MOTO GUZZI にまつわる「噂」について


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MOTO GUZZI の「通説」、これ、どうも嘘っぽいというのが結構あるように思う。以下は、それらについて、私の実感によるコメントの羅列である。

● エンジンが強烈に重い

横から見るとオイルパンが下に出っ張ってたりで、見た目は大きく見えるエンジンである。しかし、クランクケース自体はスリムだし、OHVなのでエンジンヘッドは小さい。構造が簡単で部品点数も少なく、重量物はクランクケース内に集中している。リッタークラスの空冷のエンジンとして、他車種と比べて体積が大きいエンジンでもないし、極端に重いということもないと思う。重い部品といえばクランクだが、位置的にローリングセンターに近いので、運動特性上、邪魔になる程の重量は感じさせないはずだ。

だから、「縦置きVツインは重厚長大でマスが分散し易く、スポーツライドに向かない」というような批評は、間違っている。
(乗り手の無鉄砲に応じてくれるのがスポーツ性だ、というなら話は別だが。)

テスター殿に、そう言わしめる原因は、

といった所だろうと思う。

「自分の感覚」をいったん置いて、MOTO GUZZI ならではのバランスポイントを探り出せれば、エンジン重量はさほどネガに効かない。スポーティな走りは、十分に可能だ。


● 左右で旋回特性が違う

停止状態のブリッピングで車体が傾く「車体グラリ」が、噂の元かと思う。

クランクが重い上にローリングセンターに近く、カウンターマスは小さい。そのため、クランクの加減速の反作用が、車体の挙動に出易いアーキテクチャーである。

まあ、これも乗ってもらえばわかるのだが、走行中に、この「グラリ」が進路に影響することは、まずない。

「グラリ」は、原理的に、車速が低く車体のイナーシャが小さい域で、クランクが急に加減速する時にしか起きない。MOTO GUZZI は、クランクをギャンギャン回さないと走らない、などということはない。だから、「グラリ」が進路に影響するというのは、低速コーナーで、不必要に高い回転を維持しようと無駄な努力をしているか、クラッチ切ったままブンブンやってるか、のどちらかだ。

それに、GUZZI の車体はアクセル「オン」では右に傾くが、「オフ」では逆に左に傾く。だから、左右で曲がり方が違う、というのは、やはり見方がどこか偏っているのである。左右の傾き具合は、実際は多少異なるのだが、そんな所まで感じ取れる腕の持ち主なら、気にせず乗りこなせる程度の差しかない。


● インテグラルを解除して正解

スポーツライドに慣れた人なら、前後のブレーキを使い分けて、車速や、体勢(サスの動き)の制御を普通に行っているだろう。だから、前後ブレーキの使い分けを許さないインテグラルシステムには、反発もあろうかと思う。

だからと言って、インテグラルシステムをぶち壊して、前後分離型のブレーキ体系に改造しても、いいことは無いと思う。

まず、インテグラルシステムは、タイヤの荷重リソースが少ない頃(120やそこいらのバイアス)、それを有効に使い切るために考案された代物と言って良い。(だから最新ラジアル車には、インテグラルは採用されていない。)フレームやフォークなどの車体関連も、それに最適化され、バランスしている。そのバランスを、わざわざ壊すことになるからだ。

実際、インテグラルシステムの装着車で、それが通常の前後分離のシステムに比べて不利になる場面というのは、全くないと思う。

アタマの中で想像すると、例えば、雨のコーナーの急制動などで、フロントブレーキを使いたくない場面などが想像されよう。しかし、インテグラルでヤバい程のシチュエーションというのは、分離システムでも、リアだけではどうしようもない域に、既に入っている。

また、コーナーの入り口や中で、姿勢制御に前後片方だけ使いたい場面もあろう。これも、MOTO GUZZI では問題にならない。姿勢や荷重の細かい制御に気を使いたくなる程、MOTO GUZZI のシャシバランスは神経質ではない。また、前ブレーキだけでも荷重の移動・制御は十分可能だ。

インテグラルシステムは、どんな状況でも、最高の効率でブレーキを使うために考案された、合理的なシステムの一つである。要は「使いこなし」の問題なのだ。通常のブレーキシステムと同じように、インテグラルも、馴染むに従い、その長所を身体が覚え、納得できるものなのだ。


● ファイナルドライブのケーシングが密閉式なので噴く、ブリーザーが必要

知り合いには、容赦のないGUZZI 乗りも結構居るのだが。
実際に「噴いた」例を、私は見たことがない。

もし噴くとしたら、何か別の理由があるのだと思う。レベル管理?オイルの質?。どちらにしろ、バイクのせいではない。

まあブリーザーをつけても、見た目がみっともない程度で、直接の問題はないだろう。ただし、大気開放となるとオイルの劣化は早くなるだろうし、異物の混入の可能性も出て来る。ファイナルのオイル管理は、余計にしっかりやる必要があるだろう。


● バルブクリアランスを多めに取っている:店のオリジナルセッティング

理由を尋ねたら、ノーマルのままだとバルブを突き上げるからだ、と言われたことがあった。

これは、はっきり嘘だと思う。

バルブのリフト量に比べ、タペットの調整幅など微々たるものだ。突き上げのリスクを減らす程の効果はないだろう。

よしんばそうだとしても、バルブのリフトが減ってしまうのだから、パワーは落ちるだろう。

バルブを突き上げる理由は、多分ほかにある。
一番の可能性はオーバーレブじゃないかと思うのだが、だとすると、タペット広げてガシャガシャ音のうるさいパワーダウンしたエンジンにすることで、オーバーレブのリスクを減らしている、いうことになる。

エンジンが不憫だと思う。

整備というのは、エンジンの動作の様相を的確にイメージできている必要がある。だから、もし店のメカが本気でこんなことを主張しているようなら、整備のセンスを疑った方がいい。


● エンジンオイルの銘柄

メーカーの純正指定をお勧めする。
メーカーは普通、この銘柄でテストを行っているからだ。
これなら所定の性能が出せる、そういう結論が出ているのだ。

たまに、安いそれなりの銘柄で、交換頻度を上げた方が良い、というような物言いも聞く。これはあまりお勧めできない。「それなりの銘柄」が、エンジンに良い訳がない。

また、添加剤も止めた方がいいのではないかと思っている。
オイルの専門家に聞くと、あまりいい答えを聞かないのだ。

オイル関連のトラブルは、すぐさま出る類のものは少ない。長い年月の後、じんわりと答えが出るのだ。金と年月をかけた後「ダメでした」ではシャレにならない。

そんな分野で、身銭を切って実験開発することはないと思う。
既に出ている答えを使う方が、安全確実だ。


えー最後にオチを。


● イタリアは雨が降らないので、イタ車は雨に濡れると調子を崩す

ああもう。イタリアでも雨は降りますって!。
アナタの機体が壊れてるだけ・・。


お後がよろしいようで・・。


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他にもいっぱいあったように思っているんですが。
いざ思い出すとなると・・。
思い出したら、足して行きます。



ombra 2005年 12月

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