森の恵みと沢にひたるツアー
※ 本件は他団体の関わる活動ですが、森と水HP内に掲載しています。
 他団体HPのリンクで来た場合、ブラウザのボタンでお戻りください。
HOME カレンダー 山菜・きのこ 沢登り・歩き 沢旅・イワナ 湯・雪・他
砂防ダム写真集へ

自然保護ページ

渓流保護ネットワーク

続きがあります
08/04/15満砂後の対応
2004 11/30 茂来山霧久保沢堰堤視察

「霧久保沢に堰堤が作られているが、沢は安定していて必要と思えない。こんな工事が広がれば美しい渓流やイワナの住む場所がなくなる」と地元の方の声が届きました。
巨木「コブ太郎」を持つ茂来山への軽登山ルートということで、長野県勤労者山岳連盟自然保護委員会(長い...)から東信森林管理署に問い合わせたところ、
「河床内に残留している堆積土砂礫の流出防止を図る」
「渓岸に存在する崩壊地の復旧と新たな渓岸浸食により森林が荒廃することを防止する」
「保全対象である橋梁の直上に存在する不安定な土砂礫の固定と橋梁の基礎部へ衝突する水流を改善する」
目的で堰堤を作っていると回答をいただきました。これだけでは判断できないので現地を視察することにし、渓流保護ネットワークの田口・藤原とともに訪れました。東信森林管理署の瀧川正一署長と中村享治山課長が説明してくれました。

短くまとめると、
1)堰堤の必要性・優先性が小さく、逆に浸食を進める可能性もある
2)もっと安くて生態系を壊さない方法(間伐、石での簡易護岸)で十分だった
と考えました。これに基づき要望書を出し(12月9日)、回答(12月28日)をいただいています。その回答で不明な点などについて質問書(2005年1月22日)を提出し、回答(2月28日)をいただいています。また長野県から森林管理署・局に対し改修の協議を申し入れるよう要望(長野県へ、2月24日)しています。同様の要望を森林管理署・局にも行いました(3月3日)。

以下、視察の詳細をどうぞ。

1 視察の様子

臼田町の東信森林管理署に集合。夜から朝の雪で松本からの道が渋滞して遅くなる。署長室にて詳細な図面を見ながら説明してもらう。工事に当たって生態系への配慮はしていないとのことで、「イワナに悪影響」「土砂は適度に流すもの」などというわれわれの発言に驚いていた(!)ようだ。
車で現地へ。抜井川沿いの国道から霧久保沢沿いの林道に入り、2kmで登山口駐車場。林道は延びているがゲートがあって登山者はここから歩く。ここまで本流出合の中州のようなところに2軒(うち1軒は廃屋)家があるが、あとは林道の途中に採石場があるのみ。

沢の傾斜はゆるく、両岸は急峻ではない。人工林が多く細い雑木もある。沢は平均幅2mぐらいだろうか、集水域の割に小さな沢だが、沢床は意外なほど岩盤が出ていたり大岩があって瀬・淵の続く美しい沢だ。水流の近くまで岩に苔が生え、木も生えていて、大水のようなものはほとんどなさそうに見える。
さて駐車場から霧久保沢右岸の林道を10分ほど歩いて橋で左岸に渡るのだが、この橋のすぐ上流20mに堰堤を作っている。堰堤の10m上流左岸に崩壊地があり、沢に接する部分に石積みと盛り土を施工してある。
橋から上流を見た図

黄色ユンボのすぐ向こうが堰堤
背景の緑はヒノキ林で、右手の茶色いところが崩壊地
平面図

霧久保沢は右から左へ流れる
左の弧が林道
中央の細長いのが堰堤
その右下のホタテ貝のようなのが崩壊地
崩壊地の両側は基岩露出の記号
1 デメリット
まずこんな小さな沢に土場が作られ重機がうごめいているのでぎょっとする(...実は見慣れてるけど)。完成後も、もともと岩盤や自然の瀬淵が美しいはずの小沢を堰堤という人工物でせきとめ、その上は妙に平らな堆砂地がある、という見慣れた(泣)風景になるだろう。
そして魚類を代表とする生物の移動を妨げる。完成時は2mほどの段差ができる。またこの日も見られたのだが、自然状態の砂より細かい泥状のものが下流に見られ、pHは工事箇所の上7.5に対し下は8.2だった。コンクリから出る化学物質によるのだろう。特に今はイワナの産卵期から孵化期であり、生息だけでなく繁殖に悪影響を及ぼすと心配される。
橋の保護にもデメリットが考えられるが後述する。

さてこれらのデメリットを越えるだけの工事のメリットがあるのか、ということだが、、、
2 堆積土砂礫の流出防止
もともと土砂はゆっくり流れてゆくのは構わない。急激に出ると災害を起こすことがあるが、この地点では考えられない。上の「橋から上流を見た図」や下の橋付近の写真でわかるように堰堤の上も下も(!)堆積土砂だか土場を作るために運んだ土砂だかわからないが安定してたまっている。大雨で少しずつ流れるだろうが災害にはならない。とはいえ下流の生物には迷惑なので、わざわざ土砂を運び込んだのならむしろそれが問題だ。
堰堤上流(右岸)から橋の左岸たもとあたりを見る

橋の基礎が浸食されていくとしたらこのユンボがあるあたりだが、現在土場となっている。橋のちかくまで木が生えていて過去の浸食が少なかったことがわかる。工事後も水流の近くに石を積んだ簡易護岸ぐらいで十分橋を守れる。
3 崩壊地の復旧と新たな渓岸浸食により森林が荒廃することを防止
これは効果があるかもしれない。が、逆効果になるかもしれない。下の写真がその崩壊地。今のところ小規模で、この流域でここを優先して手当てすべきとは思われないので次に述べる橋の保護に加えての理由付けか。

崩壊地
石積みによって渓岸を固定しつつ水流から守っている
堰堤を満砂させることでこの石積みが埋まり、より安定する予定
ただし水は高い位置を流れるようになる
堰堤を満砂させることでこの石積み部分が安定するのだが、河床を上げることが森林保護にはならないかもしれない。つまり浸食を気にするような大雨のときは河床より高い位置を水が流れるため、また上に向かって浸食が進む。河床を上げずに現在の石積みを若干補強すれば十分ではないか。河床を上げないオープン化を提案したい。

4 橋梁の基礎部へ衝突する水流を改善する
堰堤を作ることでその上の堆砂部の勾配をゆるくして流速を落とし、水が堰堤を落ちて橋のたもとに当たらないようにするということだが、平水時はそのとおりの効果を発揮するだろう。しかし現在の橋のたもとが安定していることからもわかるように平水時は問題ではない。災害の起きそうな大水を想像してほしい。そのとき堰堤の上が満砂して滑り台のようになっていたら、水が堰堤から勢いよく飛び出してまさに橋の近くを攻撃するのではないか。それよりも堆砂させずに現在の曲がった流路のままにし、橋の近くに若干の石積みで補強すれば十分であり、大災害も起こりにくい。

5 堰堤工事の優先性
このあたりの人工林はカラマツが多い中、この崩壊しつつある部分(橋付近も)はヒノキ林で間伐不十分で林床真っ暗!まずこちらを気にして間伐するべき。それですぐに崩壊が止まるとは言わないけれども、崩壊のスピードを遅らせられると期待できるし、うんと安くしかも生態系への影響も少ない。ちなみに橋の先にも林道が続くが、ほとんど水土保全林であり、緊急に車が通る必要はない。その意味でも、効果が疑問でデメリットの多い堰堤工事でなく、間伐と簡単な石積み程度で様子を見ておくのが妥当だったと思う。

その後

1)県環境保全研究所により、イワナ・両生類の調査が行われました

2)3年経ち、 動きがありました
08/04/15満砂後の対応
2004年12月9日

中部森林管理局長       関 厚 様
東信森林管理署長      瀧川正一 様

南佐久郡佐久町霧久保沢の谷止工に関する要望書

長野県勤労者山岳連盟    自然保護委員長 三井明高
渓流保護ネットワーク         代表 田口康夫
長野県自然保護連盟          会長 町田和信

 茂来山北面を流れる霧久保沢に工事中の谷止工(以下、堰堤と記す)について、11月1日付けで東信森林管理署にお尋ねしたところ、「河床内に残留している堆積土砂礫の流出防止を図る」「渓岸に存在する崩壊地の復旧と新たな渓岸浸食により森林が荒廃することを防止する」「保全対象である橋梁の直上に存在する不安定な土砂礫の固定と橋梁の基礎部へ衝突する水流を改善する」目的で堰堤を作っていると回答をいただき、11月30日に現地でも説明してもらいました。
 しかしながらこの説明は現状を見た限り納得できませんでした。以下にわれわれの考える「A現状についての見解」と「B今後についての要望」を示しますので、「見解」についての意見と「要望」への対応についてご回答ください。

A現状についての見解
1、土砂流出防止
 山腹崩壊などにより土砂は流出するのが自然であり、災害を起こさない程度に流出してゆくのを止める必要はない。工事箇所に堆積していた程度の土砂は自然に流出させて問題なかった。そもそも堰堤が完成して満砂したら以後上流から来る土砂は流出させることになる。
 霧久保沢を下部から堰堤の少し上まで見たが、狭い川床だけ岩が露出し、コケが生え、流れの近くまで木が生えている。大水が少なく、土石流は起きていないようだ。

2渓岸浸食防止
 問題の場所を写真に示す。渓岸の浸食により少しずつ崩れが上に進行している。現在は小規模で下流の橋への影響はなく緊急を要するとは思えないが、森林破壊も伴っており、崩壊を遅らせた方が望ましいだろう。施工された石積みによって崩れ面を支えつつ、水流が直接崩れ面に当たらないようにしたのは効果が期待できる。さらに堰堤が完成して満砂したときに堆砂によってこの石積みを支える。しかしその状態で大雨が降ったとき(たとえば水位が50cm上がると推定)、今の盛り土のあたりを水が流れて崩れ面を浸食すると思われる。つまり堆砂によって河床が上がった分だけ、水が高い位置の崩れ面を攻撃する。それに比べ、現在の河床なら水は石積みに当たるに過ぎない。さらに水位が上がると崩れ面を攻撃するようになるが、満砂した場合よりも低い位置となる。水の出方によるが、これでは堰堤を満砂させた方が有利とは言えない。もう少しだけ石積みを補強すれば満砂させる必要はないと思われる。
 またこの崩壊している斜面はヒノキ林で、混みあって林床が暗い。崩壊が上に進むのを遅らせるために、まずこのヒノキ林を間伐して林床の植生による斜面の安定を図るべきである。

3水流改善
 説明によると堰堤を満砂させて勾配をゆるくして流速を落とし、さらに堰堤で水を落下させることによって流れを変え橋梁基礎部への衝突を弱めるという。しかしいずれも平水時には効果的だが、浸食を心配するような大水では逆効果もありうる。満砂して勾配4%の区間が最大70mできるが、洪水時に流速をゆるめるには短い距離である。しかも満砂した面は平らで、むしろ速度を落とさずに堰堤から飛び出して橋梁近くを激しく浸食する可能性がある。河床を上げず、大石を適当に配置して流れがまっすぐにならないようにした方が効果的と思われる。

4その他のデメリット
 人工的な段差によって魚類などの移動を妨げること、工事によって泥や化学物質が流れ出して下流域の生物に影響を与えること(特に晩秋から冬のイワナの産卵・孵化期)といった生態系への悪影響がある。また登山者の通る橋のすぐ上であり、岩盤や瀬・淵の連続する美しい渓流景観を人工物によって壊し雰囲気をそこなっている。
 現在では工事の計画段階で環境調査をする例が増えており(たとえば国土交通省の島々谷6号砂防ダム)、魚類・水生生物・景観に配慮した既設堰堤の改修も行われている。松本市牛伏川の砂防堰堤(床固工、高さ1〜7.5m10基)は実施済み、薄川大門沢は谷止工を改修することが決まった。

5堰堤の優先度
 上に述べたように沢の岩にはコケが生え、流れの近くまで木が生えていて、浸食の激しい大水は少ないといえる。橋梁も、浸食をあえて心配するなら左岸だが、写真のようにやはり近くまで木が生えていてすぐに崩れそうにない。万一橋が壊れてもその先は水源涵養保安林であり、登山者や作業者が歩ければよく、車を通す緊急性はない。
 それに比べて崩壊を気にしている橋の上流左岸は暗いヒノキ林が放置されており、まず間伐をするべきだ。効果が疑問で、デメリットの多い堰堤工事を優先した理由が見当たらない。費用的にも堰堤工事費用を間伐に当てたら、この地点だけでない広い区域の水土保全を図れたはずである。

B今後についての要望
B-1 工事箇所について
1 イワナ産卵・孵化期の工事を中止する
2 崩壊を懸念する箇所のヒノキを間伐する
3 景観とイワナなど生態系に配慮した堰堤の改修を、県および住民と協議の上で行う

B-2 治山計画一般について
1 生態系を乱さない配慮をし、工事の前の計画段階で環境調査をする
2 水土保全にあたっては、林業施業によるものを優先する
3 工事するのが国有林内であっても長野県の自然であり、影響は林外にも及ぶので、自然に手を加える場合は事前に県および住民と協議する。

なお回答は12月31日までに以下の連絡先に文書でお送りください。電子ファイルでもいただければありがたい(メール添付などで)。

〒388-8004 長野市篠ノ井会732-1 三井明高
電話 090-1615-7328 fax 026-293-2273
e-mail: xxxxxxxxxxx(迷惑メール防止のためHPに表示せず)

平成16年12月28日

長野県勤労者山岳連盟 自然保護委員長 三井 明高 様
渓流保護ネットワーク    代表    田口 康夫 様
長野県自然保護連盟     会長    町田 和信 様

東信森林管理署長 瀧川 正一

南佐久郡佐久町霧久保沢の谷止工に関する要望書について

 標記の件に関しまして、下記のとおり回答しますのでよろしくお願いします。



A 現状についての見解について
 1「土砂流出防止」について
 当該流域においては、過去に土石が移動した痕跡が認められるところであり、隣接する河川における災害発生状況を踏まえると、今後、当該流域において土石の移動が発生する可能性は決して低くないものと考えています。
 今回の治山施設は、このような土石の移動原因となる渓床に堆積している不安定土砂を固定し、その移動の未然防止を図ることに加え、万一、上流から土石が流下した際にあっても、抑止・減衰することを目的としているものです。

 2「渓岸浸食防止」について
 当該治山施設は、前述のような目的にあわせて、渓岸浸食の防止も兼ね備えた位置付けとして設計しているものです。また、治山施設が満砂することにより、新たに上部の渓岸を浸食することになるとのご指摘についてですが、曲流部の渓岸が水流の衝撃によって浸食を受けることを防止するためには、治山施設の放水路位置を渓岸から遠ざけることにより、流れを河川の中央部へ誘導することが有効であり、加えて、崩壊地の山脚を固定するためには、崩壊地又は崩壊のおそれのある箇所の直下流部に治山施設を設置することが効果的であると考えています。
 更に、森林の整備によって、崩壊が上に進むことを遅らせるべきとの御意見についてですが、当該地の崩壊は、洗堀等による下方からの浸食によるものと考えており、これに対する措置と併せて、森林整備による表層浸食の抑制や根系による土壌緊縛力の増加による地盤の面的固結力の確保を図っていくことが有効と考えています。
 なお、森林整備による災害に強いソフト対策も重要との認識の下、当該箇所においては、平成12年当時に一部森林整備を行っているところですが、ご指摘のとおり、森林整備の必要な部分があると考えていますので、今後、早急に間伐等を実施していく考えです。
 3「水流改善」について
 ご指摘のように、「水流改善」による効果は、流速を落とす効果も期待しているところですが、それよりもむしろ、治山施設の配置によって、橋梁基礎部へ衝突する水流の方向を修正し、結果として基礎部を保全するものとして、位置を決定しているものです。これは、大石を配置して流れがまっすぐにならないようにする効果に近いものですが、大石を配置することは、それによって石を配置した箇所に対して配置していない箇所が相対的に弱くなり、その箇所の補強が必要となるという悪循環に陥りやすいことから、当該箇所において、その機能を維持しつつ、他の目的も同時に達成することができる構造として施設を設計することとしたものです。

 4「その他のデメリット」について
@ 魚類などの移動を妨げることについて
 当該施設は、通常より口径の大きな排水口を設けており、満砂に至らない場合は、そこからの遡上が可能であると考えています。
 また、通常の流水を施設上下流の高低差を極力小さくし、満砂時においても、流水の落差は1.5m程度として流下させる設計としているところです。
 なお、今後、満砂時も含め、魚の遡上に影響があるようであれば、その対策のための魚道設置等について、ご提案をいただければ検討して参りたいと考えています。
A 工事によって泥や化学物質が流れ出すことについて
 工事の実施に当たっては、経済性や効率性、施工可能時期及び工事による周辺環境への影響範囲等を勘案しつつ、その施工方法を選定しているところですが、ご指摘の点については、今後とも十分配慮して参りたいと考えております。
B 渓流景観を人工物によって壊し雰囲気をそこなっていることについて
 ご指摘の点については、木材で表面を覆った構造としたこと、治山施設の高さを最小限としたこと、施設の数を目的を達成するために必要となる最小限の1基とし、極力、自然の改変を抑えた計画としたところです。今後においては、森林の整備の一層の推進と併せ、より景観に配慮していく考えであり、ご理解頂きたいと考えております。
C 工事の計画段階で環境調査をする例が増えており、既設堰堤の改修も行われていることについて
 工事の計画段階で環境調査を行うことは、計画箇所の環境への配慮の観点から、地元情報等に基づき実施しているところです。また、既設堰堤の改修等においても、その目的を確保しつつ環境への配慮について、その状況に応じ、行っていくことは時代の要請であると考えています。

 5「堰堤の優先度」について
 当該地域においては、平年の降雨量は決して多くありませんが、一度大雨が続くと異常出水となり、渓流の荒廃が懸念されていることから、当該箇所の上流における土石の移動痕跡及び近隣の河川における過去の災害発生状況も踏まつつ計画したものです。
 また、森林を管理する立場としては、橋は非常に重要な役割を果たすものであると考えています。
 なお、当該箇所に隣接する森林は、昭和50年にヒノキを植栽した山で、今年で30年になりますが、その間、下刈等保育作業を実施してきており、最近では平成12年に一部森林整備を行っているものの、依然、間伐等が必要な状況となっているところもあり、早急に整備を進めていく考えです。
 このように、森林の保全は、森林の有する公益的機能を最大限発揮させるための森林整備と、森林の機能だけでは保持できない部分を補完するためのハード整備を併せて実施することが必要と考えているところです。

B 今後についての要望
 B−1 工事箇所について
1「イワナ産卵・孵化期の工事を中止する」について
 現地における工事の実施時期については、その箇所の気象条件などを踏まえて設定しているものです。イワナの産卵・孵化時期についても、その対象とする渓流における工事の影響度合いを勘案しつつ、配慮を行っていきたいと考えているところです。今回の工事箇所については、通常の回排水をすることにより対応したところでありますが、今後、イワナの産卵・孵化等に影響が及ぶことが懸念される場合においては、回排水にも創意工夫を重ね極力配慮して参りたいと考えております。

2「崩壊を懸念する箇所のヒノキを間伐する」について
 平成12年に森林整備を一部実施しているところでありますが、ご指摘のように林内がうっ閉状況となっている部分があるので、今後、計画的に間伐等の整備を進めていきたいと考えています。

3「景観とイワナなど生態系に配慮した堰堤の改修を、県及び住民と協議の上で行う」について
 当該施設の計画については、国有林野施業実施計画等に位置づけられているものであり、関係都道府県知事及び管轄市町村長に意見を求めるとともに、一ヶ月間の公告縦覧の手続きを行っているところであり、その実施段階にあっても、地元自治体に対して確認を行っているところです。
 今後とも、適切な事業推進を図って参りたいと考えています。

 B−2 治山計画一般について
1「生態系を乱さない配慮をし、工事の前の計画段階で環境調査をする」について
 通常、治山事業の計画に当たっては、実施前に当該流域の調査を行い、更に、個別の施設の実施に当たっては、上記当該流域の調査結果に基づき、必要と判断される場合には実施しているところです。今後とも、適切な事業実施に努めて参りたいと考えています。
2「水土保全にあたっては、林業施業によるものを優先する」について
 治山事業は、荒廃地を森林に戻し、また、崩壊するおそれのある山地については、それを未然に防止し、健全な森林の維持・造成を通して住民の安全で安心できる生活の確保等に取り組むものです。
 このため、森林整備等の実施によって、森林のもつ公益的機能を高め保全を図るとともに、崩壊地等における拡大崩壊及び表面浸食等によって表土等が流出することにより、災害の危険が高まる箇所においては、治山施設等の整備が必要と考えております。

3「工事するのが国有林内であっても長野県の森林であり、影響は林外にも及ぶので、自然に手を加える場合は事前に県および住民と協議する」について
 治山事業の計画にあたっては、国有林野施業実施計画書等の策定にあたり、都道府県知事及び管轄市町村長に意見を求めるとともに、一ヶ月間の公告、縦覧の手続きを行っているところであり、その実施にあたっても、地元自治体に対する確認を行っているところです。
 また、国立公園等の生態系への配慮に特段の重みがある箇所における事業実施においては、その法的規制に応じて、環境大臣や都道府県知事との協議等を経て工作物等の新設を行うことになります。

以上

2005年1月22日
東信森林管理署長 瀧川 正一 様
写し)中部森林管理局長  関 厚 様

長野県勤労者山岳連盟 自然保護委員長 三井 明高
渓流保護ネットワーク    代表    田口 康夫
長野県自然保護連盟     会長    町田 和信

霧久保沢の谷止工に関する回答についての質問など

2004年12月9日付の要望書に対し、28日付で回答をいただきました。ありがとうございます。わからない部分がありますので教えてください。ちょっとしつこいように感じるかもしれませんが、実際わからない部分なのでご容赦ください。質問でなくコメントのみの箇所もありますが、もしご意見あればお聞かせください。質問には番号を振ってあります。よろしくお願いします。

前回の要望書に対し、東信森林管理署からのみ回答をいただきましたので、今回は中部森林管理署へは 写し)としました。
 


A 現状についての見解について
 1「土砂流出防止」について
ここは私たちと大きく認識が違うところです。災害が起きない程度に「土石が移動」するのがよく、今回固定した土石は自然に移動させるべきと考えます。国土交通省でもこのような考え方に変わっています。
これに関し「隣接する河川における災害発生状況を踏まえると」とありますが、
1)   災害発生状況をわかりやすく、資料があればそれとともにお示しください。
2) 隣接していても沢からの土砂の出方は大きく異なるものですが、災害の起きた河川と霧久保沢は土石の出方は似ていると考えられますか。もし根拠となる資料があればそれとともにお示しください。

また「上流から土石が流下した際にあっても、抑止・減衰する」とありますが、
3)  谷止工での勢いの減衰は、本流までの2kmほどの区間で効果がなくなると思いますが、いかがでしょうか。

 2「渓岸浸食防止」について
 「流れを河川の中央部へ誘導する」「崩壊地の山脚を固定する」点は理解できますが、浸食は大水時に起きることを考えると満砂させるよりもよい方法がありそうな気がします。
「当該箇所においては、平成12年当時に一部森林整備を行っている」のが
 視察時には感じられなかったのですが、
4)  森林整備の場所と内容(間伐であれば間伐率なども)をお示しください。

「今後、早急に間伐等を実施していく」とのこと、ぜひお願いします。

3「水流改善」について
要望書では、大水時に「満砂した面は平らで、むしろ速度を落とさずに堰堤から飛び出して橋梁近くを激しく浸食する可能性」を指摘しましたが、これについて回答をいただいていません。
5)  再度ご回答ください。

 4「その他のデメリット」について
@ 魚類などの移動を妨げることについて
 「魚の遡上に影響があるようであれば、その対策のための魚道設置等について、ご提案をいただければ検討して参りたい」との積極的な回答、ありがとうございます。現在の排水口、満砂後の落差などでは遡上に不十分と考えておりますので、考えてみます。
A 工事によって泥や化学物質が流れ出すことについて
 「十分配慮して参りたい」とのこと、よろしくお願いします。
B 渓流景観を人工物によって壊し雰囲気をそこなっていることについて
 非透過型ダムは1基でも影響が大きいことを認識して「より景観に配慮していく考え」を進めてください。
C 工事の計画段階で環境調査をする例が増えており、既設堰堤の改修も行われていることについて
「工事の計画段階で環境調査を行うことは、計画箇所の環境への配慮の観点から、地元情報等に基づき実施している」とのことですが、
6)  今回の霧久保沢谷止工についてはどうですか。実施していれば調査結果もお示しください。

 5「堰堤の優先度」について
「一度大雨が続くと異常出水」となる河川は多いと思いますが、あえて「渓流の荒廃が懸念されている」と記したことについて、
7) 誰がどの場所について懸念したのか、具体的にあればお示しください。

 また「森林を管理する立場としては、橋は非常に重要」なことは理解しますが、百年に1回壊れるかどうか、もし壊れても緊急な必要性がなさそうな状況と考え、もっと生態系に配慮してほしいと思って優先度という指摘をしたものです。

B 今後についての要望
 B−1 工事箇所について
1「イワナ産卵・孵化期の工事を中止する」について
 「極力配慮して参りたい」とのこと、よろしくお願いします。

2「崩壊を懸念する箇所のヒノキを間伐する」について
 「間伐等の整備を進めていきたい」とのこと、お願いします。

3「景観とイワナなど生態系に配慮した堰堤の改修を、県及び住民と協議の上で行う」について
「国有林野施業実施計画等に位置づけられているものであり、関係都道府県知事及び管轄市町村長に意見を求めるとともに、一ヶ月間の公告縦覧の手続きを行っている」「その実施段階にあっても、地元自治体に対して確認を行っている」とのことですが、
8)  文書があればお示しください。

 B−2 治山計画一般について
1「生態系を乱さない配慮をし、工事の前の計画段階で環境調査をする」について
「通常、治山事業の計画に当たっては、実施前に当該流域の調査を行い、更に、個別の施設の実施に当たっては、上記当該流域の調査結果に基づき、必要と判断される場合には実施している」とありますが、
9)  署内の実例がありましたら施設の概要と調査結果をお示しください。

2「水土保全にあたっては、林業施業によるものを優先する」について
 「崩壊するおそれのある山地については、それを未然に防止」「崩壊地等における拡大崩壊及び表面浸食等によって表土等が流出することにより、災害の危険が高まる箇所においては、治山施設等の整備が必要」とありますが、崩壊を全て防止すべきでもなく、今回の場所で特別に必要とも思えません。この件の質問は重複するので省略します。

3「工事するのが国有林内であっても長野県の森林であり、影響は林外にも及ぶので、自然に手を加える場合は事前に県および住民と協議する」について
 
「国立公園等の生態系への配慮に特段の重みがある箇所における事業実施においては、その法的規制に応じて、環境大臣や都道府県知事との協議等を経て工作物等の新設を行う」とありますが、
10) 非透過型ダムは生態系への影響が大きいと考えますが、法的規制はありませんか。また署内あるいは県内で協議などを経て作った事例があればお示しください。

回答は2月4日までに、前回同様、文書と電子ファイル(Wordなど)でもいただきたいと思います。よろしくお願いします。
あて先:〒388-8004 長野市篠ノ井会732-1 三井明高 (090-1615-7328)
fax 026-293-2273       e-mail  xxxxxxxxxxxxxxx

 平成17年2月28日
長野県勤労者山岳連盟 自然保護委員長 三井 明高 様
渓流保護ネットワーク   代 表   田口 康夫 様
長野県自然保護連盟    会 長   町田 和信 様

東信森林管理署長 瀧川 正一

「霧久保沢の谷止工に関する回答についての質問など」について

標記の件に関しまして、下記のとおり回答しますのでよろしくお願いします。



 1)及び2)について
   今回ご質問の隣接する河川における災害の状況といたしましては、抜井川全流域において、昭和24,33,34,40,49年に災害が発生したという記録が佐久町誌にあります。
   また、霧久保沢においては、施工箇所の上流で昭和26年の豪雨により山腹崩壊が発生し、昭和29年から治山事業として山腹工事を実施した経緯があることに加え、現地においても土砂移動の痕跡があることから、災害発生の可能性は低くないものと考えています。

 3)について
   今回設置した治山施設による効果については、施設上流部において渓岸侵食の防止、流下速度の減衰、土砂移動抑制の効果があると考えています。
   また、本流に至る約2.5kmの区間は、土砂の堆積又は流下区間であることから、当該施設は、上流からの移動土砂を抑止・減衰することに有効に機能すると考えています。

 4)について
   施設を設置した左岸のヒノキ人工林の箇所については、昭和50年に植栽し、その後下刈、除伐等の森林整備を実施しています。
   ご指摘にもありましたが、更に手入れが必要な部分があると考えていますので、今後、早急に森林整備を実施していく考えです。

 5)について
   満砂することにより治山施設の上流域における勾配が緩和されることから、全体的には効果があるものと考えていますが、主たる目的としては前回に回答したとおりです。

 6)について
   当該箇所においては、実施設計調査において、希少種の確認は得られなかったとの報告を得ております。

 7)について
   現に渓岸浸食の兆しが認められる中で、上流域における土石の移動痕跡及び近隣の河川における過去の災害発生状況も踏まえ、このような表現とさせて頂いています。

 8)について
   地域管理経営計画等の手続きとしては、計画策定時に計画の公告縦覧し意見を聴取するとともに、県・市町村へ説明、県知事・関係市町村長の意見聴取をすることになっています。千曲川上流域の地域管理経営計画は、平成16年度から第二次地域管理経営計画が始まっており、上記手続きをとっています。また、今回の治山施設の実施段階においては、地元自治体に口頭による説明を行っています。

 9)について
   当該箇所においては、実施設計調査において、希少種の確認は得られなかったとの報告を得ております。

10)について
   治山施設を施工する場合において、その施工箇所が自然公園法の国立・国定公園特別地域に該当する場合は、協議を経て実施しています。
   また、災害等が発生し、計画箇所以外に治山施設を施工する場合は、事案毎に協議をしています。

以上
 2005年2月24日
長野県知事 田中康夫 様

長野県自然保護連盟     会長    町田 和信
長野県勤労者山岳連盟    会長    清水 馨
渓流保護ネットワーク「砂防ダムを考える」    代表    田口 康夫

国有林内の治山工事への提言を求める要望書

 2004年春に長野県が策定した「信州・長野県における土砂災害対策のあり方」は、全国に誇れる先進的画期的な方針です。防災を総合的に判断し、安全性と経済性を考えたものとなっています。同時に自然の改変を極力減らし生態系を乱さないこととなり、自然を重要な資源とする長野県にふさわしい指針にもなっています。
 県営の砂防ダム等については上記の方針に従って改善されて行くと思いますが、県下の森林管理署も堰堤(治山ダム、谷止工)を作っています。工事箇所が国有林内とはいえ長野県であり、壊される自然も長野県の美しい自然です。前記「あり方」の理念を踏まえ、堰堤などによる自然破壊をしないよう県は各森林管理署や中部森林管理局に要求すべきです。
 具体的には、南佐久郡佐久町霧久保沢に完成間近の谷止工がありますが、環境に配慮していない点や効果・必要性に疑問がある点を私たちは東信森林管理署に指摘してきました(要望書、回答、質問書を添付)。納得できない部分が多い回答をもらっていますが、「魚の遡上に影響があるようであれば、その対策のための魚道設置等について、ご提案をいただければ検討して参りたい」とあります。影響が大きいのは間違いなく、建設の目的を達しつつ自然への影響を小さくするように谷止工を改修できると考えます。
 ぜひ下記のように県から東信森林管理署に働きかけて改修してもらいたいと思います。改修方法やその効果を知る環境調査は、今後必要になるであろう他渓流の既設砂防ダム等の改修の参考になると思います。霧久保沢にできた唯一の堰堤なので効果を調べるにも適当と思います。



1 東信森林管理署(および中部森林管理局)に働きかけて、霧久保沢谷止工の改修を協議する場(以下、仮に「改修検討委員会」とする)を設置されたい。

2 「改修検討委員会」には長野県の環境保全担当者、東信森林管理署の担当者、治山(砂防)と生態系の研究者、関心を持つ市民団体等で構成されたい。長野県の環境保全担当者および研究者として長野県環境保全研究所員等が適当と考えています。

3 「改修検討委員会」では、改修方法とその効果の測定方法を決めて実施されたい。

 回答は3月15日までに、文書と電子ファイル(Wordなど)でもいただきたいと思います。よろしくお願いします。
以上
あて先は 長野県勤労者山岳連盟 自然保護委員長:
〒388-8004 長野市篠ノ井会732-1  三井明高 (090-1615-7328)
fax 026-293-2273       e-mail  xxxxxxxx

 2005年3月3日
中部森林管理局長      関 厚  様
東信森林管理署長      瀧川正一 様

                長野県自然保護連盟     会長    町田 和信
               長野県勤労者山岳連盟     会長    清水 馨 
     渓流保護ネットワーク「砂防ダムを考える」    代表    田口 康夫

国有林内の谷止工の改修にむけての要望書


 
 南佐久郡佐久町霧久保沢に建設中の谷止工についていろいろ対応していただきありがとうございます。2004年12月9日付で提出した「南佐久郡佐久町霧久保沢の谷止工に関する要望書」に対し、東信森林管理署から12月28日付で回答(「南佐久郡佐久町霧久保沢の谷止工に関する要望書について」)をいただきました。その中で(A−4−@)「魚の遡上に影響があるようであれば、その対策のための魚道設置等について、ご提案をいただければ検討して参りたい」との積極的な対応をいただきました。われわれは、現谷止工が魚の遡上や景観に影響を及ぼす事は間違いないとみており、また建設の主目的を達しつつ自然への影響を小さくするように谷止工を改修できると考えています。しかし影響を客観的に評価し、効果的な改修方法を詳細に提案することは我々には困難です。
 そこで専門家を中心として改修を検討する場を作っていただくよう、以下のようにお願いいたします。なおこの件については、「信州・長野県における土砂災害対策のあり方」を策定した長野県にも同様に働きかけています(3月15日回答予定)。現谷止工は、おだやかな渓流美を持つ霧久保沢にできた唯一の堰堤であり、今回の改修が景観や川環境回復に及ぼす影響はとても大きいものです。委員会設置や環境調査実施などは、これからの源流部での川環境と森林管理とをつなぐ活動として重要な事例となるものと思います。



1 長野県と協議の上、霧久保沢谷止工の改修を検討する場(以下、仮に「改修検討委員会」とする)を設置されたい。

2 「改修検討委員会」には東信森林管理署・中部森林管理局の担当者、長野県の環境保全担当者、治山(砂防)と生態系の研究者、関心を持つ市民団体等で構成されたい。

3 「改修検討委員会」では、改修方法とその効果の測定方法を決めて実施されたい。

 回答は3月15日までに、文書と電子ファイル(Wordなど)でもいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
以上
あて先は 長野県勤労者山岳連盟 自然保護委員長:
〒388-8004 長野市篠ノ井会732-1  三井明高 (090-1615-7328)
fax 026-293-2273  e-mail  xxxxxxx