産業技術総合研究所の地質調査総合センターの依頼で、雪山踏破技術の研修を妙高山麓で行った。ヤブで無雪期に行けない場所を、残雪期に調査しようというものだ。
歩き方を中心に、ロープ使用と滑落停止も練習した。 |
訓練概略(進行順)
3/31 ツボ足、アイゼン、わかんでの歩行練習。ロープ・アッセンダーを用いての登攀。懸垂下降。深雪でラッセル訓練ができたが、滑落の緊迫感がなかった。
テント設営。夜、机上学習。 |
4/1 午前 固めの斜面でツボ足・アイゼンの歩行練習。滑落停止。雪庇状の乗り越し。
午後 雪解けし始めた山を実際にパーティで歩く。 |
技術別解説 |
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ツボ足歩行(アイゼン・わかんなし) 直登 斜度、雪の固さに応じて、並行から(逆)ハの字、フラットフッティング・水平・蹴り込み 下降 かかとを踏み込む、固くて急なときはかかとを突き刺すように(キックステップ) 斜め 山足を進行方向に、谷足はやや開き、水平ぐらい
トラバース 斜めと同様だが、急なら斜面に対面してつま先をけりこんで横ばい |
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アイゼン歩行 装着は早めに。日当たり・風当たりなどで予想しないクラストあり。 怖いと思ってから装着するのは危険。
anti-balling plateか、ピッケルでダンゴ落とし(ひんぱんに、できれば歩きながら)
つま先の下と前、かかとに爪があるものがよい
ツボ足と同様だが、アイゼンを引っ掛けないことがとても重要 スパッツに、カッパに、岩や木に そのため、左右の足幅を肩幅ぐらいに広げ、つま先を前に向けて並行にするくせをつけるとよい ツボ足でもこのくせで歩くとよい 斜め歩きやトラバースで、足を交差させるときにひっかけやすいので注意
急なら足を交差させない方がよい 傾斜(前後、左右)がゆるいときはフラットフッティング
きつくなったら、ハの字や水平、蹴り込みにより、つま先や側面(内側か外側)だけを刺す |
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トラバースで足を交差させるとアイゼンをひっかけやすいので、急なときは山側を向いて横ばいで進むとよい |
わかん 新雪でなくても、雨や高温で雪がやわらかくなって沈むときに有効。 5月以降は要らないことが多い。 アイゼン装着のままわかんを着けられる。逆も。(モデルによる)
残雪期なら小さいタイプでも可。
ゆるやかなルートならスキーが一番早い。 |
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パーティでラッセルするときは、トップが一歩横にずれて交代する |
ピッケル 杖代わりのバランス、落ちないよう支持、転倒(滑落)時の停止
持ち方
基本ポジション(ピックを後)
ダガーポジション (ピックを前)
ハンマー的に振る ダブルアックス
長さ
杖:80cmぐらい、軽量 中間的:60cmぐらい
急な登攀:50cm |
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雪庇状をダブルアックスで乗り越し。この日は雪が軟らかく、ピックが効かないのでシャフトを刺した。 |
ストック 傾斜のゆるい、あるいは雪の軟らかい道のりが長い場合に有効 1本でもよい。なくてもよい。 |
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縮むタイプでないと、ヤブや登攀で苦労する |
滑落停止
転倒したら1秒でも早く止めること。方法は問わない。 ピッケルのピックでもシュピッツェ(スパイク)でもブレードでも刺す。 手や頭をこすりつける。スピードが出ないうちはアイゼンを刺すのもよい。 スピードが出てからは
ピッケルのピックを雪に胸で押し込む(とても痛い)のが基本だが、止めるのは難しい。 が、斜面のぐあいで止まる可能性もあるので、 ピック以外の手足頭も使ってあきらめずにブレーキをかける。
アイゼンを雪に刺すと怪我するので、アイゼンを着けていたら足裏は上げておく |
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ロープ使用
岩や沢と同様。登りや下りの確保、懸垂下降に使う。 アッセンダーが有効だ。 支点は木、枝、岩のほか、 枝(束ねて)や土嚢袋(雪を詰める)にスリングをかませて埋める、 ピッケルを刺すのもある程度使える(座り込む、スタンディングアックスなど) 霧で視界がないときの雪庇踏み抜きなどに備えて確保することもある |
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残雪期の注意点 残雪期は全層雪崩に注意 新雪が降った後は表層スラブ雪崩、暖かいときはどろどろのなだれもある 雪崩れなくても亀裂(クレバス)に落ちる 木のまわりの穴や、かん木上の薄い雪、枝の撥ね 雪庇崩壊 沢の踏み抜き 雪のあるところとないところが混じっているところは、安全性とヤブのうるささなどを 考慮してルートを考える |
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