ハーミシュ・マッカン

Hamish MacCunn(1868〜1916)

 スコットランド出身のハーミッシュ・マッカンは、5歳のときに初めての作品を書き上げ、12歳の時にはオラトリオを手がけるという何とも早熟な作曲家であった。15歳になると奨学金を得てロンドンの王立音楽院へと進み、パリーに師事して本格的な音楽の勉強をはじめ、着実に作曲家としての道を歩んで行ったようである。彼の作品はやがて、プロイセン生まれの指揮者サー・オーガスト・マンズという人物に認められて、コンサートで取り上げられるようになった。やがてマッカンは、王立音楽院やギルドホール音楽院で教鞭をとるようになり、後進の育成に励み、イギリス音楽界でおしも推されぬ地位を獲得することになった。作曲家としてのマッカンの作品はそれほど多くはないが、当時のイギリスにおいて同郷のロマン派詩人ウォルター・スコット(「アイヴァンホー」や「湖上の美人」などの作品が有名)に感化されて、彼の諸作品をテーマとする曲をいくつも作曲している。また、スコットランド民謡とバラードを収集し、それを纏め上げることにより故郷の音楽文化を後世に伝える功績を残している。このことからも彼のスコットランドへの愛着の深さをうかがい知ることができるだろう。

*マッカン・ディスコグラフィ(M.Mが所蔵するCD、LPの一覧です)


argo
436 401-2
山と溢れる泉の土地(タイラー:バラード・交響的変奏曲「アフリカの空」、バターワース:2つのイギリス牧歌・シュロプシャーの若者・青柳の堤とのカップリング)
グラント・リウェリン/ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団

 颯爽と駆け抜ける風のごとき音楽
 「最後の吟遊詩人の歌」という交響詩と並ぶ代表作とされ、彼の作品の中でもコンサートでとりあげられる機会が多い曲でもある(録音も多く、4〜5種類ぐらいの演奏を聴くことができる)。この曲は、彼の故郷の情景を描写した音詩とでも言える作品で、冒頭で威厳を持って堂々と奏される主題が、幾重にも表情を変えて登場してくる。全体を通して颯爽としたかっこいい音楽で、流れるような弦の調べと明るく快活な管の響きが非常に心地よい。特に中間部は広大な草原を馬に乗ったカウボーイたちが疾駆していくような情景をイメージさせるフレーズがあったり、ふんだんに風光明媚な自然の風景を音によって楽しませてくれる。リウェリン/RLPOの快演も聴きどころである。
前ページへ移動 Modern English Musicへ  トップページへ移動 インデックス・ページへ