64型の"mosrite"について

64年型の"mosrite"にはさまざまな仕様の物が存在します。
63年型の特徴をいくつか引き継いでいる物、典型的な64年型と言える物、内容的にはほとんど65年型と同じ物等。
これは手作りの少量生産から機械化による大量生産への移行をそのまま表していると言えるでしょう。
64年型の最大の特徴は、ネックのジョイント方式がデタッチャブル(ボルト・オン、カバード)になっていることです。
ジャックはピックガード上に移動した"トップジャック"になっています。
63年型から続いてきたヘッドのバースト仕上げは、製造番号"#0380"付近の物で終わります。
"THE VENTURES model"のロゴは製造番号"#0630"付近の物までは"ラージ・ロゴ"です。
ヘッドがナチュラル仕上げの物も含めて、"ラージ・ゴロ"には全て白い塗料が使われています。
これまで"ラージ・ロゴ"は全て同じ大きさだとされていましたが、製造番号"#0500"台以降"#0630"付近の物には僅かに小振りの"ミディアム・ロゴ"?が存在しています。
これは極最近、製造番号"#0200"台と"#0500"台を比較していて気が付きました。
64年後期になるとピックアップにも変化が見られます。
まだ"mosrite of california"の刻印は入りませんが、ポールピースが大きくなり、コイルの巻き数が1万2千回転になります。



1965年夏の来日公演で使用され、"エレキの若大将"加山雄三氏に贈られた"mosrite"はこのタイプのピックアップです。
作られた時点ではポールピースが小さい、コイルの巻き数が1万回転の物が付いていましたが、暫くして新型ピックアップが完成したので交換されたと思われます。
現在では"mosrite of california"の刻印が入っている物に交換されています。

1999年7月6日加筆

シンコー・ミュージックから出版された「エレキ・ギター・ブック Vol.3」に、この"mosrite"が大きく取り上げられました。
製造番号が"#0382"であるという記載がありますが、これについては疑問に思っています。
ナチュラル仕上げのヘッドに黒い塗料のスモール・ロゴが登場するのは製造番号"#0630"付近からです。
また、ピックアップについては最初から"mosrite of california"の刻印が入った物が付いていたとされていますが、これについても疑問に思っています。
レコードジャケット等で見る限り、"mosrite of california"の刻印が入っていないピックアップが付いています。
ピックアップのシェイプが丸みを帯びている事から判断出来ます。
今回取り上げられた"mosrite"はボディ形状、キズ等の特徴から、1965年当時ドンが使っていた物と思われます。
また、"VIBRAMUTE"ユニット一式が90年代の再生産モデルの物に交換されています。

製造番号は"#0600"台後半、ピックアップは後に加山氏自身が購入した65年後期モデル(パールホワイトでトレモロユニットは"MOSELEY")に付いていた"mosrite of california"の刻印が入った物に交換された。
これが私の想像です。

この件は現在シンコー・ミュージックに問い合わせ中です。

1999年9月15日加筆

その後、製造番号は"#0682"である事が判明しました。
単なるミスプリントという事で問題は解決しました。
ピックアップについては、はっきりとした事は分かりませんでした。



製造番号"#1130"台まではこのタイプのピックアップが使われます。
その後製造番号"#1140"付近の物から"mosrite of california"の刻印が入ったピックアップになります。
また、製造番号"#1200"手前の物からネックのジョイント方式が極普通のネックプレート式になります。
ナットはまだ半筒型の物が使われています。
この時点ではネックとボディに製造年月を示す"スタンプ"はまだありませんが、製造番号"#1200"手前を64年型と65年型の境目とするのが妥当でしょう。