使徒星の住人たち vol.4



 「ただいまァ」

 その返事は、
<ひもじいよォ>

 これがうちの普通の状態。
そして、普通というからには、これがほとんど毎日繰り返されてるってことだ。

 確かにジャックはマメに玄関先まで翔んできて、俺を喜んで迎えてくれる。
でも、迎えてはくれるけど、奴にとってこの上もなく恋しいのは、俺という個人じゃなく、俺の背後に光り輝く満腹状態のオノレの姿でしかない。

 その裏付けに、俺たちの過去にこんなことがあった──。



「なあ、ジャック。俺のさ、いいトコってどんなトコだと思う?」

 俺は何となく訊いてみた。

<いいトコぉ?>
「うん」

<いいトコって言ってもなー。よお、ファラ。いいトコだと。朱里は難しいこと訊くよなァ>
「まったくだな。これは難問中の難問だ」

 ファラなんかに訊いてないやいっ。
おまえにかかったら、「いいトコ」が「いいカモ」になってしまう。

 だから、俺はジャックに訊いたのに。

<いいとこってのは答えにくいけど、取り柄ってんなら言えるぜ>
「それでもいいよ」

 だってそれって、ジャックが認めてる「俺の美点」ってことだもんな。

 ちょっぴり嬉しくなっちゃったりして、にこにこ顔で待ってしまった。
その、ジャックが語る俺の取り柄ってゆーヤツを。

 そしたら──。

<まず、飯作り。豚の角煮は最高だな。
キャットフードのあの冷たさと張るたァ、なかなかどうして豚さんもおいしい奴だ。
それにィ、紅玉のリンゴを炊いて作ったジャムね。市販のは甘すぎていけねえな。
まずは材料選びが肝心よォ。
ちっと酸味の効いた紅玉じゃなきゃ、火を通したあとにあれだけのリンゴの風味は出てこないわな。
リンゴって言えば、朱里のアップルパイは売りもんにもなると思う。
けど、おまえの偉いとこは、普通ならゴミとして捨てるリンゴの皮で湯を沸かして、アップルパイと一緒にアップルティーを出すとこだ。
その手際の良さといい、工夫といい……いやァ、朱里と暮らしてて良かったなって、思わずこの俺さまを感心させるたァ大した奴だぜ、おめえはよ。
でさ、デザートって言えば、三段重ねのババロア、ムース、ゼリーのアレもうましかったな。
また作れよな、朱里。
ああ、やっぱり前菜から言わなきゃダメだよな。
いろんな貝類と蒸した鳥の笹身とかにレモン汁をかけて混ぜたのも絶品だったなあ。
俺の好きなセロリと鯛の刺身と……あと何か忘れちまったけど、その少し甘めの醤油味のも……。
そうそ、海鮮料理屋で食べたのを真似して作ったヤツだ。
鶏の皮を揚げたのが、こう、パリパリッと香ばしくてだな……>

──確か、延々と三十分は続いたっけ。

 ったく、鳥の笹身だと? 皮を揚げてパリパリッ……だって?

 こいつ、共食いだとか考えないんだろうか。おいしければ許されるってもんじゃないだろう?

 それでも、沸き出てくるのは食べ物の話ばかり。
いつ違う話題に移ってくれるのかと待っていたら俺の取り柄は「まず」で始まり、「まず」が終わらないうちに終わってしまった。

 もちろん、ジャックのおしゃべりを強制的に終わらせた者がいたからだ。

 飼い鳥の舌の滑らかさに聞き飽きたのか呆れ返ったのか、ファラが手にしていたレポートを、何と、止まることのないジャックの嘴に挾んだのである。

「なあ、ジャック。食い過ぎて翔べなくなっても俺はおまえを見捨てたりしないからな。
心配せずにたらふく食えよ。翼を持ってても翔べない鳥は結構数多くいるもんだ。
ぶくぶく肥えたサミュエってのもウケるかもしれないしな。
そうそう、産卵期の雌にだけには間違えられてくれるなよ。おまえは列記とした雄なんだからな。
オカマのサミュエを飼ってると言われるのだけはゴメンだぞ」

<…………>

 さすがのジャックも飼い主の舌には適わないのだった。

 すぐさま甘え声を出して、頭をファラの肩に擦りつけ行動にジャックは移っていた。
クゥークゥーと、それはもうファラ相手にしか鳴かない特別な声でご機嫌取りに勤しんで。

 ジャックにとっても、ファラは絶対的な強者なのだ──。

 だいたいペットは飼い主に似るもの。ペットを見れば飼い主がどんなだかわかるってものだ。
ジャックの舌のまわり具合が特別いいのも、すべてファラに関与してるってことさ。

 それでも一応とはいえ、ジャックの口を止めたのは偉いっと思いきや……。

「そういやこの頃、その三段デザートにはお目にかかってないな。
ババロアはプレーンにしろ。ゼリーはワイン。メロンを入れて美しく仕上げろよ」

 俺をこき使うところは変わらない。

<ほれ、朱里っ。早よキッチンに行かんかいっ>

 俺を見つめる四つの瞳。ファラという強力な同志を得たジァックの声は、ものすごい勢いで弾んでいた。



 で、俺はどうしたかって?
決まってるよ。ご注文通りに作りましたのさ。それで、翌日の夕食にしっかりと出しましたっ!

 何気なく訊いてみただけだったのに……。
やらずに済まされてたことをわざわざやるように仕向けてしまった向こう見ずなこの俺の性格が、その時偉く恨めしかった。

 でも、これでわかると思う。ジャックにとって、俺は食べ物の宝庫なんだってことが。 

 だから──。





「ただいまァ」

 その返事は、
<ひもじいよォ>

 玄関の扉を開けると早速、マンネリ化してる我が家特有の挨拶が俺を迎えた。
ジャックの物乞いする声が、技術開発生物研究所から帰ったばかりの俺の頭のなかに残響の波を引き起こす。

 だが、今回はそれも幾分勝手が違っていた。
マンネリ化を防ぐようなこんな付録が波の後尾に続いたのだ。

<朱里、客が来てんぞ。でもって、まだ茶も出してねーんだ>



 リビングに進んだ俺を待っていたのは、ファラと、そして紙袋を抱えたもうひとり。

「これ、紅玉です。アースが来るなら買って来いって言うものですから……。
朱里くんは本当にマメですね。パイまで焼いてしまうなんて、なかなか器用ですよ」

 そこには、ファラの親友であるエスターさんの、久し振りに見る笑顔があった。

 それにしても、お客人にリンゴを買って持って来るよう催促するなんて……。
ホント情ない。ファラって信じられない奴だよな。

 エスターさんも気苦労人だよ。
いくらファラが社会的に特別な存在だからって、私生活でも世間にこれだけ貢献してる人はいないよ。

 エスターさんから渡された紙袋の中身とファラを交互に見ていたら、思わずほうっと溜め息が出てしまった。

 なのに。

「久し振りにエスターが我が家に来たんだ。得意なパイでも作ってやれよ」

……こいつはっっ!!!

「ファラ、おまえねェ。
友達を迎えるって気持ちがあるんなら、エスターさんに出すパイの材料くらい自分で用意したらどうなんだよ」

 ファラが相手じゃ思ったことを素直に口にしたところですでに材料は揃ってしまったことだし、結局台所に行かされる羽目になるのはわかっていた。

 でも俺、人にモノを頼むにも頼み方ってあると思うんだ。

 だから、世間並みの常識を──それが無理なら、せめて一般的な常識の十分の一をわかってもらおうと、俺は身を乗り出した──その瞬間、ファラはにやりと口元を歪めて、その形のいい薄い唇を静かに開いた。

「大学授業料、教材雑費、特別研修費。研究費。
おまえは成長期だから、食費やら何やらの生活費も以前よりかかるし、以外と馬鹿にならないよな。
庇護者を持つ保護者の苦労は絶えないって、もっぱら子を捨てる親の増加が現状だっけ」

 椅子の背凭れに深く寄り掛かって、俺のスポンサーは続ける。

「知ってるか? 渡り鳥にしてもある現状下では渡りの本能が繁殖の本能に勝つらしいぞ。
ここで無理をして繁殖を続ければ自分の生存に響く可能性がある、と。
ま、雌がそこまで計算して巣を放棄してるとは限らないけどな。
でも、俺たちの世界でだって現在でさえ家族が生きていくために間引きや人身売買が行われてる星もあるんだし、さしあたって自分の生存率のほうが大切だと考える親は、人類を含めて多くの動物の社会で見られるのが実情だ。違うか?」

 違わない……。

「おまえも大きくなった。性格も、まあ素直だし、俺としてはほぼ満足なほどに育ってくれたと思ってる。
育て親を蔑ろにするような親不孝者じゃないし、ましてや、俺に歯向かおうなんて大それたことなど──」
「わかりましたっ。わかりましたよ! 作ればいいんでしょっ」

 ほらね。

 ファラには恩があるから俺って立場弱いんだ。
またファラがそれを弁えてて、こーゆーふうに持ち出してくるから、俺はいつまでたっても使用人から這い上がれない。

 生みの親は選べないけど、育ての親は──。

 もしかしたら俺の選択は失敗だったのかもしれない……。





 リンゴ尽くしの持て成しも一息ついて、紅茶も二杯三杯とすすんだ頃になっても俺はエプロンを外せず、空いたケーキ皿を見つけては気を利かしてパイをのせていた。

 ジャックの食べ方は豪快というより汚くて、おいしそうに食べてくれるのは嬉しいけど散らかしようもすごいから、俺は素直に喜ぶことができない。

 ちなみにジャックのアップルパイは書類などを縦に挾むバインダーで固定してある。
皿を使うと嘴の突く音が大きくて、今にも割れんばかりの高音が響くのだ。
だから、こっちもおちおち安心して食べてられなくて……。

 で、ふと思いついたのがこれ。

 バネを緩めにして食べ物を挾んでやるとジャックも食べやすいし、何たって皿とは比べものにならないくらいの嬉しい価格。
バインダーは強靭で嘴に壊されないから、ちょっと嘴でへっこむくらい何のその。
まわりに飛び散るのさえ我慢すれば、素晴らしくジャックに適してる品物となる。

 事前に紙でも下に敷いてやれば少しは掃除も楽だしね。

 ただ……。
ジャックが調子に乗って食べると紙を敷いたくらいじゃお呼びにならなくて──。
このアップルパイがそうなんだけど。

<うっぷ、食った食った。いやァ、うまかったーっ>

 ヘンに膨れた鳩胸を、これまたヘンに上下させながら、ジャックは翼を少し開閉させた。

 ぴょんっと一跳び俺の膝に移動して、満足そうに座り込んで身を丸める。
案の定、瞬く間に俺の膝の上はジャックの昼寝場所と化す。

「ジャックは朱里くんに懐いてるんですね。まるで朱里くんが飼い主のようだ」

 エスターさんもわかっちゃいないな。ジャックにしてみりゃ暖かいほうを選んだにすぎないのに。

──ファラより俺のほうが平熱が高いだけなんですよ。

 ちらっとファラを見やると、ファラは何も聞こえなかったと言わんばかりにカップを口に運んでた。
膝のジャックも何とも言ってこなくて、何だか拍子抜けしたって感じ。

 ジャック、眠っちゃったのかな。いつもなら、ファラのチェックが一言入るとこなのにさ。

「ね。もう一杯どうですか?」

 この無言の間が落ち着かなくて、俺はエスターさんのカップに手を伸ばした。

「いや、もう十分いただきましたよ。おいしかった、とっても」
「いえ、とんでもない。こちらこそ、リンゴを買っていただきまして……すみませんでした。
エスターさんが今日来るってわかってたら、もっといろいろ用意しといたんですけど」

「そんなに気を使わないで。僕は客っていう客じゃないんですから」

 でも、ファラの御友人は上客なんです。

「エスター。おまえ、花を見に来たんだろ? そっちにあるから勝手に見な」

 え? 花っ?

「ええ」

 エスターさんは軽く頷くと、すっと優雅に立ち上がって隣りの部屋に歩いて行った。

 部屋と言っても隅を利用した約十平方メートルの三角形の場所で、サンルーフになっているからって、もっぱら植木置きに使ってる物置だ。
この頃整頓していないから、あまり他人に見せたくはない場所でもある。

 ジャックを腕の中に抱えて、俺もエスターさんのあとに続くと、そのまたうしろをファラがついて来た。
みんなしての大移動だ。

「ねえ。エスターさん、どの花を見に来たんだって?」

 くるりと振り返ってファラに尋ねる。

 すると、
「昨日、おまえに渡したヤツ」
ファラは無造作に受け流した。

「ああ、あれね。『歌姫』だっけ? あれだったら咲いてないよ。
今にも咲きそうだけど、今朝水やった時はまだ蕾だった」
「そりゃね。まだ咲きっこない」

 ふうん、あの花をねえ。エスターさんってば、そのためにわざわざ我が家に来たのか。

 恒星ガリオの日光をいっぱいに浴びるぽかぽか陽気の温室で、エスターさんはじっとその花を見ていた。
まだ蕾の「歌姫」を、まるで恋しい人を見るかのように。

「これで安心したか? ちゃんとあるだろ」

 ん? 安心したか……?

「ちゃんとあって当然ですっ! まったく、持って帰るって言った時は本当に驚いたんですよ。
これは、かの『歌姫』です。そうやすやすと家庭に置く花じゃないんですからね!」
「見つけたのは俺だぞ」

「誰が見つけようと関係ありませんよ。
ほんとにもう、本部長には一株しか報告しないわ、もう一株は持って帰るわ……。
いいですか、こうなったら最後まで黙ってるんですよ。
万が一にも、この花がここにあると知られちゃまずいんですからねっ!」

 知られちゃまずい?

「ねえ。この花、そんなに家庭にあっちゃマズイわけ?」

 ふたりの間から覗き込むようにして顔を出すと、エスターさんはさも唖然とした表情を俺に返した。
同時に横から、クックッと息を吸い込む笑い声が漏れてくる。

 何だよ、そのブキミな笑いはっ。

「おい、エスター。朱里のやつ、『歌姫』を初めて見た時、何て言ったか想像つくか?」
「想像つくも何も、この花は銀河連邦一有名な……」

「それがさ。『へえ、変わってるね。葉っぱなんてギザギザしてる。触ったら指切っちゃいそうだな。
これ、珍しいんじゃないの?』だぜ。確かに珍しいには違いないけどな」
「まあ、そうですけど……。でも、朱里くんってELG志望でしょ?
セリーア人の集う星とも呼ばれる『使徒星』の道標、ガイダルシンガーを知らないなんて──」

 ガ、ガイダルシンガーっっ?!!!

 伝説にもなってるあの花っ?
散らばったセリーア人に使徒星の位置を伝えるためだけに咲くという、あの生物学者の夢って噂のっ──?

「おっ、おま……え、ファラっ! あのガイダルシンガーを黙って持って帰ったてーのっ?」
「黙って持って来た、なんて人聞きの悪い言い方するなよ。
これでもちゃんと一株は報告したんだし、第一これはもともと俺のとこに来る運命だったんだ。
一株くらいケチるなって言いたいね」

 知らぬは仏とはこのことだ。俺、この花に水やるのさえ怖い。
今朝なんて、適当にさっさと済ませちゃった。
陽に当てて水やっておけばいいかなって安易な気持ちで……。

 うわっ、とんでもなく恐れ多いことかもしれない!

「いいですか、朱里くん。これまでにも何株かのガイダルシンガーが見つかってます。
この種は雑草のような強い生命力を持っているそうですが、なぜか蕾のまま枯れてしまうのが普通らしいです。
我々ELGが採集したそれらのうち、開花したのは一株もなかったとか。
だから、もし枯らしたとしてもあまり気を落とさないようにね。
都合の良いことに、誰もガイダルシンガーがここにあるって知らないのだし」

「う、う……ん……」

「そんなに堅くならないでください。でも……、そうですねぇ。
プレッシャーをかけるつもりはありませんが、もしも花が咲いたらきみの名前はきっと後世に残りますよ」

 充分プレッシャーになってますってっ!

──でも、それならどうしてファラの奴、この花の名前を「歌姫」なんて言ったんだろ。
ガイダルシンガーってこれ以上もないくらい有名な名前があるのに。

 と、頭の中で思った瞬間、即座にファラが読んだらしく、
「ガイダルシンガーってのは学識名。『歌姫』は俗名さ。
こいつの場合、学識名のほうが親しまれてるけど……、ま、どっちの名前もこの花には合ってるよな」
そう言ってきた。

 合ってる、ねえ。

「これ、ほんとに歌う……の?」
「おまえが咲かしてみりゃわかるだろ? うまくいけば使徒星(シュワルナウツ)に行けるかもしれないぞ」

 シュワルナウツ──。

 セリーア人の、ファラの遥かなる故郷星。

 もしも咲いたら、ファラもドームのマリエも、同種のいる伝説の星に帰ってしまうのだろうか。

 サミュエ種のジャックだって、ファラが帰るならきっと一緒に帰るだろうな。
だってサミュエ種はシュワルナウツの鳥なんだから。

 花の咲いた姿は見たいけど、それを考えると気が引ける。
俺も使徒星に行けるなら……。それだったら思いっきり咲かす気になるのに。

 もし「歌姫」が俺のためにも歌ってくれるなら、さ。

<朱里だったら大丈夫。きっと歌声、聞こえるさ>

 ふいに頭に響く励ましの声に腕の中を覗き込むと、ジャックの安らかな寝姿があった。
こんなにも腕にかかる重みと暖かさが嬉しかったことはない。



「歌姫」は蕾のまま。
けど、ギザギザの葉は元気良く茂り、まるでアンテナのように俺たちの一挙一動を観察してるよう。

 そう……、まるで、葉が静かに『成り行き』を見守っているみたいだ──。

 俺たちの……、いや、違うな。きっと俺が歌姫を託せる人物に値するかどうか試してるんだ。



 歌姫、俺はおまえにどう映る?
『使徒星の道標』の花は、人を選んで歌を聞かせるの──?

……なあんて、植物に尋ねたところで応えてくれるものでもないし、俺も馬鹿だよな。

 ま、いいか。なるようになる。
どうせ枯らしたって誰もここにガイダルシンガーがあるって知らないんだ、責任取らされることもないや。
気楽に考えよう、気楽に。

 ほとんどヤケに近い開き直りだった。これも俺の長所のひとつなんだろう。
深く考えたって仕方ないって一度思ってしまうと、それ以上はのりこめない。
こういう性格って落ち込んだ時なんか便利なんだ。
特にまわりの奴らがこんなだとね、こういう性格じゃないとやっていけないってのもあるんだけど。

 とにかく、花がここにある以上、できるだけ頑張って咲かせてみよう。あと先考えても仕方ないし。



 腕の中に抱いたジャックが暖かい。その暖かさをやけに心地好く感じながら、俺はくるりとふたりに背を向けた。
ひとり居間に戻ろうとすると、抱えたジャックの寝息と鼓動がさっきより幾分大きくなる。

 ああ、そうか。暖かいはずだよな……。



illustration * えみこ



えみこのおまけ




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