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渓流保護ネットワーク

04-05における堰堤工事への要望などの経緯
2008 4/15 茂来山霧久保沢堰堤:満砂後の対応

<まとめ:堰堤の満砂後の対応について東信森林管理署に意見を求められ、「本年生態系の調査をした後、来年堰堤上面を切り下げる」ことを要望した>

以下報告
 「霧久保沢堰堤(第1号谷止)が満砂したので、今後の対応について意見を聴きたい」と、東信森林管理署長の大西さんから電話があった。
 この堰堤は04年の工事中に3環境団体(渓流保護ネットワーク、労山長野県連、長野県自然保護連盟)が疑問を感じて質問・要望したが、そのやりとりの間に予定通り完成したもの。県にも訴えたが効果はなかった。このあたりの経緯は別ページにまとめてあります。しかし完成後ながら堰堤の生態系(イワナ、両生類)への影響を、県環境保全研究所が調べていて、その後の堰堤の変化とともに生態系への影響がどう変わるかを知るための基礎データとなっている。当時は水抜き穴の中を川が流れており、イワナが下流から上流へ移動できたことが確認されている。

 そこで現地を視察し、意見を交換した。
4/15/2008 東信森林管理署:大西署長、宮下治山課長
渓流保護ネットワーク:田口、藤原、三井(労山)

予防治山と署長
 そもそもこの治山ダムは、土砂が流出して災害を起こす(直下の橋、または下流全般)ことや山が崩壊してゆく(上流のこと)ことを予防する目的で造ったという。満砂して大きな役目は果たしたので、次のアクションを考えるのに(環境・生態系を重視した)市民の意見を聴きたいとのことのようだ。治山の考え方には納得できないところも多々あるが、市民の意見を取り入れた山作りをしようとする大西署長の積極的な姿勢が感じられる。ちなみに04年の工事の後で署長、治山課長とも替わっている。

'07台風9号
 満砂したのは、昨年の台風9号のときの大雨によるのだそうだ。近い観測点としては、佐久で158mm、北相木で258mmとのこと。ここは山に近いのでそれよりも多かったかもしれない。何年確率かはわからないが、毎年あるわけではないような大雨であったようだ。抜井川本流に合流する手前は崩壊が進み、新たな護岸工事が施されていた。そこから約2km上流の堰堤までの区間は(車から見た感じ)目だった崩壊はないようだった。

堰堤の満砂の様子
 工事中は堰堤上側は高さ2mほど露出し、水抜き穴から水が流れ出していた。それが今回は埋まっていて、水は堰堤の上から流れ落ちていた。イワナにしてみれば、せまい水抜き穴を通して遡れていたのが、2m近い段差を越えないといけなくなり、遡上の大きな障壁になっているのは間違いない。
 たまった土砂量に関しては、堰堤の上流側4mほどで既に川底の上昇は少なく(ならすと20cmあるか?)、10数m上流の川底の岩盤は工事前と同様に出ていてもはや堆積はない。我々としては、量が少なくて災害を起こすほどには見えないのだが、森林管理署はこの土砂が一気に流れたら、直下の橋や下流に災害を起こした可能性があり、それを止めたことで堰堤は役に立ったと主張する。ここは判断が分かれた。
2004年11月 2008年4月
上流側から下流の橋の方を見たところ。
堰堤の上流側の、高さ2m、奥行き3mほどの部分が埋まったのがわかる。これにより水抜き穴は詰まり、堰堤上面から水が流れ出すようになった。
下流側から上流側左岸を見たところ。
堰堤から4mほど上流(左岸)に崩壊地があり、石積みで補強してある。このあたりは04年にでこぼこだったのが08年で平らになっているが、土砂が大量に堆積したというわけではない。

左岸石積みのようす(堰堤の上と下)
 上の写真でもわかるように、堰堤上流の石積みは安定していて、台風のときにも大きな変化はなかったようだ。
 堰堤下流(20mほど)の橋との間は左岸を守るように石を並べてあり、これも安定しているようであった。橋げた付近もかん木・草が生えており、水流は当たっても崩壊するほどではなかったようだ。
 これをもって、森林管理署としては堰堤が役に立ったとし、我々は堰堤がなくても石積みだけで十分だったと推測し、これも判断が分かれた。
2004年11月 2008年4月
堰堤上の石積み→
橋から堰堤を見たところ→

今後どうするか
 従来は満砂後はそのままにする、新たに治山ダムを作る、浚渫するぐらいとのこと。そのままというのは予防治山として一部問題があるだろう(土砂が流れ出すのを食い止めて災害を防いだとするなら)。我々としては、新設は考えられないし、浚渫も手間と金がかかり続けて、その間イワナが分断されたりされなかったりする。砂防ダム(国交省や県)なら「土砂調節」の点からスリットが当然の案として出てくるところだ。
 そこでスリット化というか堰堤の切り下げを要求した。森林管理署としてはイワナの遡上を妨げないという点で理解できても、土砂の移動については考え方が違うので、一気に段差をなくすのでなく、段階的に切り下げることも含めて検討したいとのことであった。
 せっかくの機会なので、まず'05のようなイワナ・両生類の調査を行ったのちに工事をすることが望ましいと考えられる。その間に工事についての具体的な検討をする方向で動くようであった。

 ぜひ官民協同して、よりよい山や林や川にしていきたいものであり、その大きな一歩になればと願う。