きままに
日々思うこと、いろいろを思いつくまま・・・

121 2002.5.15 カー君が逝った日

3. いのちのともしび

本屋でふと手にした小動物の雑誌に、偶然脱毛についての特集が載っていた。買って帰って読むと、カー君のような脱毛の仕方には副腎の腫瘍が原因の可能性が大きい、という記述があった。

大学の獣医学部では、大動物といって牛や馬、豚などの家畜と、犬や猫などに関することしか教えないのだと聞いたことがある。最近の流行のハムスターやフェレット等、ドメスティックアニマルと呼ばれる動物達に関しては、獣医師独自の研究や勉強によって治療がなされているのだそうだ。

もし、私がそのことをよく考え、ドメスティックアニマルを手がけている病院の門を叩いていたら、カー君の運命は変わったのではないか。一番の心残りはそこにある。

ヨタヨタ状態になってしまってから、もうエサの制限をすることはやめた。好きなモノを食べさせてやりたい。ヒマワリの種もやった。レタスもやった。それでもいっぺんに多くを食べることが出来なくなっていて、ちょっとつまんでは寝床に引っ込み、また思い出しては出てきてエサ入れに入り込み、という姿をよく見るようになった。

元気な頃は夜行性で、昼間カー君の姿を見ることなんてほとんどなかった。私と同じ部屋で寝ていて、真夜中にまわし車の轟音に何度起こされたことか。そのうち私も慣れて、夢うつつにカー君の元気を確認していたのに。

ハムスターの生き甲斐は食べることと寝ること、とよく言われるが、まさにその通り、おぼつかない足取りであっても、カー君はエサを食べに出てくることだけは忘れなかった。エサ入れに伸び上がり、中に転がるように入り込み、美味しいエサはどこだ、とばかりに中を漁る姿は食いしん坊なハムそのものだ。

結構、このまま長生きしてくれるかも知れない、と希望を抱き始めた頃、命の火は燃え尽きた。思えば最後のきらめきだったのかも知れない。

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