いとのこと。仕方なく、上諏訪の実家で電車が動くのを待っていたら、今日になってよ
うやく動き出し、先ほどやっと東京に着いたところです。
今回の山行の報告書は、長尾さんが作ってくださるとのことですので、詳細はそちらを
ご覧ください。
このメールでは今回の山行での反省点を述べたいと思います。
まず事実として、9月9日前穂東壁(北壁〜Aフェース)を登攀中、Aフェースのテラス(第
二テラス)に出て、Aフェースを登る1ピッチ目、私がリードしていて15mほど登ったと
ころでスタンスにした岩が崩壊し、落ちてしまいました。幸い怪我はありませんでし
た。
そのときの状況は、天気は台風の影響で、雨は降り風も一時は強風といえるものでし
た。そして一番厄介だったのは、ガスのため、ほとんど視界がきかないことでした。そ
のうえ、うかつにも眼鏡だった(コンタクトレンズをつけていなかった)ため、曇りと水
滴でさらに視界が悪くなっていました。時間的には、第二テラスには2時か3時くらい
でした。天候的にも時間的にもよくなかったので、速く抜けたい気持ちがありまし
た。このような状態で、Aフェースの1ピッチ目、所澤リード、長尾さんフォローで、登り
始めました。
そして、15mほど登ってやってはいけない本チャンでのフォールをしてしまったので
すが、直接的な原因はスタンスにした岩が崩壊したことです。しかしそのような岩を
見極めることも技術でありますから原因は私の判断ミスです。そうなのですが、スタ
ンスの岩は何度も目で確認した(雨が降っていたため、いつもより慎重であった)ので
すが、どう見てもフレークとか、もろそうな岩には見えませんでした。少なくとも私に
は完全な1枚岩の中のちょっとした出っ張りに見えました。落ちた岩は長尾さんが言
うには畳1畳ほどの岩に見えたといっていましたから、その岩は全体的(1畳ほど)にも
ろかったと考えられます。したがってスタンスを置くときに、それだけ広範囲に岩を
見ていたらその岩がもろかったことに気づいたかもしれない、ということになりま
す。しかし上記の通り視界がほとんどきかず、
そこに足を置いてしまったのです。そしてまもなく、轟音とともに足が外れ、手でこら
えましたが、10秒ともたず、手が雨のため、滑ってしまいました。落ちたときは(最後の
ピンから結構行ったし、グランドするな、終わったな)と思いましたが、テラスから3m
ほどで止まりました。落ちた距離は10mくらいだったと思います。それから先は問題
なく16時に前穂山頂で、19時テントです。
さて、このことをきっかけに私は山について反省しました。
第1に、なぜ天気予報を前夜に聞かなかったか?天気予報を聞いていれば、たとえ明け
方、どれだけ天気がよくても7時に雨が降り出したら、これからよくなるだろうなどと
は考えなかったはずである。
第2に、自分の山の実力を過信してはいなかったか?周りの様々な人のおかげで、以前
に比べ、山の総合的な力がついてきたのは事実である。しかしそれで得意になって山
をなめていなかったか?そういわれると否定はできず、3級程度だから、自分はもっと
登れるのだから、たとえ雨が降ったって登れるだろうという気持ちは確かにあった。
また、自分はそれだけやっているのだという自信もあった。その自信とプライドのた
め、初心の怖さとか、それからくる慎重さとかいったものを忘れていたのだと思う。
今回のことはそういったもを私に気づかせてくれたいいきっかけになったと思う。
これからはこのことを忘れずに、常に最悪な事態を想定して、より慎重に山に登りたい
と思います(次はアウトだと思って)。

なお、ほかは、北鎌尾根は天気はまあまあで順調でした。北尾根は雨のため停滞しまし
た(登ってません)。滝谷ドーム中央稜は順調でした。前穂4峰の正面壁は雨のため登
りませんでした。詳細は長尾さんの報告書をご覧ください。

報告 所澤
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