産業技術総合研究所の地質調査総合センターの依頼で沢登り研修中級(応用編)も3年目。過去2年は登攀・雪渓とも容易だったため、今年は新潟・水無川オツルミズ沢に入るが、登攀に手間取り戻って北沢(本流)に変更。本流も変則的な雪渓と登攀に苦しみ、長いヤブこぎの末無事(?)撤退。数は少ないがその場に適した判断を要求されて、よい訓練となった。 |
2005年8月3日(水) |
オツルミズ沢カグラ滝上まで往復 |
4日(木)-6日(土) |
水無川本流関門の滝上から右岸尾根を登り、途中から引き返す |
テーマごとに風景を見ることにする |
雪渓(1)通過 |
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崩壊したブロックが川を埋めている場合 |
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崩れたブロックをたどって上を歩くのが簡単だ。ただし1mぐらいのブロックでも崩れて体を挟まれたら脱出は困難だろう |
ブリッジが崩れていない場合、下をくぐるのが早いが、出口の光が見えなかったり(ここでは霧があって見通せなかった)、前後の地形から難しい泳ぎや登攀がありそうなときは危険性が高い |
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このようなときはブリッジの上を歩くことが多く、長い雪渓では楽でもある
山腹付近が厚く安定している場合が多いので端を歩く |
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厚みが不安なとき、特に支流が入るところは薄くなりやすいので、ショックを与えないよう一人ずつすみやかに通る |
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傾斜があると滑るが、スプーンカットとたまったごみのフリクションを利用すれば案外滑らない。心配なときは雪山同様にバイルを使用する |
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山腹に雪渓が密着していればそのあたりは安心だ |
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こんなラントクルフトはすぐには崩れないが、すき間を歩いて足を滑らせると抜け出すのは大変だ |
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こんな薄いでっぱりには長居したくないし、衝撃を与えてはいけない |
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進行方向にクレバスが横切るのも考えどころだが、直接上り下りするか、山腹に取り付いて雪渓に戻る(次項参照) |
ブリッジにならず「片持ち」で安定した残雪の下をくぐる
一人は泳ぎ、一人はへつっている |
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雪渓(2)取り付き |
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山腹を歩いて雪渓に乗れればよいのだが、登れないときも多い |
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御月山沢出合は手前のルンゼを登り、 |
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ヤブをこいでトラバースし、 |
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懸垂下降で雪渓に乗る |
山腹から雪渓への段差が身長ほどあり、ラントクルフトに飲み込まれそう。
雪渓末端をバイルで削ってステップを切り、ダブルアックスで強引に登る |
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雪渓(3)下降 |
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歩いて降りられればよいのだが、ずるずるの草付は油断できない。ダブルアックスは有効 |
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念のためカラ身で下るため、ザックを肩がらみで下ろす |
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段差が小さければジャンプはお手軽だが着地点が安定しているかどうかが問題だ |
懸垂下降はおっかないが地形によってはスピーディだったり唯一の手段だったりする |
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枝にスリングをタイオフでつないで雪に埋める。スリングが浮かないよう、T字に溝を掘ってスリングを出し、これも先端以外は埋める
このとき掘る位置とスリングの長さは悩ましい |
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通常雪渓の端は薄い(あるいは見えなくてわからない)ので、崩落・破壊を防ぐ意味では端から離れて支点を作るのがよい(技術本にはなるべく離すとあるのを見る)
しかしメインロープが雪渓に触れる(食い込む)のが長いほど、回収が困難になる可能性が高い
スリングを長くして雪渓の端まで伸ばせばよいが、スリングがもったいないし、下降開始が難しい(端から落ちる)。 |
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そのあたりを考慮して支点は端からほどほど遠く(たとえば3m)、スリングはたすき2倍長のを使用などその場で判断する
右のなんか垂直に厚く切れているので端から1mでやってもよさそうだが、上にいるとわからない |
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雪渓(4)判断 |
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上の写真の雪渓の下は切れ込んだゴルジュで、下降すると滝の下の釜に入る。流れが巻いているし深そうで、危険なので下降途中で中止、登り返した。 |
北沢右岸尾根を巻き登って源流方面を望む。この雪渓はつながっているので、乗ってしまえば楽にツメられそうだ。しかし、 |
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手前からは崩れた雪渓を越え、滝を越え、上の雪渓に取り付かねばならぬ。いずれもきびしそうで、引き返せなくなることもありうる。直接山腹から雪渓に乗るには大きく巻かねばならない。この時点で体力や日程を考え、尾根を戻ることにした。 |
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関門の滝40mは中ほどまで雪渓が迫り、下に下りることも直接取り付くこともできない。
岩場には土や枯れ枝などが乗っていて、スタンス・ホールドが遠目にはっきりせず(実際、今期初らしく、掃除してホールドを掘り出しながら登った)カラ身で行きたい。しかも3人パーティ。これは悩んだ末、 |
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雪に埋めた支点からリード(トップ)が確保されてぶら下がって岩に取り付き、そのまま登る。セカンドは上から確保されつつ別のロープで雪支点から懸垂下降して岩に取り付き、上のロープをフィックスしてアッセンダーで登る。 |
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ラストも同様だが、トップのザックをロープ末端につなぎ、岩場を少し登ってから懸垂下降のロープを回収する。ザックを末端につないでぶら下げるとテンションがかかるため、ロープ径が細くなってプルージックが効きにくくなり、また登るルートを変えにくくて苦労した。 |
雪渓(5)生活技術 |
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雪渓からは本流はもちろん支流にも近づけないことが多く、水は雪を溶かして作る |
雪渓のきれいそうなところから切り出し、さらに汚れを掃除してなべに入れる。それでも汚いので、気にする向きはリードキッチンペーパーなどで濾すとだいぶきれいになる。
塊のままオンザロックや水割りにもよろしいのは言うまでもない。 |
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ぷかぷか流れてきたものはきれいなことが多い |
雪渓の上に落ちてきた木にヒラタケがついていた |
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雪渓付近は8月でも山菜が採れる |
焚き火もできる
その他幕営なども雪山と同様にできる |
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登攀 |
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オツルミズ出合の滝。右岸を登るのだが、水量が多いと中央寄りのリッジが使えず、つるつるのフェースが濡れていて怖い |
その上の滝も取り付きの淵が深く、カラ身が楽だ。1/2システムでザック引き上げ |
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カグラ滝は左岸を登るが、水量が多いと下部右岸から渡るのに注意。このときは写真中央の釜まで登って渡った |
8.1mmx50mx2本。3人パーティ、長い懸垂下降の可能性あり、軽量化したいため。ここは墜落に備えたいが支点が少ないのでツインロープ(2本まとめて)とし、フォロー二人を1本ずつのロープで引き上げた。 |
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3人だとロープをフィックスしてアッセンダー(プルージックや器具使用)を使用する場面もある |
懸垂下降 |
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カグラ滝下のCSは直登が難しいので巻いて懸垂下降した方が早い |
カグラ滝からの下降 |
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オツルミズ出合は残置ハーケン1本での懸垂下降 |
遠くに飛ばしたいときは、ロープをまとめながら末端側と支点側の2つに分け、 |
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支点側から投げる。次に末端側を投げる。
1回の量が少ないので絡みにくく、末端側は初めに投げた支点側まで抵抗がなく、遠くまで飛ぶ。 |
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泳ぎ・飛び込み |
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カグラ滝下のCSを下るには懸垂下降から泳ぐ |
その下の小滝はへつれるが難しい
飛び込んだ方が早い |
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まともに泳いでもよいが、側壁のホールドやフリクションを使うと楽だ(ヤツメ)
暗峡にて |
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浅くなければへつって飛び込むのも有効だ(これは下りの場面) |
巻ける場面でも晴れた日は泳ぐのが気持ちいい |
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落石直撃やらヤブこぎ6時間やらいろいろありました。ハチに刺され、アブに刺され、蚊に刺され、草に刺され、、、他にもネ! |