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渓流保護ネットワーク
2004 11/19 小野沢・乳川 砂防ダム説明会

建設中(一部オープン)の国営アルプスあずみの公園を流れる烏川と乳川に砂防ダムが建設されている。長野県の「脱砂防ダム宣言」後、烏川の支流小野沢の砂防ダムは建設休止、乳川は変更なし。地元で以前から問題を指摘してきた及川さんの要求で砂防ダムに関する説明会(案内を資料1に示した)が開かれたのでそのようすと考察を報告する。

1 小野沢
2003竣工 小野沢1号砂防堰堤
及川さんらの反対にもかかわらず昨年(2003)作った1号砂防堰堤(高さ7m 長さ47m)のすぐ上流にそれより大きな2号砂防堰堤(高さ13m 長さ99m)の建設を予定していた。しかし長野県は今年(2004)4月に「脱砂防ダム宣言」を発表した。それを5月に発見した(!)市民団体はすぐに2号の建設中止を訴えた(資料2)。2ヵ月後には県から建設休止の回答があった。県の画期的な方針発表、それに基づく市民団体の要求、そして県のすばやい休止決定というすばらしい事例だ。
豊科建設事務所(県)が説明してくれた
計画していたものを休止するにあたって、「宣言」のとおり、ハードからソフトに転換した。つまりこの砂防ダムの下流は本流の烏川に合流する前に烏川沿いの県道(以下単に県道と記す)と県営公園があってそこに水があふれる可能性がある(実際1999年にあふれた。土石流ではない)。この県道は小野沢を横切ったすぐ上に「ほりでーゆ」という入浴・宿泊施設があり、あとは発電所と登山アプローチに使われるぐらいで、日常生活で通行する箇所ではない。公園も大雨の日に利用する人はまれだろう。そこで、県は大雨で水があふれたり土石流の可能性がある場合は電光掲示板と放送で注意するという「ソフト」対応にしたのだ。

まあ砂防ダム建設休止というすばらしい結果にただ拍手しておしまいにしたいのだが、景観を破壊しただけでなく、貧しい長野県がすでに何億と出費しており(後述)、そもそも砂防ダムはいらなかったのではないかという点を考えねばなるまい。大水なり土石流の被害を受けそうなのは 1)小野沢下部の県道と県営公園、2)烏川下流の国営アルプスあずみの公園だ。
1)県道と県営公園
まず県道だが、小野沢をすなおに橋で渡ればいいものを、妙に川が屈曲して県道が水をかぶりやすくなっている。建設事務所の方も事情を知らないとのことで、用地買収の都合でこうなることもあると言っていた(???)。まさしくこの地点で水が県道に上がり、さらに公園に流れ込むのだろう。まわりを見てもここに橋があるのが自然と思われ、わざわざ被災しやすいように改変した感じがする。ここに橋があれば県道と公園が水をかぶる危険性は減り、砂防ダムを急いで作る必要はなかったのではないか。
小野沢が向こうから流れてきて、手前の県道にぶつかり、写真の左手に曲がって流れ、

50mほど県道沿いに流れてから橋で県道をくぐって公園に流れ、本流の烏川に合流する

そして公園であるが、このように水をかぶる場所に新たに作るのが大間違い。小野沢は現在土石流危険渓流に指定されている(砂防ダムを作った根拠である)が、その土石流がいちばん来そうなところに作ったのだ。川原のグラウンド的に水が流れてもいいよーという利用ならいいのだが、トイレ、駐車場、休憩場所、ビオトープなどが作られている!砂防ダム要不要を考える前に、まず危険区域に建物など作ってはいけない、というのが重要なのだが、県がその大間違いを犯している。
 つまり公園立地にせよ橋の位置にせよ、県が間違いを犯し、それをカバーするために砂防ダムを計画し作ったということだ。プロである彼らにこんなことがわからなかったわけはなく、つまり故意にやった可能性が高い。故意というのは言い過ぎか。県道、公園、砂防ダムとそれぞれの担当者は全体的なコストや自然破壊など考えずに仕事をしたのかもしれない。総合的にチェックする機能をどこかに持たせねば無駄遣いしながら自然を壊し続ける。土木部じゃダメか。知事直属部門とか、市民団体とか。
2)国営公園
小野沢が烏川に合流し、数百m狭い谷を流れてからばっと平野部に出る。その扇状地の最上部は土石流の危険性が高いはずで、1992年の地形図ではばっと開けて500mぐらいは森林と桑畑となっている。そこに国営アルプスあずみの公園ができた。今年(2004)オープンした堀金・穂高地区である。ただ、烏川流域は比較的土砂が出にくいのだそうで、またすでに発電用のダムや砂防ダムがあるためか、土石流危険地域とはなっていない。しかしこの国営公園の存在が小野沢砂防ダム計画を急がせたのではないか。建設事務所は否定しているが、1)でふれたような利用度の低い県道や県営公園を守るためだけでは小野沢の砂防ダムの優先度は低いはずで、さらに下流の国営公園のことを加味して決定されたのではと疑われる。現在危険地区でないとはいえ、やはり扇状地のトップに新たにお金をかけた公園を作るのが間違いだ。

事業費についていろいろ聞くことができた。全体で9億8千万円のうち、すでに6億5千万円は使用済み。大きな2号堰堤をやめたわけだが、堰堤工事そのものよりも用地買収や林道の付け替えの方が金がかかるのだ。

2 乳川
こちらは従来からある砂防ダム群にまたひとつ加えて整備率47%(結構高い)にするもの。元は3つの床固め工+クローズ堰堤だったが、スリット3本の堰堤のみとなった。こちらの方が土砂調節量がずっと多い。それにしても新たな砂防ダムを今ここに作るのは、下流で工事中の国営アルプスあずみの公園の災害の可能性を減らすためと思われるが、大町建設事務所は否定した。こちらは烏川よりはるかに大規模な扇状地で、実際に2mぐらいの転石が川にたくさんあって土石流の危険が感じられる。地質的に崩壊しやすい流域らしい。砂防ダムはもう作ってしまっているので要不要を論じるのはやめにして、とにかく国営公園の立地が悪い。土砂災害の可能性が高い場所に新たな施設を作るのが最も悪い。それを国土交通省はわかっているはずなのに。こちらは土石流危険地域の指定をまだやっていないというが、ひょっとしてこのあたりの関係かと勘ぐってしまう。つまり公園予定地は明らかに危険地域なのだが、そう指定すると公園の立地が間違いであることを明示してしまい、公園計画を変更せざるをえない。砂防ダムの完成を待ち、少しでも危険性を減らしてなんとか公園の主要部分を危険地区指定から外すのではないか。
乳川砂防堰堤 施工中
また林道を付け替えたのだが、これが3億2200万円。ところがこれによって利用できる森林が狭いのだ。堰堤工事部門では当然のようにお金に糸目もつけず(?)付け替えをやるのだがあまりにも無駄使い。やはり建設部門でないチェック部門が必要だ。
小野沢川・乳川 砂防ダム説明会 まとめオリジナル
2004 Nov.19
10:00-12:00 小野沢川 13:30-15:30 乳川

1 小野沢川
説明者:長野県豊科建設事務所
日程:県営烏川緑地小野沢出合トイレ集合、小野沢1号砂防堰堤で砂防ダムについて説明、2号予定地にて買収済み用地について説明、1号下の仮付け替え道路にて林道付け替え予定について説明

結論:
 1号2号と2つセットで建設する予定だったが、1号建設後に県の新方針(以下、脱砂防ダム宣言 と略す)が出て、市民団体からの建設中止の訴えを受けて2号の建設を休止した。今年10月の大雨でも問題なし。すぐに休止できたのは、土砂災害が起きたときに被災するのが県道と県営公園であって(しかも大雨時の利用者は少なそう)、危険通知によって対処できるから。
 しかし堰堤工事そのものよりも用地買収、林道付け替え(未着工部分もある)が高額であり、2号を中止しても多額の出費をしてしまっている。そもそも不要な2号を計画したことが問題だ。1号だって下流の県道と交差する点を工夫すればなくてもよかったかも。

説明詳細メモ:一部三井のコメントも入っている

* 砂防計画及び現状について
 烏川流域は比較的土砂が安定しているが、通常通り水系砂防として計画。整備率は烏川で38%、小野沢は32%が1号完成で38%。低くはない整備率なのに作ったのは、小野沢出合の県営公園と県道を守るため、そして言明はなかったがさらに下流の氾濫原にある国営アルプスあずみの公園(堀金・穂高地区)のためではないか。なお既設砂防ダムのうち、小野沢1号(今回作ったもの、スリット型)・淺川(1985、一ノ沢)・大平原(1991、本沢)は堆砂率0%、小野沢の上流にある2基は100%。

* 「脱砂防ダム宣言」および2号休止について
「脱砂防ダム宣言」を見て、八面大王などの市民団体から「小野沢第2号砂防ダム建設中止を求める要望書」(添付資料)が5/20に出され、県が7/20回答で「建設休止」した。今回配布資料では「公園、道路及び砂防管理の連携強化により、土砂流の発生が予想される場合には、土石流災害危険区域等への立ち入りを規制する等、これまでのハード対策からソフト対策による土砂災害対策への転換を図るため。」となっている。危険と思われるのは小野沢下流の県営公園と県道だけなので県が迅速に判断・決定できた。すでに危険を知らせる電光掲示板を8箇所設置し、園内放送でも知らせることになった。
なお、小野沢が県道にぶつかっていったん県道沿いに流れた後、県道の橋の下を通って烏川に合流するため、県道の被災が予想される。これを小野沢がいきなり橋で県道をくぐれば小規模の土砂流では被災しないものと考えられる。今回説明者は橋のズレの経緯を知らないようだったが、用地買収の都合でそういうこともあるのだそうで、ここもそうではないかと言っていた。ちなみに橋が合理的な位置から50mほどずれている感じだが、このあたりは沢沿いで現在県道と公園以外に使われておらず、用地買収に抵抗するだけの大きな理由が見当たらない。橋の位置が不適切なために県道が被災する可能性が高まり、ひいては砂防ダムの要求が高まったと思われる。これでは県がわざわざ被害や余分な工事を作り出していると言わざるを得ない。これは工事をする部門である建設事務所に訴えても多分だめで、その上から見る部門に訴えねばならないのかと思った。
「脱砂防ダム宣言」から規模縮小・変更したものに、阿知端下砂防ダム(スリットを入れた)、豊平砂防ダムがあるとのこと。

* その他費用などの情報
 全体事業費9億8千万円(国庫補助金と県の一般財源が1:1)のうち、67%は済み。残り3億3700万円を縮減。
 おおむね2003年度までの事業(5億4300万円)は1号堰堤(3億700万円)と付け替え道路(2億3600万円)、2004年度の事業はその上の付け替え道路(1億1000万円)。数字は用地買収を含む。用地買収単価は1000円から1500円/m3。2財産区と1村に対し、「当方伐採」契約。すなわち土地を買うが、立木を伐る場合は県が伐採して元地主に引き取る権利があるというもの。
 堰堤そのものの工事費は1号(H7m x L47m)が1.1億円、2号(H13m x L99m)が2.4億円(未着工)。道路工事そのものの単価はおおむね50万円/m。
 1号下の旧林道から上の付け替え道路に行く仮設道はカーブがきつく、4t車通過は難しい。建設事務所としては従来どおり林道を使用できるように、つまり4t車や高性能林業作業車(4tよりはるかにでかい)も通れるようにしたいので、そのためには道を付け替えて橋をかけることになる。今後の林業施業が水土保全を主とするならチェーンソー・刈払い機だけでよいのだが、奥に県以外の森林所有者がいると仕方ないのか。
 
2 乳川

説明者:長野県大町建設事務所
日程:山麓線と公園線交差点に集合、施工中の乳川砂防堰堤にて砂防ダム、付け替え道路について説明

結論:
 土石流は過去起きているようだが、氾濫のひどそうな区域は森林となっていて人は住んでいない。その危険区域に国営アルプスあずみの公園を建設中であり、乳川堰堤を作ったのもそのせいと思われる(建設事務所はノーコメント)。これは公園立地が問題。また橋を含む付け替え林道に多大な費用(3億2200万円)をかけているが、それによって利用できる森林は狭く、無駄を感じる。

説明詳細メモ:一部三井のコメントも入っている

* 砂防計画について
 乳川流域は山腹崩壊が激しいらしく、公園工事場所あたりまで2mぐらいの大きな転石が見られる。それで今回の砂防堰堤を作って整備率47%。高い。しかし堰堤を作る前は氾濫のひどそうな場所は人は住んでおらず、大体山麓線より下に集落がある。ということは、公園を作るから従来の砂防施設で足りずに作ったということだろう。これは公園立地が問題だ。
 今後はお金もなく、砂防堰堤建設の具体計画はないが、乳川堰堤のすぐ上の白沢堰堤の透過型化を検討する。
また林道付け替えと橋に3億2200万円も使っているが、これによって利用を続けられるのは乳川と明沢にはさまれた狭い森林であり、あまりにも無駄だ。建設事務所は決まりどおり砂防堰堤によって使えなくなった林道を使えるようにするのだが、別の部門で全体としての無駄をチェックする機能を持たせたい。
* その他費用などの情報
 全体事業費14億円(国庫補助金と県の一般財源が1:1)。2003年度までの事業(11億3000万円)は堰堤(8億1100万円)と付け替え道路(3億2200万円 うち橋は1億7300万円)。

資料1 及川さんからの案内メール  
 及川稜乙@国営アルプスあづみの公園・友の会です。

台風23号災害への対処を優先して延期した砂防ダム計画現地説明会を以下のとおりにおこないます。
今年のように台風や地震の災害が多発すると、あらためて、これまでの災害対策の有効性を検証しなおすことの必要性を感じます。大規模な開発計画に関連する「災害防止」工事に巨費が投じられてきた一方で、身近な小さな危険箇所の手当てが予算がない(補助金がつかない)からといってなおざりにされてきたことはないでしょうか?地域全体の総合的防災計画を作成するうえで、地域住民の多様な視点が充分に生かされてきたでしょうか?

今回(変更後)の現地説明会は、午前が小野沢砂防ダム、午後が乳川砂防ダムとなります。

[転送可]
     *****

> ●乳川(ちがわ)・小野沢 砂防ダム現地説明会<公開>
>
> 大町市常盤地籍の乳川に、長野県はこれまで数多くの砂防ダムを建設
> してきました。そしてさらに数基の砂防ダムの建設を予定していましたが、
> 現在中止しています。
>  なぜ乳川に砂防ダムが造られたのか、なぜ中止になったのか。そこには
> 現在建設中の国営アルプスあづみの公園が大きく関与しています。国営
> アルプスあづみの公園は、計画地内の大きな部分を乳川が占有しており、
> パンフレット等によれば、河川を利用する公園施設の青写真さえ描かれて
> いるようです。当初年間200万人を呼び込むと謳った利用計画と防災計画
> の整合性を検討するために、県の砂防計画について担当者に説明してもら
> います。
>
> また堀金村の烏川の支流小野沢川についても同様で、下流に県営公園
> や国営公園があります。2基の砂防ダムが計画されていましたが、1基だけ
> 完成し、2基目は休止になりました。しかし取り付け道路用の土地はすでに
> 県は買収済みです。その跡地をどうするのか、やはり県の担当者が説明して
> くれます。

[日時] 2004年11月19日(金)

   予備日  11月21日(日)

[場所] 南安曇郡堀金村小野沢川・大町市乳川(ちがわ)
[主催] 長野県土木部豊科建設事務所・大町建設事務所
[メモ] 少しくらいの雨では開催。    
[持ち物] 野外を歩ける服装と靴、昼食等
[連絡先] tel   0261-23-2975 (及川稜乙)
      e-mail  oikawary@janis.or.jp
 
[スケジュール]

★ 小野沢
10:00 集合場所 南安曇郡堀金村須砂渡(県営烏川渓谷緑地の小野沢トイレ前、
             「ほりでー湯」の下)
10:30〜12:00  現地説明 南安曇郡堀金村烏川 小野沢川
  12:00〜13:30  移動・昼食・休憩

★ 乳川
13:30 集合場所 大町市常盤西山(山麓線とあづみの公園大町線との交叉点)
             [註] あづみの公園大町線:
             宮本橋〜JR大糸線安曇沓掛駅南踏切〜国営公園南口
14:00〜15:30  現地説明 大町市常盤 乳川谷 
15:30 解散
       *****
[補足]
○ 小野沢川(南安曇郡堀金村、烏川の支流)
  国補都市対策砂防事業
  計画機関:長野県土木部豊科建設事務所

 小野沢に計画していた砂防ダム2基の内、既に手がけた1基はそのままにして、残りの計画は事実上中止になりました。が、2基建設を前提にして県道の付け替え用に買収してしまった長さ約1kmの林地(半分は道路として建設済み)を今後どう管理するかという問題が残りました。
既支出 約5億円。

○ 乳川谷(大町市常盤)
  国補都市対策砂防事業
  計画機関:長野県土木部大町建設事務所

 国営アルプスあづみの公園計画において長野県が担当していた砂防ダム群建設計画の未着工分中止方針により、そもそも同公園計画が孕んでいた矛盾、つまり誘客施設建設と防災計画が本末転倒の関係にあることが誰の目にも明らかになってきている。
既支出 約10億円。

資料2 小野沢第2号砂防ダム建設中止を求める要望書

 2004年5月20日

長野県知事       田中康夫 様 
長野県土木部長     島田忠明 様
長野県土木部砂防課長  原 義文 様
長野県豊科建設事務所長 森田剛弘 様 
小野沢第2号砂防ダム建設中止を求める要望書

現在、長野県は堀金村須砂渡に総額6億円をかけて小野沢砂防ダムを建設しています。第1号ダムと第2号ダムが計画され、第1号ダム(計画貯砂量4700u 計画河床勾配1/28.8 高さ7m 幅47m)は昨年度完成しました。そして今年度、第2号ダム(計画貯砂量50700u 計画河床勾配1/26.0 高さ13m 幅99m)の建設にとりかかろうとしています。このダムは長さ約100mにも及ぶ大きなダムです。
 砂防事業計画の概要(長野県豊科建設事務所)によると、「小野沢川は土石流危険渓流であり、下流の人々の生命と財産を守るための砂防事業」となっています。この計画に対して私たちは1999年11月に小野沢砂防ダム検討委員会に、計画を見直す要望書を提出しました。しかしその要望は受け入れられることなく、第1号ダムは建設されました。

 こうした中で、2004年4月長野県は「信州・長野県における土砂災害対策のありかた」を発表しました。ここには下記の基本方針が示されています。
1、「ハードになるべく頼らない」 
 土砂災害対策は、ハード施設を中心とした従来の考え方から脱却し、具体的には、
@ 危険地域にある人家、福祉施設等の安全な地域への移転促進、
A 移転が困難な住民に対する事前避難体制確立の支援、
B 土砂流出を抑制するための森林整備、を重点的に進めるものとする。
2、「ハードに頼る基本計画を見直す」 
 16年度当初時点で着工に至っていないハード施設(砂防堰堤、治山堰堤、地すべり防止施設、急傾斜地崩壊防止施設等)に関しては、上記の観点から再度見直しを行うこととする。複数の施設が計画されている継続事業についても、16年度以降着工分については同様とする。
3、「ハードに対する意識を変える」 
 災害危険区域にはハード施設という従来の発想を根底から変えるために、ハード整備に携わってきた各機関の職員が「移転促進コンシェルジュ」となり、危険地域とされる集落の各戸を分担して訪ね、地域の状況、災害の履歴、住民の要望をつぶさに聴き取って、移転の促進、対策の転換を図っていくこととする。

 以上の状況を踏まえて、小野沢第2号砂防ダム建設中止を求める要望書を提出します。

                    記 

1.計画の必要性について
@小野沢砂防ダムの目的は、「小野沢川は土石流危険渓流であるため、下流の人々の生命と財産を守ること」としています。しかし災害履歴をみると洪水がほとんどで、1999年6月に県営烏川渓谷緑地のビオトープが埋没したのも、土石流ではなく掃流土砂による被害でした。「土石流」が過去どの位の頻度で起きたのか示されていないのにもかかわらず、この事業が必要だとする根拠は曖昧です。また今後何年くらいの間に、特定部分からどのくらいの土砂が生産されるのかも明らかにしていません。さらに「土石流危険渓流」の指定根拠、手続き、理由も明確ではありません。

A「下流域にレジャー、保養施設があり県道を通る車は増加している。また国営公園、県営緑地などが、土石流発生時に多大な被害を受ける危険性がある」とされていますが、国土交通省自体が、災害時の危険性を前提に土地利用を制限するという考え方に方向転換したことは周知の事実です。危険性の高い場所に車も含めて利用度を高めるような公園整備を行い、そして危険だから砂防ダムが必要という考え方は本末転倒です。危険な場所は利用しない、させないのが基本であり、本来なら砂防ダムを造らなければならない危険な場所では公園は造るべきではありません。さらに、過去の災害を見ると、砂防ダムがあるところでも災害が起きており、砂防ダムを造っても安全とは言えません。小野沢ダムだけではなく周辺全体の開発計画も併せて議論していかなければ災害防止はできません。

2.スリットダムについて

基本方針では「スリットダムは魚の遡上降下活動を妨げず、通常の出水により移動している程度の土砂は流下させ、土石流発生時には土砂を蓄積させる調整機能が期待される」となっています。しかし流木や岩石などで塞がれてしまえば、生物は分断されてしまいます。小野沢の過去の災害を見ると、急激な増水による災害であり、スリットダムでは洪水は防げず、ダムとしての災害防止の効果は疑問です。それ以上にスリットダムそのものの効果がまだ実証されていません。

3.自然環境への配慮について
 魚道を作り環境に配慮するといいますが、魚道の効果はまだ実証されているとはいえません。またスリット型とはいえ大規模な土石流がきた場合ダムは埋設し、浚渫にも限界があります。さらに砂防ダムそのものが将来的には埋まることを前提としているため、長期的な視点から見れば環境へ配慮していることにはなりません。

4、費用について
 第1号ダムで約9500万円、第2号ダムも含めて総額6億円という巨額の税金の投入と、将来コンクリートの寿命による再建設は県の財政をさらに圧迫させることになります。それよりも将来的には土地利用規制を前提とした啓蒙活動や避難地図(ハザードマップ)作成などのソフト面で対策を考えるべきです。

5、砂防ダムに変わる代替案
@ 道路建設、樹木伐採など流域の土砂生産要因を極力減らし、治山のために植林や森林の育成に力を入れる。
A 河川内の土砂の浚渫や流木の除去などメインテナンスを恒常的におこなう。
B小野沢本流にあるクローズ型砂防ダムなどの透過型化への改修による、既存砂防ダムの土砂調節量の増大をはかることも検討する。
C 須砂渡〜三股線は危険地域を通る山岳道路であることを踏まえ、雨量規制などを設け、大雨等に対する通行規制をする。
D 住民や県営公園、国営公園の利用者に対して、小野沢川は土石流危険渓流危険地域であることを周知させる。

 なお5月31日までに回答をお願いいたします。

安曇野環境ふぉーらむ・八面大王     代表 小柴善一郎
長野県自然保護連盟           会長 町田和信
渓流保護ネットワーク「砂防ダムを考える」代表 田口康夫
国営アルプスあづみの公園・友の会    代表 町田 登
烏川渓谷の自然を考える会        代表 藤沢雄一郎
あづみの道草あかとんぼの会       代表 及川稜乙
公共事業と災害を考える会        代表 内山卓郎

連絡先
399-8301 南安曇郡穂高町有明7548-4 
「安曇野環境ふぉーらむ・八面大王」 tel 0263-83-6983逸見